News 2002年12月13日 12:30 PM 更新

どうなる次世代光ディスク 第5回
Blu-rayの追記型メディア、その開発状況は?(1/3)

リライタブルからスタートする次世代光ディスクでは、その次にくる追記型の開発も盛んに行われている。有機色素を使用した追記型規格を提案する富士写真フイルムに、開発状況を聞いた

 次世代光ディスクは、Blu-ray Discファウンダーズ、DVDフォーラムともに再生専用ディスクや書き換え型ディスクを中心に規格の策定が先行して行われており、追記型ディスクの規格策定は最後に予定されている。

 特に書き換え型ディスクの規格化からスタートしたBlu-ray Discファウンダーズでは、追記型ディスクの光学特性(機械特性)を再生専用ディスクに合わせてもよいだろうし、すでに規格化を終えた書き換え型に合わせてもよい。

 つまり、開口数「0.85」の対物レンズを採用したBlu-ray Disc互換の方式の追記型ディスクには、反射率の低い無機膜を採用した方式と、有機色素を採用する方式の2つが考えられるということになる。

 現在のところ、前者の無機膜を採用した方法はパイオニアやTDKが提案中。後者の有機色素は、ソニーが7月に行われたISOM/ODSにおいてその成果を発表し、10月には、富士写真フイルムが世界初となる有機色素「塗布型」の開発を発表している。

 今回はその富士写真フイルムに、有機色素塗布型の追記ディスクの開発状況を聞いた。


富士写真フイルムが開発した開口数0.85の青紫色レーザー用の追記型ディスク

コストポテンシャルを追求

 富士写真フイルムが開発した青紫色レーザー対応の追記型ディスクは、記録容量が「23.3Gバイト」、36Mbps/72Mbpsの記録スピードに対応したもの。同社記録メディア事業部 商品開発部長 河俣利夫氏は、その特徴を「新しく開発した色素と基板にある。ディスクを構成する層が少く、従来のCD-RやDVD-Rの製造インフラを生かすことができるというメリットもある」と話す。


富士写真フイルム 記録メディア事業部 商品開発部長 河俣利夫氏(右)と同記録メディア事業部 記録メディア研究開発センター 主任研究員 久保裕史氏

 開口数0.85を使用したBlu-ray Discでは、ピックアップとディスクの感覚がわずか0.1ミリぐらいしかない。ディスクが反っていたり、厚みのバラつきが大きいと、ピックアップとディスクが簡単にぶつかってしまう。

 このため、基板の精度をCDやDVDなどとは比較にならないぐらい高める必要ある。「成型技術が重要。あとはスピンコート。特に原盤作成のプロセス、つまり、スタンパ作成するプロセスが難しく、それを取り付けて、実際に製造する成型プロセスも大変です。このディスクは、張り合わせた後で厚みのバラつきを100μm±2μmに抑えられます」(河俣氏)。

 ソニーが7月にISOM/ODSで学会発表した0.85用の追記型ディスクは、「真空蒸着」と呼ばれる方法を用いて有機色素を塗布していた。しかし、同社では、従来のCD-RやDVD-R/+Rで使用されているスピンコーティングによって記録膜を塗布する。つまり、従来から使用されてきた製造設備が使用できるというわけである。

 「製造の順番をひっくり返すとかありますが、基本的には、CD-RやDVD-Rと同じような工程で作成でき、かなりの部分の生産インフラが使い回せるというのが大きなポイントです。蒸着で作るとなると、新たに蒸着装置を用意することになりますが、これならすでに世の中にあるCD-RやDVD-Rのスピンコーターが使えます。また基本的には前後の工程も応用できます」(記録メディア事業部 記録メディア研究開発センター 主任研究員 久保裕史氏)。

 久保氏によれば、このディスクの最大のポイントはこの点、つまり構造がシンプルでコストが下がることだという。

[北川達也, ITmedia]

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