News | 2002年8月21日 11:20 PM 更新 |
2足歩行ロボットの格闘競技大会「ROBO-ONE」の第2回大会が、8月10―11日に川崎産業振興会館で開催された。ROBO-ONEは、「ホビイストのホビイストによるホビイストのため」の大会である。
昨年2月に第1回大会が行われてから、わずか半年。早すぎるのではないかという危惧もあったのだが、実際に全然そんなことはなかった。「半年でこんなにっ」ていうくらいに全体のレベルが上がっていたのだ。ホビイストたちの底力を甘く見ていた。もうしわけない。まいりました。
レギュレーション
ROBO-ONEに出場するマシンの規定は、公式サイトに書かれている。主なものを挙げると次のようになる。これだけ知っておくと「面白がれかた」が増すのだ。
・2足歩行すること
動歩行、静歩行は問わないが、歩くときには片足は完全に上がること(すり足はダメ)。足の裏に補助的に車輪を付けるというのもダメ。
・ロボットからケーブルが出ていないこと
電源は内蔵。操縦には無線(電波でも赤外線でも音声でもいい)を使うか、あるいはロボットが自律的に動くということになる。
・刃物などは使わない
ロボットに刃物や槍のようなものを持たせて、敵を破壊するというのはなし。またジャミングなど電波障害を故意に起こすのもなし。飛び道具は使ってもかまわないが、飛びだした道具が床に落ちている間は「ダウン」と見なされる*1。
第2回大会ではさらに、要求仕様として次のことが追加された。
これらの条件については、満たしていなければ出場できないというわけではないが、採点において極めて重要視されるファクターであるので、できなければ勝てない。
【1日目:予選】
全体のレベルアップを実感
第1回大会の会場はロビーの真ん中にリングを置いて、周りを取り囲んで観戦するという形だった。今回は、ホール型の会場で、ステージに置かれたリングを椅子席から見るという形式になった。ずっと見やすくなった。
1日目(8月10日)は、予選会。この日はデモンストレーションだけで格闘は行われない。デモは2分間。内容は自由だけど、「3歩歩き」「屈伸」の規定演技は必須。5人の審査員が得点をつけ、上位16体のロボットが決勝トーナメント進出となる。
得点配分は、「3歩歩き」「屈伸」の規定演技がそれぞれ30%、そのほか(「攻撃性」「敏捷性」「独創性」「デザイン」など)が40%という比率。規定演技ができないと大減点になってしまう。
最初の演技は、すがわらゆうすけ氏の「A-Do(アド)」。PowerBook G4を使って制御するロボットだ。このロボットは第1回大会にも出場し、そのときには音声認識を使って動かすというオトコノコのロマンを見せてくれたのだけど、今回はキーボード操作。音声認識で生じるタイムラグがバカにならないんだそうだ。
すがわら氏のプレゼンテーションは見事。トークが上手なこともあるけど、構成もいい。規定演技をきっちりこなして、攻撃のパターンもいくつか見せてくれた。というわけで、これが400点満点の350点。最初から高得点が出てしまった。みんなこの点を目指しての戦いになる(最終的には、これは3位だった)。
さて、これから50体ものロボットの演技が始まる。その全部を紹介したいのだけど、それをすると話がいつまでたっても終わらなくなる。残念だけど、いくつか特徴的なものを順不同で紹介するに留める。決勝に残った人はいいのだけど、そうじゃない人は紹介できなくてごめんなさい。
最初に、全体のレベルが上がったっていったけど、それを象徴するのが、藤野裕之さんの「TA-18R」だ。彼は、前回「TA-17」を引っさげて(あの剣舞のロボットだ)、見事優勝をとげた人だ。
準備不足だという話だったのだけど、それでも、堅実な歩行と屈伸を見せてくれる。要求仕様はきっちり満たしている。前回の剣舞のような派手さはないが、戦えばそこそこ勝ち進めそうなマシンだ。
しかし、これが255点で17位。惜しくも決勝進出できなかったのである。
前回は、曲がりなりにも歩ければ間違いなく決勝に行きたのだけど、今度はそんなことはない。歩いて屈伸して、さらになにかアピールするプラスアルファがないと、決勝には進めないのだ。全体のレベルがそれだけ上がったということだ。
もうひとつ「電龍R01」(作者名非公開)。4キロを超える重量級ロボットだ。足の裏がバキュームになっていて、空気を吸い出すことで地面にくっついてしまうというもの。これも、きっちり歩いて屈伸をこなす。はでな攻撃技はないのだけど、この巨体を活かして体当たりされたら、たいていのロボットはひとたまりもなさそう。プッシュだけでのし上がった全盛期の小錦みたいなやつだ。
しかし、これも253点(18位)で決勝進出ならず。このマシンの演技は午前中のわりと早い時期だったのだけど、そのときには253点ならば余裕で通過かなという雰囲気もあった。ところが、午後になってから高得点をあげるロボットが続出。順位がずるずると下がってしまった。もし午後遅くなってからったら、演技の内容を変えてきたかもしれない。演技の順番の運不運があるってことだけど、そういうことを言えるくらいにハイレベルになったということだ。
起き上がれるロボットも続々
ハイレベルといえば、「起き上がれる」ロボットがいくつもでてきたことだ。まず、吉村浩一さんの「R-Blue IV(アールブルーフォー)」。前回、他の参加者に「打倒吉村」と言われるほどの運動性能を誇る「R-Blue III」をひっさげながら、起き上がれないために準決勝で敗れてしまった。「IV」はその雪辱を果たそうというマシンだ。
400点満点で379点。堂々の予選1位通過。ポールポジション。「打倒吉村」は、今回も健在だ。
次に、森永英一郎さんの「Metallic Fighter」。サイクロプスっぽいイメージのかっこいいマシンだ。これが、よく起きる。
起きるのもなんだけど、こいつは転びかたがすごい。「大丈夫なのか」って思わず言ってしまうくらいにばったり倒れるのだ。それで壊れないんだから、大したもんだ(とはいうものの、予選会の日はあんまり調子が良くなったので、上の動画は決勝トーナメントでのものだ)。347点で4位。
大きな腕で起き上がるのは小泉実さんの「Desire」だ。デザインもちょっと趣味的でかっこいい。演技では、一度起き上がりそこねてからもういちど起き上がった。こういうのはかえってウケる。
もうひとつ、Byoung Sooさんの「ROBOTIS-GW1」。韓国からの参加だ。Sooさんは韓国でロボットベンチャーをやっている方だそうで、日本の玩具ロボットの中身を作った実績もある。足しかないフォルムなので、攻撃はどうするのだろうと思ってたら見せてくれたのが、必殺頭突き攻撃。かっこいい。そしてこれも起き上がる。手なしで起き上がるんだからすごい。
個性派も登場
全体のレベルがあがった背景には、各参加者が第1回大会を参考にしてきたということがある。そのせいか、第1回大会にくらべるとマシンのバリエーションの幅は狭くなった。前回は「カンブリア紀大爆発」*2だったんだね。
*1今回は飛び道具を装備したものはいなかった。
*2生物の進化は、かつて思われていたように「少ない種類の先祖型が、次第に多様化していった」のではなく、「最初にものすごいバラエティーの種類が作られてきて、その中からどれかが(多くの場合は偶然によって)生き残ったのだ」という考え方がある。「カンブリア紀大爆発」は、(今わかっているかぎりは)いちばん最初のバラエティー。先ごろ亡くなったスティーブン・ジェイ・グールドの「ワンダフル・ライフ」に詳しい。
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