News 2003年1月14日 11:15 PM 更新

ディスプレイ以上、PC未満?――マイクロソフト、Smart Displayを国内発表

マイクロソフトがワイヤレスディスプレイ「Windows Powered Smart Display」を発表。家中どこでも“PCの子機”として利用できるスマートさが売りだが、動画や3Dゲームが楽しめない点や、10万円前後の価格など“スマートでない”面も多い

 マイクロソフトは1月14日、コードネーム“Mira”の名で呼ばれていたワイヤレスディスプレイ「Windows Powered Smart Display」を国内で正式に発表。都内でこの新デバイスの説明会が行われた。


タブレット型の本体をペンで操作するSmart Display

 Smart Displayはタブレット型の本体で、タッチパネル搭載のディスプレイ上でペンを使って操作する。このコンセプトは昨年11月に同社が発表したWindows XP Tablet PC Editionを搭載する「Tablet PC」とよく似ているが、まったく別物だ。その違いは、Tablet PCがPCとしてのフル機能を備えて単体でもPCとして動作可能なのに対して、Smart DisplayはWindows XP Professional搭載PCを“ホスト”とし、Smart Displayを“子デバイス”とする「親子関係」によって利用するという点だ。

 Smart Displayについて同社ニューメディア&デジタルデバイス本部長の宗像淳氏は「家庭内においてPCをより使いやすくするため、PCの“子機”として提案するもの。コードレス電話機の子機のイメージで、PCが家中どこででも使えることをコンセプトにした製品」と説明する。


「Smart Displayはコードレス電話機の子機のイメージ」と語る同社ニューメディア&デジタルデバイス本部長の宗像淳氏

 本体に搭載された無線LAN機能でホストPC(親機)とワイヤレス接続し、家庭内のどこからでもWeb閲覧や電子メール、音楽ファイル再生などが行える。 ホストPCとの接続は、Windows XP Professional(Service Pack 1)に搭載されている「Remote Desktop」機能を利用。Smart Display側には子機として動作するためのクライアントソフト「Remote Desktop Protocol」を搭載し、親機と連携して動作する日本語入力システム(IME)や、ユーザーアカウントを簡単に設定できるウィザードも用意されている。本体にはWindows CE .NETベースの「Windows CE for Smart Displays」がOSとしてあらかじめ組み込まれており、電源オンでタイムラグ無しに利用できる点も特徴だ。


本体に搭載された無線LAN機能でホストPC(親機)とワイヤレス接続

 Microsoft エンベデッドアプライアンス部門シニアディレクターのKeith White氏は「Smart Displayはユーザーが家庭のどこの部屋でもPCが利用できるようになる革新的なデバイス。機能が限定されたインターネットアプライアンスなどとは違って、全ての機能が親機であるホストPC上で動いているため、PCのフル機能が使える」と語る。


親機−子機の関係は、Smart DisplayのシステムプロパティでホストPCのシステム構成が表示されることからも分かる

 海外では米ViewSonicが、昨年11月にSmart Display「Airpanel」シリーズ2機種を発表している。今回の国内正式発表に合わせて、NECとNECカスタマックスがSmart Display新製品「SD10」を発表(詳細は別記事を参照)したほか、富士通もSmart Displayの発売を表明した。

 NECカスタマックスマーケティング本部長の高塚栄氏は「Smart Displayはキッチンやベランダなども利用シーンとして想定されているので、SD10は多少水がかかっても大丈夫な防滴仕様にしてある。また、単体としてもビューワとして使えるようにPCカードスロットを搭載したり、USBポートを用意してキーボードやマウスも利用できるようにした。PC周辺機器として提供するため、ホストPCを選ばないのも特徴」と説明する。


NEC/NECカスタマックスが発表したSmart Display「SD10」

 富士通のSmart Display第1弾は、コンシューマ向けPC「FMV-DESKPOWER」シリーズのオプション品としてPCとセットにしたカタチで市場に投入される。

 富士通パーソナルビジネス本部長の山本正己氏は「まずは液晶一体型のFMV-DESKPOWER Lシリーズとのセットで発売する予定。Smart Displayは、富士通全社が進めるユビキタスワールドの中で最も重要なキーデバイスと位置付けている。Smart Displayを家庭内PCの“セカンダリディスプレイ”と位置付け、リビングやキッチンなど家中どこでも自由に持ち歩けることをテーマにした」と語る。


富士通のSmart Displayは、DESKPOWER Lシリーズとのセットで発売

 「スペックなど詳細は近日中に発表予定」(富士通)とのことだが、重さが1キログラム強とNECのSD10(1.5キログラム)よりも軽くなるほか、充電が行えるクレードルが用意される。802.11b方式の無線LANや、SVGA(800×600ピクセル)のディスプレイ解像度などはSD10と同じ。メモリカード用としてSDメモリーカードスロットが用意されるが、SD10にあるPCカードスロットは装備しない。2月後半頃に発売予定。

Smart Displayは本当に“スマート”か?

 親機−子機の関係でホストPCにワイヤレスでアクセスでき、家庭内PC(ホストPC)の“第2のディスプレイ”として機能するSmart Display。同社ニューメディア&デジタルデバイス本部マーケティング部長の御代茂樹氏は、さまざまなデモンストレーションを通じてSmart Displayの利用シーンを紹介した。


リビングでTVのスポーツ中継を見ながら、Smart Displayを使ってスポーツ選手の情報をネット上で検索


子供が寝転びながらSmart Displayで絵本サイトを楽しむ様子はビデオで紹介。感圧式タッチパネルなので指でも操作できる


ベッドの上で雑誌を見る感覚でメールチェックを行うなど、自由な姿勢でのPC利用もSmart Displayならでは


キッチンにSmart Displayを持ち込んで、インターネットで料理レシピを検索しながら調理するといったシーンにも

 だが、紹介された利用シーンでのSmart Displayの使われ方は、どれもウェブ閲覧やメールチェックなど比較的軽い作業が中心となっている。これは、今回発表されたSmart Display製品群が無線LANに802.11b方式を使っているため。TVやDVDの視聴、ビデオファイルの閲覧など高速アクセスを必要とするアプリケーションには、802.11bの最大約11Mbpsという転送速度では対応できないのだ。

 この点についてWhite氏は「今後は802.11aや802.11gといった広帯域規格に対応したSmart Displayも登場予定で、フルモーションの動画再生も可能になる。ただし、DirectXを利用する3Dゲームなどハードウェアに直接アクセスするようなアプリケーションは、Smart Displayでは利用できない」と説明する。

 また、現時点でリリースされているWindows XPのRemote Desktop機能では、リモートデバイスは1台のホストPCに1セッションしか作れない。つまり、複数のSmart Displayから1台のホストPCに同時にアクセスすることは現時点ではできないのだ。「複数セッションに対応したRemote Desktopは、Windows XPの次回ServicePackもしくは次期WindowsのLonghornでサポートしていく予定」(White氏)。

 国内Smart Display製品第1弾として今回発表されたNECのSD10は、9万9800円(直販サイト「121@store」価格)という値段がつけられた。昨年発表されたViewSonic製も1000ドル前後する。実売で10万円を切るノートPCも登場している中で、Smart Displayの割高感は否めない。この新デバイスの普及には、メーカー側のさらなるコストダウンが要求されるだろう。

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[西坂真人, ITmedia]

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