News 2002年12月18日 09:12 PM 更新

CD-Rの「音」を考える
プレクスターに聞く「音の良いCD-Rドライブの作り方」(1/3)

高音質な音楽CDを作成する上で、重要なポイントになるのが記録するCD-R/RWドライブ。ではどうすれば音の良いドライブになるのか。スタジオなどで使用される業務用CD-R/RWドライブを開発しているシナノケンシ/プレクスターに、そのノウハウを聞いた

 CD-R/RWドライブが市販のプレスCDの原盤(マスター)作成用に開発されたということは、多くの方がご存知だろう。現在の制作現場では、当初主流だったUマチック(4分の3インチテープ)からCD-Rへと変わりつつあり、ほとんどをCD-Rマスタリングで行っているという大手レコード会社もあるぐらいだ。

 CD-RをマスターにしたプレスCDの作成は、専用のリーダードライブを使用して、CD-Rからデータを読み出し、ガラスマスターを作成することから始まる。次いで、ガラスマスターを元にメタルマスターを作成。実際のCDプレス工程へと移る。

 CDプレス工程は、スタンプ工程のようなものだ。だから、その主眼はオリジナルの「レプリカ」をいかにうまく作成するかということになる。また、この工程は、基本的には、CD-RやDVD-Rメディアなどを作成する場合とほぼ同じ。記録可能なメディアとプレスCDの最も大きな違いは、「記録層」の有無である。CD-Rで言うところのウォブルグルーブの代わりに実際のピット(信号)を刻んだものが、プレスCDだと思えばよい。

 こうしたプレスCD製造の流れからも分かるように、CD-Rをマスターとして使用するということは、制作者側から見るとCD-Rが“原盤”、つまり“原音”ということになる。もちろん、原盤である以上、業務用のCD-R/RWドライブは、高音質な製品が必要だ。

 そこで、今回は現在ほぼ唯一といってもよい業務用CD-R/RWドライブを開発・製造しているシナノケンシ/プレクスターに、どうすると良い音の音楽CDを作成できるCD-Rドライブになるのか、そのノウハウを尋ねてみた。

電源対策が一番効果的。内蔵よりも外付けを

 CD-Rで音楽CDを作成する場合、同じメディアを使用しても記録用に使うドライブで音は大きく異なる。

 デジタルなのに音が変わる。それがなぜなのか、実のところ、明確に理論化にされているわけではない。「オーディオの世界ではよくあるんですが、普通の測定器で歪みとかを測ると差が出ない。ですが、耳で聞くと差があるということがあります。特殊な測定器を使うと分かることもあるのですが、分からないことの方が多いんです」(シナノケンシ 電子機器事業部 取締役事業部長の草野一俊氏)。

 しかし、音が変わるというのは紛れもない事実。しかも、どのように対策を行うと音質が良いほうに変化するということは、さまざまな検証が行われ、次第に明確になってきている。シナノケンシ/プレクスターが開発した業務用CD-R/RWドライブ「PlexMaster-01/02」には、そういった同社のノウハウが生かされて設計されている。

 では、具体的にどういったノウハウがあるのか――そのポイントは大きく分けて4つある。

 まず1つ目が「電源」だ。「CD-Rの音を良くしたいのだったら、やっぱり、まず、電源ですね。電源をしっかりするだけで全然違います。パソコンのスイッチング電源なんて最悪です」(草野氏)。

 シナノケンシ 電子機器事業部マーケティング部の技師である浅野浩寿氏も「とにかく、パソコンの電源はノイズだらけですから……」と笑いながら話す。


シナノケンシ 電子機器事業部IS技術部設計管理課主任技師 小林 照幸氏(左)、プレクスター 周辺機器部部長植松直人氏(中)、シナノケンシ 電子機器事業部マーケティング部技師 浅野浩寿氏(右)

 同社の業務用ドライブ「PlexMaster」は、8倍速ドライブ「PX-W8220Ti」をベースにして開発されている。これは有名な話だ。しかし、でき上がった製品は、全くの別物。この製品では、メイン基板を新しく設計し、電源の強化を行うために12V系、5V系の回路と部品などが見直された。それぞれに独立した「音質強化コンデンサ」を採用している。言うまでもなく、これによって電源の安定化を図り、電源周りからくるノイズへの対策を施しているのである。

 こうした話からも分かるように、内蔵ドライブと外付けドライブを比べた場合、「外付け型の方が音が良くなる」(プレクスター 周辺機器部 部長植松直人氏)。「例えば、内蔵と外付けのUSBだったら、外付けのUSBの方が電源が別になりますし、音は良いです」(同)。

[北川達也, ITmedia]

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