News 2002年10月8日 06:10 PM 更新

次世代記録メディアに求められるもの

映像や音楽だけでなく個人のデータの記録(保存)媒体として、大きな注目を集める光ディスク。だが、インターネットの普及やデジタル放送の開始など通信や放送環境の変化に合わせ、記録メディアに求めれられるものも変わってきている

 「マルチメディアが提唱された時、映画や音楽などのコンテンツと通信、放送、出版などが融合一体化し、産業の垣根が取り払われるだろうと言われた。しかし、現実は、何も変わっていない。今では、それらがせめぎあい、お互いがお互いをのみ込もうとしているが、のみ込めない。そんな状況にある」。

 先週開催されたCEATECのカンファレンスで、東芝デジタルメディアネットワーク社の首席技監、山田尚志氏がこんなことを言っていた。マルチメディア時代になれば、コンテンツメーカーと通信、放送、出版などのメディアが淘汰され、融合していくものと、かつては考えられていた。しかし、現実は違う。それぞれが生き残り、自身の生き残りをかけて主導権争いをしている。

 では、今後はどうなるのだろう。また、その中で、記録メディアとしての光ディスクの位置付けは、どのように変わっていくのだろうか。「アドバンスド光ディスクの可能性」と題した山田氏のカンファレンスから、その見通しを紹介していこう。

コンテンツの奪い合い――パッケージとストリーミングの共存関係

 山田氏によれば、今後も「通信経由のストリーミングメディアが発達し、動画コンテンツは、パッケージとストリーミングの両方が共存する」という。その結果、「PCとCE(コンシューマーエレクトロニクス)は、より柔軟なPCがCE分野へと移らざるをえない。その上で、ストリーミングのために通信とストレージデバイス(光ディスクなど)の協調が進むだろう」(山田氏)。


今後の光ディスクについて講演を行う東芝 デジタルメディアネットワーク社首席技監 山田尚志氏

 光ディスク業界としては、「今後、メディア(放送や通信)がどうなるかというのが重要」になる。しかし、山田氏は「マルチメディアというのは、ビジネス環境としてみるとメディア間の競合が進み、結果としてコンテンツの奪い合いになる」と予測する。

 これはもっともな話だ。光ディスクだけでなく、通信や放送などのメディアでは、魅力的な“コンテンツ”があってこそ成り立つからだ。今後、ブロードバンド環境が普及し、通信や放送などがコンテンツ配布用のメディアとして発達することは間違いない。そうなれば、必然的に通信や放送、パッケージメディアのそれぞれでコンテンツの奪い合いになる。これは、次世代光ディスクをめぐる争いでも同じことが言えるだろう。規格の優劣も重要だが、良質なコンテンツがなければどれほど技術的に優れていようとも、主導権をとることができないからである。

「ホームサーバ構想」――光ディスクの今後の使われ方

 では光ディスクは今後、どういう使われ方をするのだろうか。山田氏はこの点に触れ、「(DVD)レコーダが、ビデオを置き換えるだろう。また、通信や放送でDRM(Digital Right Management)をつけたコンテンツの配布を行い、それをレコーダで記録するようになる」(同氏)と話す。

 これは、CEATEC JAPAN 2002でも盛んにデモが行われていた「ホームサーバ」の時代到来に向け、その根幹を成すコンテンツ保護の仕組みと光ディスクの使用方法を予想したものだ。

 同氏が言うように、今後は、DRMを付加することで見る回数や時間の制限、コピーの回数など細かな利用形態が指定されたコンテンツが、通信や放送、パッケージメディアの3つの方法によって配布されるようになる可能性が高い。そして、記録可能なコンテンツは、“何らかの”記録メディアに保存することになる。通信や放送などのメディアの場合、1次的な保存媒体として最有力なのは高速で大容量のHDD。最終的な保存媒体、つまりアーカイブストレージとしての最有力候補は、光ディスクだろう。


コンテンツ配信の将来像。DRMは必須の機能となるだろう

 ただし、通信や放送でDRMが付加されたコンテンツが、ユーザーに受け入れられるかどうかは別の話だ。「今後、色々なビジネスを行ってみて、これがよい、これはだめ、といった感じになるのではないか」。こう予測する山田氏は、「魅力的なコンテンツを、ある程度、安価に提供する必要があるのではないか」とも述べた。これは、DRMのような著作権保護の仕組み(コピーコントロールの仕組み)を使用したコンテンツビジネスのビジネスモデルが未だ確立されておらず、きちんと成り立っていくのかどうか自体、予想がつかないためだ。

 加えて、配信先の標準フォーマットが確立していないこと、配信先の家庭のセキュリティが未確保のままであること、HDDと光ディスクが共存する場合のコピープロテクションのルールが未確立であること、などの問題もある。さらに、インターネットなどを配布媒体としたコンテンツは、携帯電話などとも競合する可能性が高い点も、挙げておく必要があるだろう。

Napsterの“罪”――インターネットをどうするか

 この中でも、特にインターネットをどうするかということが、一番大きな問題としてのしかかってくる。これについて、山田氏は「まだ、先がみえてない」と述べた後、「だが、逆にコンテンツを使用したビジネスを壊してくれた方はいる。そして、それが、インターネットを利用したビジネスを難しくしている」と付け加えた。

 ここで指摘された「インターネットのコンテンツビジネスを壊した」存在は、言わずと知れたP2Pによるデータ交換である。「Napster」に代表されるこの種のサービスを介し、違法コピーの温床ともとられかねない行為が行われた。これによって特に音楽産業は、大打撃を受けたと言われ、RIAA(全米レコード協会)がファイル交換を行った個人を訴える可能性まで出てきている。

 インターネットのブロードバンド環境が一般的になれば、映像コンテンツでも同じことが起きる可能性がある。このため、コンテンツ供給側の関心は、目下のところ「新しいビジネスよりもセキュリティにあり、不正コピーの抑圧に関心がいってしまっている」のだという。

 この問題は同時に、今後のホームサーバ構想にも大きな影を落とす。Napsterによって、音楽はタダでインターネットから手にはいるものというような風潮ができてしまったからだ。

 しかも、Napsterの営業が停止しても、Kazaaなどの新たなP2Pシステムが流通して止まらない状態。山田氏は、「インターネットを使用したコンテンツの配布は、今後、長い時間をかけて、Compliant Deviceの普及および有料化と常識の形成が必要になるだろう」と、これが解決に時間を要する課題であることを指摘していた。

 また、同氏によれば、ビジネスモデルの構築に関しては、課題がさらにもう1つあるという。それは「信号処理能力と記録容量の問題」である。これは分かりやすく言えば、必要以上のオーバーテクノロジーは健全なビジネス環境を構築するのではなく、利益率の低下などをもたらし、業界をデフレスパイラルに陥らせるというものだ。

 その典型が、HDDである。ハードディスクはここ数年で飛躍的に記録容量が増加したが、これはドライブの低価格化を押し進めただけで、メーカーの業績には少しも寄与していない。最大の理由は、この環境を必要とするアプリケーション環境がほとんどないためだ。唯一、これを必要とする環境があるとしたら、それは、映像編集などの世界だけである。言い換えれば、一般ユーザーの用途ではほとんど必要がないところまで、HDDの記録容量が増大してしまったわけだ。

 とはいえ、光ディスクの容量をわざと抑えるということはバカげているし、現実にできるものでもない。「技術がオーバーテクノロジーにならないようにするには、アプリケーションを同時に開発することが急務である」。光ディスクがHDDの二の舞を演じることを避けるには、そうするしかない――山田氏はこう結論付けていた。

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[北川達也, ITmedia]

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