News 2002年8月6日 11:09 PM 更新

複合現実感のコンテスト「MREC 2002」

3次元CG映像などで描く「仮想世界」と「現実世界」を融合するインタラクティブな映像メディア技術「複合現実感(MR)」。その技術を応用したエンターテインメントソフトのコンテスト「MREC 2002」のグランプリ作品が決まった

 複合現実型エンターテインメント協議会(略称MREC:Mixed Reality Entertainment Conference)は8月6日、複合現実感技術を応用したエンターテインメントソフトのコンテスト「MREC 2002」のグランプリ作品を選出、都内で表彰式を行った。

 複合現実感(MR:Mixed Reality)は、3次元CG映像などで描く「仮想世界」と、私たちが生活する物理的な「現実世界」を、実時間で継ぎ目なく融合するインタラクティブな映像メディア技術。従来のVR(Virtual Reality)がフルCGで表現するのに対して、現実世界の映像をCGとリアルタイム合成する点が異なる。このため、実世界の質感(現実感)をいかに使いこなすかがポイントだ。

 MREC 200xは、この新しい技術を発展させるため、エンターテインメントソフトの企画やシナリオを各方面から広く募るコンテストで、今回が3回目。全国から42作品(一般部門31作品、テーマ部門11作品)がエントリーし、その中から9作品(一般部門5作品、テーマ部門4作品)が1次審査を通過した。

1次審査通過作品と作者は、以下の通り(敬称略)。

一般部門

  • 風景写新感(東京工芸大学、森山かおり)
  • 「どこでも扉」で神経衰弱(アドホック、今枝博)
  • Magical Trap House QUBE(オールオブディー、財前司)
  • BLADE SHIPS(筑波大学、原口俊吾)
  • ARC FANTAGYM アーク・ファンタジム(乃村工藝社、栗原孝弘)

テーマ部門

  • Aquarium of evolution 進化の水族館(乃村工藝社、栗原孝弘)
  • アクアシンク(大みかクリエイティブサービス、菅原健次)
  • ジェリーフィッシュ・パーティー(フリーランス/映像アーチスト、浅井和広)
  • Synthesize Aqua‐Rainbow(東京大学 Φ(ファイ)、伊藤泉)

 この中でグランプリに輝いたのは、フリーランスで映像アーチストの浅井和広氏が企画・考案した「ジェリーフィッシュ・パーティー」。プレーヤーがMR技術によるシャボン玉のクラゲ“シェリーフィッシュ”を作って幻想的な空間を楽しむソフトだ。


シャボン玉のクラゲを作って幻想的な空間を楽しむジェリーフィッシュ・パーティー

 シャボン玉遊びをコンセプトにしたこの作品は、複雑なルールやテクニックを必要とせず、プレーヤー自身で遊び方を決めながら楽しめるのが特徴。CGで表現した“仮想”のシャボン玉を、「ストローガン」と呼ばれる“現実”の道具を使ってプレーヤーが膨らませ、ある程度の大きさにしたら、ストローガンのトリガー(引き金)でシャボン玉を仮想空間に飛ばすことができる。

 飛ばされたシャボン玉は、クラゲのカタチに変化して仮想空間を漂い始めるが、これをストローガンで捕獲することも可能。プレーヤーが手で触るとクラゲは細かく分裂し、ミニサイズのクラゲとなって再び空間を漂う。クラゲには寿命があり、数分間漂うと、シャボン玉のように割れて消えてしまう。


“仮想”のシャボン玉は、“現実”の道具「ストローガン」で膨らませる(写真では全てCG)

 審査員からは「シャボン玉がクラゲになるアイデアが秀逸。光のイメージが美しく、ぜひMRで体験してみたい」「小さい子供から大人まで楽しめる完成度の高い作品」「CGの出来栄えを競う作品が多い中、アイデアで光っていた」と、グランプリの選考理由が寄せられた。


シャボン玉は、クラゲのカタチに変化して仮想空間を漂い始める

 また審査員賞として、仮想的に表現される飛行体を操作してレースを行う「BLADE SHIPS」(原口俊吾氏、筑波大学)と、時間と空間を超越したインタラクテイブな新次元の水族館「Aquarium of evolution 進化の水族館」(栗原孝弘氏、乃村工藝社)がそれぞれ選ばれた。

 審査にあたったデジタルハリウッド校長の杉山知之氏は「MRは、将来のデジタルコミュニケーションのインタフェースとして日常的に使われる技術。今回のコンテストには、現在のMR技術をよく理解し、夢物語ではなく実現可能な“堅実な”提案が多かった。次回のコンテストでは、MRの技術を新たに開発しないと実現できないような、技術を後押しするぐらいの一歩進んだ提案も期待したい」と、コンテストの感想を述べた。


グランプリ作品「ジェリーフィッシュ・パーティー」を企画・提案した浅井和広氏

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関連リンク
▼ MREC2002公式サイト
▼ 複合現実型エンターテインメント協議会

[西坂真人, ITmedia]

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