News 2002年9月10日 05:31 PM 更新

半導体技術を通して新世代への進化をドライブするIntel

Intel Developer Forum Fall 2002の初日、Intel社長兼COOのPaul Otellini氏による基調講演が行われた。Otellini氏が語る「コンピューティングと通信の融合」とは?

 Intelの社長兼COOのPaul Otellini氏によると、第1世代のメインフレーム、第2世代のパーソナルに続く第3世代のコンピューティングスタイルは、さまざまなスタイルのコンピュータ、使い方を収れんさせたものになるという。

 その究極のゴールとは、誰もがいつでもどこでもコンピュータを活用できる環境をもたらすことにある。メインフレームの中央集中型でも、パソコンを中心にしたダウンサイジングでもない。その時、その場で適したデバイスやアプリケーションを用いて、同じクオリティの情報にアクセスし、同じことができればいい。

 そこでOtellini氏が開発者向け会議のIntel Developer Forum Fall 2002(IDF)基調講演で取り上げたのが、コンピューティングと通信の融合である。かつて電子素子を一つ一つ組み上げていたシステムを半導体集積技術で統合することにより、マイクロプロセッサという新しい分野の製品が生まれた。これに倣い、半導体技術を用いてさまざまなシステムの統合を進めていく。その中で、最も力を入れているのがコンピューティングと通信の統合というわけだ。

 Otellini氏は「われわれが行おうとしていることは非常にシンプルだ。すべてのコンピュータデバイスは計算を行いながら、同時に通信を行っている。そしてすべての通信デバイスは通信を行いながら、同時に計算を行っている。コンピューティングと通信のコンバージェンス(収れん)こそが、われわれのテーマだ」と話した。


Baniasデモの一場面。Banias搭載のノートPCを用いて、スターバックスからワイヤレスのインターネットアクセスを行うOtellini氏(右)。専用ツールで簡単にワイヤレス接続が行える

 セキュリティや通信など、さまざまな機能をPCへと統合していく方針は、半導体の集積度が常に向上し続けている中では重要な戦略である。しかし、この基調講演でこのようなストーリーを展開させたのは、Baniasプラットフォームへの無線LAN技術の統合へと話をつなげたかったからなのかもしれない。

 このIDFではBaniasのさらなる詳細が明らかになることになっているが、Otellini氏の基調講演の中では、ワイヤレスネットワークを最も簡単に使え、ワイヤレス環境(もちろんACコンセントを含む)で長時間バッテリ駆動が可能なプラットフォームとしてBaniasを紹介するにとどめた。IntelはBaniasベースのシステムに802.11a/bデュアルバンドの無線LAN機能を統合しようとしている。

 さらにIntelは、無線LAN使用時の利用環境改善にも取り組んでいる。今までのコンピュータネットワークは、常にどこに接続しているのかを意識しなければならなかった。しかし、IntelはモバイルIP技術やシームレスな認証技術を組み合わせて、どんな環境下でも簡単にネットワークを利用できる技術やセキュリティ機能の強化に取り組んでいる。

 「LaGrandeテクノロジ」も、そうした取り組みの一環ととらえることができるだろう。この取り組みは、PCシステムのアーキテクチャレベルでデータのスヌープ(盗み見)や漏洩を防ぐ技術である。

 LaGrandeテクノロジでは、メモリアクセスやディスクアクセス、ネットワークアクセスなど、あらゆるデータ経路を保護し、ハードウェアを用いた認証の仕組みを提供してくれる。常にネットワークに接続された(そこは保護された社内のネットワークとは限らない)環境において最新の攻撃手段に対抗するため、徹底したセキュリティ重視のアーキテクチャが採用される。詳細に関しては基調講演では語られなかったが、マイクロソフトやアプリケーションベンダーとも協力し、業界全体としてプロジェクトを進め、2−3年後には市場に持ち込みたいとした。

 「半導体技術は新しいコンピューティング世代への移行を加速させるためのエンジン(Otellini氏)」と語るIntelの戦略は、ここ数年、IT不況に突入してから一貫している。派手なマーケティング手法から卒業し、本業である半導体製造にフォーカスした戦略である。Intelがこの姿勢を崩さずPC業界に新しい製品やコンセプトを投入し続ける限り、業界は前に進むことができるだろう。

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[本田雅一, ITmedia]

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