News 2002年12月17日 00:30 AM 更新

「触覚」を忠実に再現するタッチパネルシステム(1/2)

画面が平面なタッチパネルは、触ってもボタンを押した感覚がない。モーター駆動によって、この欠けている「触覚」を再現、“ボタンを押した感じ”をきちんと得られるようにしたのが、日立製作所・星野剛史氏の「Tactile Driver」だ

 WISSでのテーマ分けは、「インターネット」「五感」「例示/予測」「入力」「3次元」「視点」「実世界」となっている。このジャンル自体が、現在のコンピューティングとは、違っていることを感じさせる。誤解を恐れずに言えば、「従来のコンピュータらしさ」から“逸脱”しているのである。

 特に、逸脱していると感じるのが、「五感」のセッション。ちょっと先をいっている感じと言えばよいだろうか。今のシステムとちょっと違う響きだし、五感とか、視点とか、実世界とかいうのは、まさにこれからコンピュータが発展していくだろうと予測されるジャンルだ。

 この「未来感覚」を、WISSのメンバーは、等しく共有していたようだ。最後に発表になった対話賞&ベストペーパー賞を、この「五感」のなかの発表である「タッチパネルシステム」が受賞したのである。

 「触覚を忠実に再現するタッチパネルシステム Tactile Driver」は、日立製作所デザイン本部の星野剛史氏による研究である。星野氏は、2001年に「Magicscape」という水晶玉型の(というか水晶玉そのものの)ディスプレイを考案/制作したデザイナーである。このMagicscapeは、手のひらでなでるようにして操作する。終了は、「ふっ」と息を吹きかけることで行うという凝りようだ。


日立製作所デザイン本部の星野剛史氏


星野氏によるMagicscape。水晶型のディスプレイである


Magicscapeは、このようにのぞき込んで使用する。水晶をなでるように手を動かすと動かせる。息を吹きかけると、ウィンドウが閉じる

 この水晶玉型のディスプレイもSF的な魅力にあふれているが、Tactile Driverもすごい。Tactile Driverを一言で言えば、「ディスプレイ自体を上下できるようにしたディスプレイ」である。

 ATMなどで標準的に使われるタッチパネル型のディスプレイは、キーボードやボタンを画面上に表示できるために、画面と操作部が一致している。そのため操作の一体感を得られ、分かりやすいので、初心者ユーザーなどの多いキオスク端末で広く用いられている。

 しかし、分かりやすさの半面、画面が平らなために、タッチパネル型のディスプレイは、視覚障害者などにとっては、操作しやすい/しにくい以前の問題で、全く手がかりがないので、操作できないデバイスになってしまっている。

 そこで、ボタンの形状に合わせてディスプレイを上下することで、ボタンの感覚を実現しようとするのが、このTactile Driverなのである。


タッチパネルの課題を克服しようと研究が進んだ

 ボタン以外のところでは押し込めないので、ボタンと地の部分を区別することができるという。ボタンに合わせてボタンの内容を読み上げもできる。使ってみると、なるほど確かにデコボコしている。

[美崎薫, ITmedia]

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