News 2002年6月27日 10:18 PM 更新

「Microsoft Project」の日本普及計画――このプロジェクトはうまくいく?

プロジェクトが予定通り進まない、予算が大幅にオーバーした。そんな悩みも、「Microsoft Project」を導入すれば解決するかもしれない。何しろ、当のマイクロソフトだって導入しているのだから……

 米Microsoftにとって、日本は北米の次に大きな市場である。それぞれのソフトウェアの市場規模は、平均すると米国の3分の1だという(「Microsoft Office」はもっと多い)。だが、中には北米の10〜20分の1しか出荷されていない製品もある。その1つが「Microsoft Project」だ。マイクロソフトも「こんな数字は基本的にありえない。英国や欧州にも劣っている」(エンタープライズソリューション本部ナレッジソリューション部の小柳津篤部長)と嘆く。だが、それも6月27日に発表された最新版「Microsoft Project 2002」投入で変わるかもしれない。同社も今年後半には、このMicrosoft Projectがメジャーなソフトの仲間入りするはずと、期待を寄せている。

 このMicrosoft Projectは、「プロジェクトマネジメント」を行うための製品だ。わかりやすく言えば、プロジェクトの計画を立てるにあたり、「コスト」「期間」「リソース(人・モノ)」の配分を最適化するものだ。また、プロジェクト進行に伴い、当初の予測にブレが生じてくるが、様々なパラメータからその影響を計算し、計画全体を見直すのも、プロジェクトマネジメントツールの役割である。例えば、プロジェクトが3%進行した段階でのブレが、50%進行したときにどの程度になるかなどが計算できる。このプロジェクトマネジメントは、製造業や建設業のほか、システム導入の分野でも利用されている。

 マイクロソフト製品マーケティング本部の佐藤哲也本部長は、「プロジェクトマネジメントは、ビジネス手法・用語として世界では浸透している。先進国の中で唯一浸透していないのが日本だ。日本ではいまだにいわゆる“KKD”――“勘”と“経験”と“度胸”がまかり通っている。特に競合が存在しないのにこのソフトが普及しないのは、プロジェクトマネジメント自体が日本で根付いていないからだろう」と話す。ただ、「最近になって国内でも、プロジェクトマネジメントに注目が集まるようになっている。追い風が吹いてきた」(同氏)。

 プロジェクトマネジメントの導入例では、この分野の先駆けである米国国防省がよく取り上げられる。同省では、プロジェクトマネジメントの手法をベースに「EVMS」(Earned Value Management System)というパフォーマンス指標のガイドラインを策定。これにより、1961年には国家予算の40%、GDPの8%を占めていた予算が、1997年には国家予算の15%、GDPの3%までに削減されたという。なお、EVMSは、米国、英国、カナダ、スウェーデンなどで国内規格として制定されている。

 「NASAが、米IBMやカーネギメロン大学と開発したプロジェクトマネジメント成熟度モデルのCMM(Capability Maturity Model)を導入したところ、スペースシャトルに搭載するソフトウェアのバグが減少した。さらに、生産性は300%向上したという。NASAではいくら投資したプロジェクトでも、プロジェクトマネジメントで計画を見直した結果ア、今後発生するコストや遅延が許容範囲をオーバーするとわかった段階で廃棄になる。これが徹底されないと、どこかの国の西のほうの空港のように、当初予算の2倍もかかるなどといったことが起こる」(佐藤氏)。

 日本では、政府がe-Japan計画の中で調達に「日本版CMM」を導入することを検討している。これを受けて、経済産業省がソフトウェア開発・調達プロセス改善協議会を設立し、2002年4月に「ソフトウェア プロセス改善に向けての提言」を発表するなど、ようやく動き出したところだ。

 ちなみに、国内の民間企業でプロジェクトマネジメントに最も積極的なのが日本アイ・ビー・エム(IBM)。同社の常務取締役である富永章氏が政府の推進委員として日本版CMMの導入を推進しているほか、同社情報システム部門は、CMMの成熟度を示すレベルの最高位である「レベル5」を日本企業で唯一取得している。

 マイクロソフトによれば、日本IBMはMicrosoft Projectの顧客。マイクロソフトも、もちろん「同ソフトを全社の製品開発に導入している」(小柳津氏)。ただ、レベル5は取得していないそうだが……。

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[中村琢磨, ITmedia]

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