News 2002年6月25日 11:14 PM 更新

PC市場のトレンドは“フォームファクタの小型・省スペース化”

ガートナージャパンが開催した「ITハードウェア2002」の中で、デスクトップPCにみられるSFF(Small Form Factor)の流れや、CRTから液晶モニタへの移行といった、“フォームファクタの小型・省スペース化”が、PC市場のトレンドの1つとなっていることが紹介された

 6月25日にガートナージャパンが開催した「ITハードウェア2002」の中で、Gartner Dataquestバイス・プレジデントのLeslie Fiering氏と同社アナリストの北川美佳子氏が、これからのPC市場のトレンドについて語った。

 PCの全世界出荷台数は2000年をピークに減少しはじめ、2001年には前年比を下回るなど成長が鈍化している。「全世界のPC出荷の低迷は、PC市場の約6割を占める西ヨーロッパと米国での出荷減少が大きく影響している。(2000年問題でリプレイスがあったPCの)買い替え需要が2003年に起こって一時的に出荷が伸びるが、以後2006年まではゆるやかな横ばいの成長を続けるだろう」(北川氏)。

 このようなPC出荷低迷の中、デスクトップPCにみられるSFF(Small Form Factor)の流れや、CRTから液晶モニタへの移行といった“フォームファクタの小型・省スペース化”が、PC市場のトレンドの1つとなっていることが紹介された。

 SFFは、すでにHPのe-pcやコンパックのEvo D500/510などで採用されているが、PC全体でのシェアは、まだわずかなもの。しかしGartnerでは、今後SFFがデスクトップPC市場の中心となっていくと予測する。


SFFがデスクトップPC市場の中心となっていく

 「PC市場は、これまでのクロックスピード競争のように、ハードウェアのパフォーマンスで商品の差別化を図るのが難しくなっている。むしろ、企業向けPCでは、性能よりもサービスやサポートが充実しているほうが好まれる」(北川氏)。

 メーカーは製造プロセスを簡略化し、サポートの手間も減らしたい。一方ユーザーも、使わない機能は省いてコストダウンをはかった、管理しやすいPCを求めている。つまり、よりシンプルで低コスト、しかも信頼性のあるPCを、ユーザーもベンダーも望んでいるというのだ。「SFFは、製造コストを抑え、マージンを保ちつつ、ユーザーに低価格で提供できる非常に魅力的な商品。成熟しているPC市場でマーケットシェアを伸ばすための非常に大切なプラットフォームとなる」(北川氏)。

 SFFでは、シリアル/パラレルといったレガシーポートや、PCI/AGPといった拡張機能を省いたタイプが登場してくる。「USB2.0搭載により、PCIの必要性はほとんどなくなってくる。また、PCI Express(3GIO)を採用した新しいインタフェースでは、拡張機能がカセット型のモジュールで提供されるため、AGPやPCIは不必要なパーツとなってくる。2005年までに、企業向けデスクトップPCの65%が拡張機能を省いたPCになっていくと予測している」(Fiering氏)。

CRTから液晶へ――ディスプレイも小型・省スペース化がトレンド

 デスクトップPCにみられるSFFへの流れと同様に、ディスプレイでも小型・省スペース化がトレンドとなっている。それが、CRTから液晶モニタへの移行だ。

 日本では普及が進んでいる液晶モニタも、世界のディスプレイ市場ではCRTがこれまで主流だった。しかし北川氏によると、昨年からこの状況が変わり、米国や西ヨーロッパで液晶モニタが大きく伸びているという。

 「液晶パネルの価格下落が伸びている大きな要因。現在は沈静化しているが、来年以降にはパネルの生産が増えることから、再び価格の下落が起こり、世界各国で液晶モニタの普及が期待できる」(Fiering氏)。

 ただ低価格になったとはいえ、CRTと液晶モニタでは価格に大きな開きがある。しかし米国では、CRTとの価格差が200ドル以上あるにもかかわらず、CRTに比べて「長寿命/省電力/省スペース」だという3つのメリットから、TCO削減につながることを理由に液晶モニタが売れているという。

 「米国では昨年、深刻な電力不足問題が発生したことから、省電力への関心が高まっている。少々高い金額を払っても、液晶モニタに買い換えるという動きは、着実に広まっている。今年の終わりから来年にかけて見込まれているデスクトップPCの大きな買い替え需要が、液晶モニタの成長にも大きく貢献するだろう」(北川氏)。

 Gartnerによるディスプレイの出荷台数予測をみると、全体的な出荷量は横ばいが続くものの、CRTと液晶モニタの比率は2006年には逆転し、全出荷台数の半数以上が液晶モニタになるとみている。

 「SFFや液晶モニタなど、これから成長が予測される分野の多くは、すでに日本市場で成長している分野。その日本市場で十分な経験を積んでいる日本メーカーは、この成長分野で大きなビジネスチャンスがある。日本メーカーは今後のフォームファクタの変化に、しっかり注目して取り組んでもらいたい」(Fiering氏)。

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[西坂真人, ITmedia]

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