News | 2002年12月17日 00:30 AM 更新 |
昨年のWISS2001で、ベストペーパー賞を受賞した東京大学大学院・空間情報科学研究センター 東京芸術大学・多摩美術大学非常勤講師の田中浩也氏の新たな研究発表が、「ページ群の疑似3次元配置を用いたプレゼンテーション支援」である。
昨今のプレゼンテーションでは、専らマイクロソフトのPowerPointが使用される。このPowerPointは、ページの切り替えの効果が考慮されておらず、ページ群は1方向に連なる紙芝居となっていて、複数の画面を並べたりしにくい。
「ページ群が一方的な連なりとなっている」ということは、通常話をするときに使われる「概観すると」「この議論を進めると」「別の角度から見ると」などのような「空間」や「移動」に関する言葉を、うまく活用できていないということでもある。「人間にとって概念のナビゲーションと空間のナビゲーションとは密接な関係を持っていると言われているのですが、それを利用できていないのではないでしょうか」と田中氏はいう。
実際、プレゼンテーション作業で、PowerPointは十分機能していないことも多い。例えば、プレゼンターは、しばしば同じスライド群を用いて、別のプレゼンテーションを行ったりする。異なる聴衆や顧客を相手に行う場合や、異なる時間の中で行うような場合である。
このようなとき、大まかなストーリーは同一でも、聴衆のレベルに応じて技術的な話とマーケティング的な話をわけたり、短い時間の時には具体例を少なくしたり、長い時間の時には余談や応用例を追加したりする、というようなことが行われる。
PowerPointで1方向の紙芝居を作ってしまうと、不要なシーンをカーソルキーを使って飛ばしたり、サムネイルで一覧したりしなければならず、その作業をしている最中には、聴衆から意識が離れてしまうことになる。聴衆から意識が離れたことを、聴衆は敏感に察知するもので、その結果、プレゼンテーションの効果は著しく削がれてしまうことになる。
MITメディアラボのNicholas Negroponte氏は、プレゼンテーションをマイク1本で行うことで知られている。見えない未来をPCの画面に描いてみせる、というようなことをせず、聴衆の想像力に訴えながら、言葉で描き出すのである。
生身の言葉は最も力強いのだが、要するに、見慣れたプレゼンテーションや聴衆と向き合わないプレゼンテーションというのは、プレゼンテーションの体を成していないわけである。
そこで、話の流れを作りやすく、臨機応変に対応できるような形で作られたのが、今回の研究のプレゼンテーション支援ツール「STAMP-PS (Spatio-Tempooral Association with Multiple Pages, Presentation Support)」である。
STAMP-PSでは、プレゼンテーションシートが、3次元空間上に配置されている。話を進めるときには、奥に行くようにシートを進めることができる。いくつかのページを列挙する場合には、左右にシートを並べてみるようにできる。また、逆の例を挙げる場合には、シートが回転して「逆転している」というような効果を得られるようになっている。
つまり、議論の進め方と画面の動作を一致させることで、効果的なプレゼンテーションを行うことができるようになっているわけだ。
プレゼンテーション全体を一覧する場合にも、空間的な配置で一覧したり、円周上にサムネールを配置して選んで見たりできるようになっているところが興味深い。
田中氏によると、このSTAMP-PSは、近日中に公開されるということなので、新しいプレゼンテーションツールを探している方は、試してみてはいかがだろうか。
関連リンク[美崎薫, ITmedia]
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