News 2003年1月9日 12:50 PM 更新

Centrino――なぜか語られないもう1つの重要機能

ノートPC用のコアロジック技術、「Centrino」がついに“発表”された。省電力性と性能の両立や無線LANサポートなど特徴の多い同技術だが、なぜかほとんど触れられていない重要な機能の実装が1つある

 世は新年開けたばかりだが、早くもIntelは臨戦態勢を敷いているようだ。

 1月9日から米国で開催される「Consumer Electronics Show」に合わせ、“Baniasプラットフォーム”として呼ばれていたノートPC用の新プラットフォームの名称が“Centrino”と決定し、正式に発表されたからだ。

 Centrinoとは、CPUである「Pentium-M」(コア・コードネーム“Banias”)とそれをサポートするIntel 855チップセット、そして無線LANチップシステムである「IntelR PRO/Wireless network connection」を組み合わせたシステムを総合したモノの名称だ(Intelは“モバイル・テクノロジ”と呼称しているが、私は製品に密接しすぎていると感じる。今回はより実態に近い“コアロジック技術”と勝手に呼ばせてもらうが、Centrinoのようなモノにふさわしいジャンル名が従来なかっただけに、今後も若干の混乱があるだろう)。

 CPUとしてのBaniasや、その特徴に関しては、すでにたくさんの記事があるため、ここでは詳細を省かせていただく。また、発表記事については別記事を参照してほしい。

 今回語りたいのは、私的に気になった2つの点だ。

なぜかアピールのないUSB 2.0サポート

 Baniasプロセッサの正式名称が「Pentium-Mプロセッサ」となった点も驚いたのだが、一番驚いたのは、i855シリーズチップセットで提供されるUSB 2.0サポートについて、ほとんどリリースで触れられていないことだ。

 アメリカのIntelサイトで公開された製品ガイドを見ても、性能に関するページで一言程度触れられている程度でしかない。

 確かに、以前から漏れ伝わっていた情報でもUSB 2.0サポートの強調はなかったのだが、それでもこれはあんまりではないだろうか。というのも、IntelのノートPC用チップセットがUSB 2.0コントローラを内蔵するのは、実はi855シリーズが初めてとなるだからだ(冷静に考えれば、デスクトップに比べてここまで差が開いたことも驚きなのだが…)。

 おそらくIntelとしては、無線LAN対応など、他に大きなアピールポイントがあり、そこにマーケティングを絞り込んでいる点、そして一部のノートPCが、既にPCIバス経由のコントローラーを実装してUSB 2.0を搭載している点などを勘案してあまりアピールしない戦略を採っているのだろうと推測している。

 しかし、目新しさは少ないものの、実際のユーザーへの影響を考えた場合、USB 2.0搭載の意味は非常に大きいのではないだろうか。

 確かに機能としては同じなのだが、PCI接続の外付けチップでサポートされる場合とでは、その使い勝手や性能は大きく異なってくるからだ。

 たとえば、ブート(起動)デバイスのサポートがある。

 現在USB 2.0を搭載しているノートPCでは、メーカー側が専用BIOSを用意して、USB 2.0コントローラをブート時に認識させていることが多い。標準的なBIOSでは、PCIバスに接続されたUSBコントローラは、ブートデバイスサポート対象とはならないからだ。

 しかしこれは一種トリッキーな実装(若干オーバーだが)を余儀なくされるため、基本的にはサポートが難しい。

 ところがチップセット内蔵デバイスとなれば、ブートデバイスの制御は非常に楽になる。

 また、システム性能という点からも、チップセット内蔵は(理論上ではあるものの)かなり有利だ。

 PCIバス接続のコントローラでは、USB 2.0のデータ(最大理論値では480Mbps=60MB/秒)がPCIバスを経由することになり、CardBusコントローラなど、他のPCIデバイスのスループットを圧迫するが、チップセット内蔵の場合は、基本的にそうした事態は起こらない。

 そして何よりも、これはヘビーユーザーと周辺機器メーカーが待望していた(とあえて言ってしまおう)、サブノートやミニノートPCなどでのUSB 2.0標準サポートがようやく実現するきっかけとなる。設計難易度だけでなく、コストや動作検証などの点でメーカー側の負担が格段に楽になるからだ。

 少なくとも自分にとっては、「サブノートでもUSB 2.0が当たり前になるきっかけが整った」ということは、802.11a/b無線LANサポート以上に大きな事柄ではないだろうか。

新生“Intel inside”ロゴに見える気概

 私が驚いたことは、実はもうひとつある。それはCentrinoロゴ――正確に言えば、上半分の(Intel insideロゴ)だ。

 実はこの“intel inside”のロゴ、従来とは大きく変わった、新しいものとなっているからだ。

 一見「言われてみれば、少し変わったかな?」と思えるこのロゴだが、詳細に見ると随分異なる。社名ロゴのように“t”と“e”を続き文字としたり、書体をより引き締まったものに変更したりと、よりスピーディな印象を受けるものになっているのだ。

 「たかがロゴでしょ?」と言うなかれ。ブランド戦略に力を入れるメーカーが長らく使ってきたブランドロゴのモデルチェンジを行うということは、そのメーカーのコーポレートアイデンティティが大きな転機を迎えたことの証明だ。

 以前より「Baniasプラットフォームに関しては、Intelが本気となった一大プロモーションを行う」と噂されていたが、その証明と、これからのIntelの気概を表すものこそ、この新ロゴと思われる。

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[橋本新義, ITmedia]

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