News 2002年10月18日 09:00 PM 更新

マイクロソフトと松下、デジタルメディア新規格「HighM.A.T.」を発表

マイクロソフトと松下電器産業が、PCとAV家電とのデジタルメディア相互利用を可能にする新規格「High M.A.T」を発表した。多様なデジタルデータを簡単に扱える統一環境を提供する

 米Microsoftと松下電器産業は10月18日、PCとAV家電とのデジタルメディア相互利用を可能にする新規格「HighM.A.T.」を共同で開発したと発表した。


新規格の説明を行う松下電器産業の松本時和氏(左)とMicrosoftの古川享氏(右)

 HighM.A.T.(High Performance Media Access Technology)は、音楽/映像/写真などのデジタルデータを、CD-RWや記録型DVDといった書き換え可能なメディアに記録するための論理フォーマット規格。PC上のデジタルコンテンツを、さまざまなAV家電で簡単に利用できることを目的に開発されたという。

 都内で行われた発表会で、新規格の説明にあたった松下電器産業AVC社ホームAVビジネスユニット長の松本時和氏は「HighM.A.T.は、簡単にいうと多様なデジタルデータを簡単に扱える環境を提供する技術。メディアに記録されたさまざまなフォーマットを統一的に管理できる。大量に記録されたデータから自分の希望するものを素早く簡単に検索できたり、作成したメディアをPCとAV家電で相互利用が可能」と語る。


「HighM.A.T.は多様なデジタルデータを簡単に扱える環境を提供する」(松本氏)

 論理フォーマットの仕組みは、圧縮した各種メディアファイルに、記録メディア上で整理するための追加情報を付加するカタチとなる。この追加情報によって、従来、複数の規格が存在して一貫性がなかった記録メディアのデータ読み取り規格を統一し、PCとAV機器とで共通に利用できるメディアの実現や、マウントした際の読み込み時間の短縮、さらにAV家電で簡単な操作でアクセスが可能になるという。

 対応する圧縮メディアファイルは、当初はWMA/MP3/JPEG/WMV/MPEG4の5種類。これらのデータに、追加情報としてアクセラレータファイル(コンテンツ情報、メニュー、プレイリスト、テキストメタデータ、サムネイルイメージ)が付加される。メディアファイルはJoliet ISO9660の規格に準拠。既存のフォーマットのまま記録するので、従来の機器との互換性は確保される。

 「AV家電とPCをつなぐブリッジの役目を担う。例えば、CD-R/RWや記録型DVDなどに焼き付けた大量のデジカメ画像を選ぶ時に、従来はファイル名や番号でしか選べなかったものが、“正月”や“運動会”といったイベント名で探せるようになる。また、従来は曲名でしか検索できなかった民生用CDプレーヤーに、アーチストやジャンルといったデータで検索できるようになるなど、ユーザーがより使いやすい民生機器を作ることができる。多彩な検索が民生機でもできるのが、HighM.A.T.の特徴」(松本氏)。


AV家電とPCをつなぐブリッジの役目

 米Microsoftアドバンスト・ストラテジー&ポリシー担当バイスプレジデントの古川享氏は、従来のデジタルメディアについて「画像や映像、音楽といったコンテンツをCDやDVDに記録していく技術の開発は、各分野のメーカーが個別に行ってきたため、非常に簡単と思われることができなかった。例えば、デジタル写真と音楽を同期させ、この画像まではこの音楽を再生して欲しいとか、この音楽が終わったら画像を変えるといったことすら実現できていなかったのだ」と指摘する。


米Microsoftアドバンスト・ストラテジー&ポリシー担当バイスプレジデントの古川享氏

 古川氏はまた、近年の画像圧縮技術の発達や大容量メディアの登場が、デジタルメディアの扱いを困難にしていると述べる。

 「DVDに画像を大量に記録した場合、ディスクを挿入してからサムネイルを生成するのに20分以上かかったりする。HighM.A.T.規格でサムネイルデータをあらかじめ記録しておけば、このようなことはなくなる。また、データ圧縮によってDVDディスク1枚に画像や音楽データが2000-3000タイトル収録した時に、HighM.A.T.規格なら今日の天気や気分に合わせて音楽や画像を選んでくれるようなハードウェアも実現可能だ」(古川氏)。

 また、HighM.A.T.は柔軟な再生環境に対応。表示形式の異なる機器においても統一されたユーザーインタフェースが提供できるほか、規格サポート範囲を明確にすることで機器間の互換性も向上させている。

 「例えば、同じディスクを閲覧する時に、TVで見た時は画面一杯にサムネイル一覧が表示され、画面の小さなモバイルAV機器なら、自動的にサムネイルを減らして上下にスクロールして見るといった表示に変更される。もっとシンプルな液晶1行画面のモバイル機器なら、それに合わせた表示も行える。自由な設計が(このように)簡単になる」(古川氏)。


機器の画面の大きさにあわせた表示など自由な設計が簡単に行える

 Microsoftは、11月に提供予定の音楽・映像再生ソフト「Windows Media Player 9 シリーズ」や、Windows XPに標準搭載されているデジタル編集ソフト「Windows Movie Maker」の次期バージョンから、HighM.A.T.の採用を開始する。


HighM.A.T.に対応したWindows Movie Makerの次期バージョン

 また、松下電器産業は、2003年から出荷する同社のCDおよびDVD製品に、HighM.A.T.を順次採用していく予定。また、両社で各メーカーにHighM.A.T.採用を呼び掛けていくという。 「松下では、DVD関連の新製品から中心に採用していく。2003年末頃には、かなりの数のCD/DVD関連機器がHighM.A.T.対応となるだろう」(松本氏)。

個人が作成するHighM.A.T.メディアは無料だが……

 新しいフォーマット規格で気になるのは、ライセンスの問題だ。HighM.A.T.対応のハードウェアを他メーカーが作る場合は、ライセンス契約の対象となる。発表会では、富士写真フイルムが新規格の最初の契約者となり、パートナーになったことを明らかにした。ハードウェア開発にはライセンス契約によるロイヤリティが発生するが、ソフトウェアに関しては、現在検討中という。

 「個人でHighM.A.T.対応ディスクを作成する場合は無料。また、対応ソフトウェアを作る場合も、現時点ではロイヤリティは発生しないことになっている。だが、企業がコマーシャルベースでディスクを作成するといったケースをどうするかなど、細かい部分は決まっていないというのが正直なところ。これから詳細を検討していきたい」(古川氏)。


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[西坂真人, ITmedia]

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