News | 2003年1月27日 11:16 PM 更新 |
「108MHzのDACの真価を発揮させるためには、どういう回路でなければいけないのかということを、もう一度洗い直しました。結局、当社の最高級DVDプレーヤーであるSD9500の回路がベストということがわかったのですが、価格の面から言っても、さすがに、あの回路をそのまま載せることはできません。そこで、そのエッセンスを最大限投入するということに主眼において開発を行い、通常の普及機とはまったく異なる高級な回路を投入することにしました」(桑原氏)。
そうやって開発されたRD-X3の画質は、桑原氏によると「直流の安定度、微小信号の再現能力、そういったものが普及機と比べて圧倒的に高めることができた」という。
「プログレッシブに注力して作ったわけですが、108MHzのDACの効果はもちろんインタレース系の出力にも入ります。つまり、普通のTVしか見ない場合であっても従来モデルとは一味違う高品位な絵をみていただけるはず。絵については非常にいい答えを出せたのではないかと思っています」(桑原氏)。
“アナログの音質”を高める
一方の音質はどうか。「私から見てX3で一番強化したかったのは、プレーヤーとしての表現力なんです。松下やパイオニアもプログレッシブのモデルを出し、彼らはオーディオメーカーですから音の面でもそれなりのことをやってきている。そういった商品を向こうに回して、こちらが十分なアドバンテージを持つためには、それらを凌ぐような再生能力を持たせるべきだと考えました」(桑原氏)。特にプレーヤーの開発者でもある同氏は、従来のRDシリーズで最も強化が必要な部分が音質だと感じており、これを何とかしたかったのだという。
しかし、「こっちのほうがもっと制約が多かった」と桑原氏は話す。
というのも、音を決めるパラメータには、大きく分けて「構造」と「回路」と「デバイス」という3つの次元があるが、ベースがXS30/40であるX3は「構造は変えられない。回路も同じ」(同氏)だったからだ。
結局、桑原氏が選択したのは、3つ目の「デバイス」の変更だった。同氏によると、RD-X3では、「おもに電解コンデンサ、信号を増幅するオペアンプを高品位なものに変更している」という。
もちろん、これが音質の向上をもたらしたことは言うまでもない。「アナログの音に関しては、“デバイスを変える”というスタンスでできる最大限のことをやっています。RD-30/40と比べていただけると、明らかに高品位な音で楽しんでいただけるはずです」(桑原氏)。
プレーヤーとしての能力を高める
それ以外で、桑原氏が強調したのは、デジタルアウトで同軸をサポートしたことだ。
「これまで片岡がRD-Styleということでやってきたこの製品は、基本的には、録画系マニアの方たちに支持されるべき製品だと思います。ですが、X3にはXがついていますし、再生能力も高まった。となれば、記録機能は欲しいが、プレーヤーとしてもある程度いいものが欲しいという人もこっちに来てくれるんじゃないかと。そう考えると、プレーヤーとしての再生力をさらに高めるためには、光出力よりも同軸のデジタルアウトの方が有利ではないかと考えました。同軸デジタル出力は、ジッタという観点からみると優れているからです」。
そこで桑原氏は、従来から搭載されていた光デジタル出力に加え、リアパネルを変更し、「あえて同軸を追加した」という。
もちろん、ただ追加したわけではない。「それでは普及機となんら変わりがない」。同氏が運が良かったのは、この部分についてはまったく新しい回路を搭載することが可能だったことだ。「X3のいろいろ制約があるオーディオ回路の中でも、何とか対応できるのがこの部分だったんです」(桑原氏)。
そこで、桑原氏がやったのは、「SD-9200に使った帯域制限トランス、パルストランスというのですが、それを搭載」したことだった。
「コスト的な問題もあって、現在の最高級DVDプレーヤーであるSD-9500のものはさすがにちょっと使えなかった」。だが、1世代前とはいえ、SD-9200のものは、当時としてはかなりこだわって作った部品。それを今もう一度使い、さらに、それを駆動させるアンプ部分に、東芝製の高速で動くバランス形の高性能アンプを持ってきた」という。
「結果として、トランスがうまく帯域を制限し、不要輻射の発生を抑えて、滑らかで、対照性の高い、ジッタの少ない波形を出すことができた。トランスが入っているだけで、通常の普及機とはまったく異なるぐらいのコストがかかるのですが、今回はそれにプラスして、トランスをバランスで駆動するという回路を搭載できました。デジタルアウトの品位として、アナログでできたこととは比較にならないぐらいの効果が出せたんじゃないかと思っています」(桑原氏)。
現状でできることはすべてやった…
もともと「自分はプレーヤーの人間」という桑原氏だが、「これまでレコーダの担当者が日夜、一生懸命努力している姿を横で見てきました。今回は彼らがまとめあげたものを、本当に価値あるものに高められるチャンスがめぐってきました」と言い、RD-X3は現時点で「できることはすべてやった」と自負する。
開発の主眼を「プレーヤーとしての能力を上げるところ」に置いたという同氏だが、それゆえ「GRT(ゴーストリダクションチューナー」も搭載。これによって「録画能力も向上している」という。
「エアチェックマシンで最強の機械を目指すというスタンスですから、GRTは必須でしょう。意外なことに、他社製品ではGRTはあまり付いていないんですよ。X3はこれに加えて、プログレで最高に近いものを入れ、デジタルアウトも強化した。性能面で見て、現時点ではもう非の打ち所はないねと言うところまで、できたかなと思っています」(桑原氏)。
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[北川達也, ITmedia]
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