News 2002年6月28日 10:09 PM 更新

未踏ソフトウェアの展示会「ITX-2002 Summer」が開幕

ソフトウェア関連分野における研究開発の成果を集めた展示会 「ITX-2002 Summer」が開幕した。ひそひそ声をちゃんと聞こえるようにする研究や、3次元音声でタイピングを学ぶソフトなど、興味深い展示が行われている

 ソフトウェア関連分野における研究開発の成果を集めた展示会「ITX 2002 Summer スーパークリエイタの世界」が6月28日、東京・青山TEPIAで開幕した。この展示会は、情報処理振興事業協会(IPA)がe-Japan戦略の一環として推進している、天才クリエーターの発掘・育成事業「未踏ソフトウェア創造事業」の成果を発表するもの。会場では、独創的なソフトウェアの開発を行っている研究者が、最新の研究成果を披露している。


 「音楽嗜好計算モデルに基づく楽曲検索システム」のデモンストレーションを行っていた富士通。簡単に言うと、このシステムは、ユーザーの音楽の好みを統計的に推定し、“好きそうな”曲を選んでくれるというものだ。開発担当者の富士通 ネットワークスペシャリストの齋藤幹氏によれば、「CD販売店や図書館での利用が考えられる」という。

 利用者はまず、プリセットされた曲を何曲か聴いて、それぞれについて5段階で評価する。その評価のパターンから、システムがユーザーの嗜好モデルを学習。楽曲データベースの中かから、「推定嗜好評価値」が高い順に提示する。デモンストレーションに使用していたのは、MIDIデータ。MIDIデータの音高や音長で特徴を抽出することで、ユーザーの嗜好を判断できるという。


プリセットの曲を聴いて、評価することでユーザーの嗜好を判断する

 もちろん、「将来的には歌も入っている楽曲を検索できるようにする。例えば、波形データで曲を特徴づけることも可能」(齋藤氏)。「CDショップで曲を視聴して、そのお客さんが好きそうな曲を推薦するなど、いろいろな使い方が考えられる」。しかしながら、現在のMIDIバージョンもまだまだ開発途上。10人の実験対象者が検索結果について評価したところ、「一番高い評価が30%だった。まだ、ユーザーの音楽嗜好を正しく表現できているとは言い難い」(同氏)。

 NPO法人日本サスティナブル・コミュニティーセンターが開発したのは「3次元音声を用いたタイピング練習ソフトウェア」。製品名は「ウチコミくん3D」だ。

 ウチコミくん3Dは、キーボードの位置を音声でガイドするという製品。読み上げられる際に、「A」のキーは左側のスピーカーから、逆に「L」のキーは左側から聞こえてくる。そして、「F」や「J」といったキーボード中央付近に配列されているキーの場合は、「A」や「L」よりも“近くにあるように”聞こえてくる。繰り返し練習することで、キーの読み上げ方でそのキーの位置が即座に分かるようになるという(頭の中に、扇形のキーボードをイメージすると早く学習できるそうだ)。


展示会場でもウチコミくん3Dは大人気。ご婦人が「これは楽しいわぁ」と喜びの声をあげていた

 このソフトはもともと、盲学校の生徒用に開発されたもの。前バージョンは、実際にキーボードの位置を「右」「上」「横」と具体的に支持していた。「初心者がタイピングにとっつきにくいのは、単語という静的な情報から指の動きという動的な情報への変換をマスターするのに時間がかかるからだ。音でキーを覚えるウチコミくん3Dは、ピアニストが楽譜を見れば指の動きを感じるのと、同じ体験である」(同センターの高木治夫氏)。

 鹿児島大学が研究しているのは、「ささやき声による通話の可能性について」。会議中にちょっと携帯電話を使うとき、小さい声で話すのはいいが、相手はまったく聞き取れていなかったりする。そんなときでも、不都合なく、会話ができるようにしようというのが、この研究である。

 展示会場にあったプロトタイプを試してみた。マイクに向かって無声音で発声する(声帯を震わせない)。声はPCに取り込まれ、ソフトウェアで処理される。処理時間は2秒ほど。スピーカーから聞こえる声は……“ロボットボイス”のようだが、有声音のように聞こえる。ただ現在のレベルでは、話している内容までは判別できず、「あ」だったのか、「い」だったのかがようやく分かるといったところだ。

 なお鹿児島大学では、携帯電話への実装を視野に入れ、音声処理の精度向上、ならびにリアルタイム化に取り組んでいるという。


一番上の波形がマイクから取り込んだ声。これをフィルタリングし(中の波形)、有声音の音声信号に近い波形(下)に擬似的に変換する。「音声認識の結果を電子朗読しているわけではない」(鹿児島大学)。

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[中村琢磨, ITmedia]

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