News 2002年11月22日 03:33 PM 更新

っぽいかもしれない
「ネット家電ショー」で見つけた、ネット家電じゃないもの

面白そうなので東京ビッグサイトで開かれている「ネット家電ショー」に行ってみた。そうしたら、ネット家電じゃないもので面白いものを2つ発見した

 11月22日まで、東京ビッグサイトで「ネット家電ショー」が開催されている。これから面白くなりそうな分野なので、これは見に行かなくてはと思ってでかけていった。でも、タイトル通りのネット家電に関したものはあまりぱっとしない。で、ネット家電そのものじゃない部分で面白いものを見つけた。

ケンカができるテレビ会議システム

 1つは、マイルストーンの「以心伝心」というテレビ会議システム。東京大学先端科学技術研究センターとの共同研究開発。

 ディスプレイのこちら側にカメラがあって、お互いの姿が相手のディスプレイに映っている。このディスプレイにはコンピュータの画像も表示されるので、それを見ながら話ができる。そして、相手の姿の画像とコンピュータの画像は半透明に重ね合わせて表示されるのだ(透明の度合はスライダーで0−100%まで調整可能)。これが1つ目のアイデア。

 画面に映っているコンピュータの画像に向かって、指を差して、「ここが」とか「そっちが」とか言えば、その画像が向こうに送られて、「ここ」や「そっち」がわかるというわけ。相手はディスプレイの向こう側から画像を指差してくるのだ。


 いままでのシステムだと、こういうときにはマウスポインタを使っていた。でも、それだとインタフェースが1つ間に挟まってしまう。でも画面を指差すなら、本能的な動きだ。CGアニメのコラボレーションで東京と穂高町とを結んで使ってみたそうなのだけど、「ここんところ(指差す)は、もっとこういう動き(踊る)で、やってよ」って勢いで、「ケンカができるシステム」だったそうだ。それは、すごい。殴れないけど。

 気がついている人がいると思うけど、実は、向こうの画像のをそのまま映したのではうまくいかない。画面の右端を指している姿をそのまま重ねて映すと、ディスプレイでは画面の左端を指しているように見えてしまう。だから、向こうの画像は左右反転させてこちらに映している。これが2つ目のアイデア(*1)。

 展示されていたのはまだ試作バージョンで、コンピュータ画面を一度NTSCに落としてから、向こうの画像とアナログで合成(ビデオミキサーを使っている)してた。これでは画質も落ちるし設備も大きくなるので、デジタル合成するように考えているそうだ。

触覚によるだまし方

 もうひとつ、これもインタフェースがらみだけど、富士ゼロックスの「触覚マウス」(公式サイト)。

 最初に言っておくけど、ここで大事なのはマウスじゃなくて「触覚」のほう。展示品では、触覚デバイスがたまたまマウスにくっついていたというだけ。このデバイスは何にでも付けられるはず。


ムービーはこちら

 マウスの上に乗っかっている青い円盤がその触覚デバイス。1センチ程度の範囲で左右に自由にスライドさせられる入力装置であると同時に、コンピュータ側からもその範囲で動かせる出力装置でもある。

 ヴァーチャルリアリティの分野ではフォース(力)フィードバック付きの入力装置があるけど、基本的にはそれと同じように使える。ただしこっちは2次元。2次元って割り切っちゃったことで、小さくて安価で壊れにくいデバイスを作ることができたというわけ(*2)。乗っけるのはマウスじゃなくて、ゲームパッドでも、PDAでも携帯電話でもいいだろう(*3)。

 例えば画面にトグルスイッチがある。これをこのデバイスで操作すると、画面のトグルが切り替わり、(コンピュータの)スピーカーから“カチッ”がすると同時に、指先にも反力が返ってくる。今スイッチを入れたんだなっていう実感がわく(*4)。あるいは、危険なスイッチは重たくなる(スイッチを入れるのと反対方向にフィードバックをかけるわけだ)ようにして、うっかりいじらないようにするなんていうインタフェースも考えられる。

 デモでは、ざらざらした画像の上をなぞると指にざらざら感が伝わるというのもあった。ざらざら感っていうのは高さ方向の変位だ。だから本当は二次元のアクチュエータでは表現できないはずだ。でも、ざらざらな画面表示を見ていると、左右の振動だけでけっこうざらざらした感じを受けてしまう。このあたりの「だまし方」っていうのはこれからノウハウになるだろう(*5)。

 また、2つの触覚マウスで、それぞれ別のポインタを動かすデモもあった(*6)。2つのポインタがある程度以上近づくと、互いにひっぱられてくっついてしまう。そうすると、一方がポインタを動かすと、他方の触覚デバイスもそっちに引っ張られる感じがする。それに逆らって反対方向に動かすと、ゴムが伸びるときのような感じがして(画面もそういう表示)、もっと引っ張るとプチンと切れてしまう。これはもともと2次元方向の力だけでいいってこともあって、ものすごくリアルだった。これ使うと、“サイバーこっくりさん”とかできるよね(*7)。

 富士ゼロックスは、このデバイスを自社で製造販売するつもりはないのだそうだ。技術をライセンスして、デバイスそのものはハードウェアメーカーがそれぞれ作ってほしいというわけ。来春には第一弾の製品が登場する予定。どんなサイズにするかどんな素材で作るか(堅いのがいいのか柔らかいのいいのか)など、各メーカーが研究していくことになるだろう。そして、このデバイスを使った、新しいアプリケーションを早く見てみたい(*8)。


*1だから、相手は、画面の向こう側から指しているというよりは、ディスプレイにうつりこんでいる背後霊になっているというほうが正しいのかもしれない。
*2中身は二次元のリニアアクチュエータとモーターだけ。USBのバスパワーの0.5アンペアで動作していた。
*3もっとも携帯電話などはそんなに電力を取り出せないので、フィードバックの力はあんまり出せない。
*4この、視覚・聴覚・触覚の三位一体が大事なのだそうだ。
*5人間って妙に敏感なところとだまされやすいところがあるよね。垂直方向に表示されているディスプレイ上のポインタを水平方向に動かすマウスで操作して平気でいるっていうのも、考えてみると不思議だ。
*6ネットワークでつながれた2台のマシンだったのだけど、ここではネットワークというのは本質じゃない。
*72人でポインタを動かしていると、こっくりさんdaemonが降臨して第3の方向に引っ張り出すのだ。
*8メーカーもだけど、オンラインソフト作家のような個人レベルのところから面白いものが出てくるんじゃないかって期待している。だから、デバイスの仕様は絶対に公開してほしい。LinuxやMacintoshで動かしたい人も出てくるだろうし。 と思っていたら、2001年の秋にアイデアコンテストが行われたようだ(ここにも記事があったのに気がついてなかった)。優秀作品は公式サイトでみることができる。

[こばやしゆたか, ITmedia]

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