News 2002年12月13日 12:32 PM 更新

どうなる次世代光ディスク 第5回
Blu-rayの追記型メディア、その開発状況は?(2/3)


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 「ポイントとしては、層構造が大変シンプルですから材料コストが下がります。もう1つ大きいのは、償却なんです。(メディア製造では)設備償却コストが非常に大きくて、新しい装置を入れますと必ずそれが負担になります。それが、すでに償却済みのものでよければ、コストをかなり抑えられます。ユーザーが店頭に並んだとき、同じ23Gバイトであれば、安いものを買うのが当然。そのときのコストポテンシャルを持っているんです」(久保氏)。

 同社では、記録層だけでなく、カバー層もコストポテンシャルをもった材料を、ということで今は開発を進めているのだそうだ。


富士写真フイルムが開発した追記型ディスクは、層構造がシンプルなのが特徴

独自の有機色素と超薄膜カバー層を開発

 同社では、この追記ディスク開発に当たって新たに波長405ナノメートルの青紫色レーザーで使用できる超高感度色素を開発。同時に0.1ミリという超薄膜カバー層(フィルム)も開発した。

 「カラー写真のフィルムというのは、有機色素の“塊”のようなものなんです。そういう合成技術というのが従来からあり、それを使って405ナノメートルというレーザーの波長に“感じる”色素を設計しました。また、当社では、写真のフィルムも作っています。その関係で、0.1ミリという薄いフィルムを作るという技術もあります。カバー層のフィルムは、それを使って作成したものです」(河俣氏)。

 同社の開発した0.1ミリの超薄膜カバー層は、カバー層というよりもまさに「フィルム」といったもの。実際のディスク作成では、このカバー層を「張り合わせるというのが特徴」(久保氏)。もちろん、「均一な厚みで、405ナノメートルの光がすっと抜けます。副屈折ももちろん、少ないです」という。

 ちなみに、この超薄膜カバー層に採用する材料について、「よく言われてるのはポリカーボネートですが、写真などで使われているTACというものがあります。現在検討中ですが、それが使えるのではないかと考えています」(河俣氏)と話している。

 ただし、同社が有機色素の開発にいくら長けているとはいえ、波長405ナノメートルの青紫色レーザーに使用できる有機色素の開発は、一筋縄ではいなかったという。

 「色素の良いものを見つけ出す、設計するということが、一番苦労するところですね。また、腕のみせどころでもあります。実際に作って(合成して)試して、ということの繰り返しでした。色素は、波長依存があるので、まず、405ナノメートルの波長に感度を持っている色素を選択して、安定性、保存性など、もろもろの特性を考慮して決めています」(川俣氏)。

 久保氏も同様。有機色素の開発は「最初は、煮ても焼いても食えないような色素でした」と笑いながら話し、「最初何万種類もあるものからチョイスして、化学構造を変え、最終的には数百種類の中から絞り込んでいきました。今、ほぼ決定版に近いものができています」(久保氏)という。

 また、有機色素を使用した追記型ディスクの2層記録について、久保氏は「技術的には可能だと思う」とし、そういう研究は行っていると話す。ただし、久保氏は、実際にユーザーのニーズはあるのかという点で疑問を投げかける。

 これは、2層記録ディスクが構成する層が多くなるだけでなく、製造も難しく、思いのほか高価になってしまうからだ。「(2層記録ディスクは、)多分、私の想像では、(価格的に)2倍ではすまないのではないかと思います。だったら、2枚買ったほうがよいのでは。2層にしたから2倍の値段で買ってくれるというのであれば、私どもも一生懸命作りたいと思うのですが……」(久保氏)。

 加えて、片面2層のディスクよりも、両面1層のディスクのほうが安価に作れると話す。「技術的な話をすれば、片面2層と両面はぜんぜん違います。歩留まりとかを考えると両面の方が断然安くなります。もちろん、両面より片面1層のほうが安いです。そういう意味では、(DVDフォーラムが策定中の)0.6ミリの張り合わせの方はカバー層がありませんし、色素は基本的に同じものが使用できます。ほとんどDVDのラインそのもので作ることができるので、相当安くなります」(久保氏)。

将来的にはより高速に。0.85では25GバイトまではOK

 同社が開発した追記型ディスクの記録スピードは、カバー層0.1/0.6ミリ両方ともに最大72Mbps(2倍速)。しかし、TDKでは、その倍の4倍速での記録も確認しているという。有機色素でどのぐらいまで記録スピードを向上させることができるのかという点も気にかかるところだ。

 その点について久保氏は、「今は2倍ですけど、有機色素でもCD-Rの時もそうだったように将来的には周辺技術の進展にあわせて(記録速度の向上を)やっていこうと思っています」と話す。

[北川達也, ITmedia]

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