News 2002年10月29日 08:56 PM 更新

国内2年連続マイナス成長も心配ない?――WSTSの世界半導体市場予測

半導体市場の統計機関「WSTS」によると、2002年の世界半導体市場は前年比2.3%増と回復に転じたが、日本市場は2年連続のマイナス成長との予測。しかし実は、米国や欧州よりも日本のほうが回復基調にある

 半導体市場の統計機関である「WSTS(World Semiconductor Trade Statistics)」の日本事務所であるWSTS日本協議会は10月29日、世界半導体市場の予測を発表した。

 今回のWSTSの市場予測は、今月15日から米国ジョージア州で開催されていたWSTSの2002年秋季市場予測会議の結果に基づくもの。同会議には、世界の主要半導体メーカー36社が参加した。

 2000年は約2044億ドルと大きく成長した世界の半導体市場だが、2001年には急落して前年比32%減の約1389億ドルと過去最悪を記録した。しかしWSTSでは、2002年は前年比2.3%増の約1422億ドル(18兆8000億円)になると予測。「半導体市場は未曾有の半導体不況を脱し、回復基調にあるとみている」(WSTS)。

 WSTSでは、2005年までの予測値も発表している。それによると、2003年が前年比16.6%増の約1659億ドルと大きく伸長。2004年には同19.2%増の約1978億ドルとなり、成長率ではピークを迎えるとみている。2005年には前年比2.6%と伸び自体は鈍化するものの、市場規模は2029億ドルとなって過去最高だった2000年に近い数値になると予測している。


半導体市場規模の推移

 WSTSの予測は、毎年春と秋に行われている。今年春の予測では、2003年に前年比22.7%増となってピークを迎え、以後シリコンサイクルの下降期に入って成長が鈍化、2004年が14.5%増、2005年に3.2%増になるとみていた。成長率のピーク時期予測が2003年から2004年にずれ込んだことについて、WSTS日本協議会の戸所義博会長は「米国会計不振にともなう株価下落、そしてイラク攻撃による不安要素など、米国経済の力強さにやや陰りが見られることが原因。米国経済の不安材料が全世界に影響するとの判断から、半導体市場は回復しているもののピークの山は少し後ろ倒しになると予測した」と語る。

 2005年までの市場予測によると、2001-2005年の年間平均成長率(CAGR)は9.9%。これを地域別に見ると、戸所会長の言葉を象徴するかのように、米国のCAGRは3.7%と4地域中1番低い成長率を示している。一方で、大きく成長するとみられているのが、アジア・パシフィックの市場だ。アジアパシフィック地域のCAGRは19.8%となり、日本の6.5%、欧州の5.2%と比べても突出した高成長が予測されている。

日本の半導体市場は心配なし?

 このように回復基調にある世界半導体市場だが、日本はどうだろうか。

 日本の半導体市場は、2001年が前年比20.4%減の約4兆円で推移した。WSTSの予測では2002年もマイナス成長は続き、前年比4.7%減の約3兆8260億円になるとみている。2002年の世界市場がプラス成長に転ずるという予測からすると、国内半導体不況の深刻さを感じてしまう。

 だが、地域別の成長率をよくみると、2002年にマイナス成長なのは日本だけでなく、米国(前年比11.2%減)や欧州(同9.4%減)も前年を下回る市場規模が予測されている。つまり、2002年に前年比31%増と急成長するアジアパシフィック市場が、世界市場全体の数字を底上げし、あたかも世界全体がプラス成長と映るような構図になっているのだ。


地域別の半導体市場規模(2002年以降は予測値)

 2002年まではマイナス成長となる日本市場だが、2002年の世界市場成長率予測が今春と今回ともに2.3%と変化はなかったのに比べて、日本市場の数値は今春の予測値(7%減)から上方修正された。この点について戸所会長は「デジカメやDVDプレーヤー、デジタルビデオカメラといったデジタル家電が比較的好調に推移していることが要因。また、携帯電話の2.5世代モデルが健闘していることも影響している」と説明する。

 2005年までの日本の成長率は、急伸するアジアパシフィックには及ばないものの緩やかな成長をみせ、米国や欧州よりも高い水準で推移すると予測されている。WSTSでは、2003年に日本の市場規模が米国を追い越すとみている。

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[西坂真人, ITmedia]

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