News 2003年2月12日 06:26 PM 更新

“普通紙”で高画質――エプソン、顔料インクの新カラリオ

セイコーエプソンがインクジェットプリンタ「カラリオ」の新製品2機種を発表。保存性に優れ、普通紙への高画質印刷が可能な“顔料インク”を採用した

 セイコーエプソンは2月12日、新顔料インク「PXインク」を採用したプリンタ新製品2機種、A4インクジェットプリンタ「Colorio PX-V700」と複合機「カラリオコピー CC-600PX」を発表した。両機種ともに2月21日から発売する。価格は、PX-V700が2万6800円、CC-600PXが4万5800円。


A4インクジェットプリンタ「Colorio PX-V700」


複合機「カラリオコピー CC-600PX」

 “普通紙くっきりプリント”をテーマにした今回の新製品2機種には、同社独自の顔料インク技術を発展させた「PXインクテクノロジー」を採用。新たに開発した顔料インク「PXインク」を、4色のインクすべてに使用している。同社は顔料系インクを、昨年3月に発表したPM-4000PXでコンシューマ向けに初めて採用。その後、業務向けの大判インクジェットプリンタにも顔料インク採用機種を投入している。

 もともと同社のインクジェットプリンタは、染料系インクを使って“超写真高画質を実現する”という方針をとってきた。顔料系インクで普通紙での印刷に主点をおいた今回の新製品は、同社としては事実上初の“写真高画質以外のユーザーをターゲットにした製品”となる。

 同社の丹羽憲夫専務は「従来の染料系インクは写真高画質という点ではいいが、保存性で限界があった。顔料インクは、耐光性、耐水性、耐ガス性に優れている。専用紙で写真高画質というニーズの一方で、普通紙で高い保存性を求めるユーザーも増えている。新PXインクは、普通紙印刷での最高画質を目指した」と、顔料インク採用の経緯を語る。

顔料インクのアドバンテージは“にじみのない印刷”

 なぜ、顔料インクは保存性に優れ、普通紙でも高画質な印刷が可能なのだろうか。

 水溶性の染料インクは、紙に付着した時に紙の繊維に沿って広く浸透して、いわゆる“にじんで”しまう。そのため、文字などのエッジにジャギーが出たり、表面がザラザラした感じになる。それに対して水に溶けない顔料インクは、繊維にあまり浸透せずに紙の表面に顔料粒子が留まるため、シャープで発色の高い印刷結果が得られるのだ。


染料インク(左)はにじんでしまうが、顔料インク(右)はインク粒子が表面に留まる

 「保存性の面でも同様で、水溶性の染料インクは水が付着すると溶けてにじんでしまうが、顔料インクではそれがない。また、光やガスに対しての耐性も非常に高く、店頭のポップやチラシなど長期保存が必要な印刷にも適している」(情報画像事業本部副事業本部長の平野精一氏)。


実際の印刷物に水をかけてみた例。染料系インク(右)では文字がにじんで見えなくなっている


新製品で印刷した熱帯魚を水槽で泳がすデモ。水に溶けない顔料インクは、水の中でもにじまない

顔料インクの“苦手”を克服した新「PXインク」

 その一方で、水溶性でない顔料インクはそのままではインク液(溶媒)に溶けない。溶媒中に分散させるためには、親水性のブロックで顔料インク粒子を被ってやらなければならないのだ。だがこの親水性ブロックが、普通紙への高画質印刷の妨げになっていた。

 「紙には耐水性や筆記特性を高めるために“サイズ剤”という疎水性物質が含まれている。このサイズ剤が親水性ブロックをはじいてしまう。そのため、従来の顔料インクでは、インクがのらずに白点として出てしまうケースがあった」(平野氏)。


従来の顔料インクはサイズ剤の部分ではじかれてしまう

 新開発のPXインクは、顔料インク粒子を被うブロックの材質と構造に手を加えることで、サイズ剤との親和性を高めた。「顔料インク粒子のまわりを大きな“疎水性”ブロックで被い、その先端に溶媒中に分散させるための小さめの“親水性”ブロックを設けた。この疎水性ブロックがサイズ剤に吸着するため、普通紙でも高画質印刷が可能になった」(平野氏)。


疎水性ブロック部がサイズ剤に吸着して高画質印刷を実現

複合機も新印刷エンジンで同時リリース

 今回の新製品は、A4対応のインクジェットプリンタ「PX-V700」とともに、印刷/カラーコピー/スキャナ機能を1台にした複合機「CC-600PX」もラインアップしている。注目したいのは、2機種ともに新顔料インクを採用するなど印刷エンジン部はまったく同じで、解像度や印字スピードなどプリンタのスペックも変わらない点だ。


印刷/カラーコピー/スキャナ機能を1台にした複合機「CC-600PX」も新顔料インク

 従来、複合機には1世代前の印刷エンジンを搭載してくるのが通例だった。その理由は「スキャナと印刷機構をマッチングさせるために、半年ぐらいの開発期間は必要だった」(同社)からだ。だが今回は、“売り”である新PXインクを採用した最新の印刷エンジンを、複合機にも同時に搭載してきた。ここに、複合機に対する同社の意気込みが感じられる。

 「プリンタ総需要は減少傾向にあると予測されているが、複合機やダイレクトプリンタなど特徴をもったプリンタは今後大きな伸びが期待できる。今回発表したCC-600PXは、個人ユーザーだけでなくビジネス用途にも十分使ってもらえる製品となっている。インクジェット複合機の分野では、シェア40%を狙いたい」(エプソン販売の真道昌良社長)。

 主な仕様は以下の通り。

機種名PX-V700CC-600PX
印字方式MACH方式
解像度最大1440×720dpi
最小ドットサイズ3ピコリットル
インタフェースパラレル、USB 1.1USB 1.1
本体サイズ470(幅)×301(奥行き)×237(高さ)ミリ453(幅)×434(奥行き)×254(高さ)ミリ
重さ約5.2キロ約9キロ
価格2万6800円4万5800円
販売時期2月21日

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[西坂真人, ITmedia]

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