News 2003年2月21日 07:53 PM 更新

次世代PC Audio、“Azalia”とは?

IntelがIDFで明らかにした次世代PC Audio“Azalia”。そのおよその内容と、裏側にある戦略を紹介しよう

 「Intel Developer Forum Spring 2003」2日目の基調講演でIntel幹部が明らかにしたAzaliaとは何なのだろうか? 別記事で報告したように、AzaliaはDVD-AudioやSuper Audio CD(SACD)、ドルビーデジタル、THXサラウンドEXなど、AV家電で使われている技術をPCにもたらし、一方で音声認識などビジネス向けのアプリケーション進化も期待できるという。

 中でもDVD-AudioやSACDは、音質の高さだけでなく一般的な音楽CDよりも著作権保護が厳密なことが、1つのウリになっている。DVD-Audioに関してはPC環境での再生環境をCreative Technologyが「SoundBlaster Audigy2」で提供しているが、SACDに関しては「PC向けのドライブが存在しないため、リッピングが不可能」なことをコンテンツ権利者にアピールしている背景がある。

 しかし、残念ながらAzalia自身はそうした先進的なフォーマットやサラウンド技術をサポートする道筋を付けるもので、実際にSACDの再生機能をはじめとするハードウェアを定義するものではなかった。基調講演での紹介の仕方は、少々、誇大広告に過ぎると言えるかもしれない。

 ただし、IntelがAzaliaの実用化ターゲットとしている2004年という時期を考えると、その戦略がおぼろげながら見えてくる。

Azaliaの目的はAC'97の拡張

 AC'97は97年にIntelが中心になって策定したPCチップセットとオーディオチップを接続するための通信リンク仕様だ。現在、PCチップセットのほとんどにAC'97リンクポートが備わっており、ハードウェアベンダーはAC'97に対応したオーディオCODECチップを追加するだけでPCにサウンド機能とソフトウェアモデムを付加できる。

 しかしAC'97にはいくつかの問題があった。まずリンク仕様の互換性は高かったものの、標準化されたハードウェア仕様の範囲が狭く、完全な互換性を実現できなかったこと。そしてリンク帯域が(今となっては)狭く、新しいフォーマットやサラウンド技術への対応が行えなくなったこと。それに通信プロトコルが貧弱で、AV家電で用いられているようなサウンドアプリケーションに対応できなくなっていたことだ。

 平たく言えば、AC'97は単に音を出すだけならば十分だが、エンターテイメントとしてサウンド機能を積極的に使うには力不足だった、ということである。

 そこでAzaliaではリンク仕様だけでなく、DMAコントローラやオーディオCODECチップ、さらにはマザーボード上への実装までを細かく決め、互換性の問題を解決している。またPC側から見たAzaliaの振る舞いを規格化し、単一のドライバですべてのAzaliaオーディオデバイスに対応できるようにする。

 またコントローラチップの性能次第との但し書き付きだが、同時に15ストリームのオーディオを同時並行処理可能で、リンク帯域も必要十分なレベル(毎秒48Mビット)に引き上げられる。これにより、24ビット/192KHz、8チャンネルのオーディオにも余裕で対応できるようになった。


Azaliaのシステム構成

 もちろん、Azaliaを使わずともこれらの機能に対応したPC用のオーディオデバイスは存在する。前述のSoundBlaster Audigy2など、拡張ボードをPCIスロットに挿せばいいだけだ。Azaliaの目的はAC'97と同じく、ローコストにオンボードのサウンド機能を搭載可能にすることである。

 ただし、“Azaliaへの対応”=“DVD-AudioやSACD、THXサラウンドEXへの対応”ではない。つまり、どのようなフォーマットをサポートするのかは、周辺ソフトウェアやAzaliaに接続するオーディオCODECチップに依存しているわけだ。AzaliaならばSACDを再生できる、ではなく、AzaliaならばSACDを再生可能なハードウェアを制作できるというのが正しい。

 音楽コンテンツの権利者たちが抱いているPCへの嫌悪を考えれば、再生させる能力があるからといって、PCの機能になると言い切ることはできない。

2004年末のTejas搭載機がターゲットか?

 IntelはAzaliaが最初に搭載されるPCは、2004年に登場すると話している。Azaliaの仕様策定を進めているチームは、今年第2四半期に最初の仕様を出し、何段階かのレビューを経て来年第2四半期に正式仕様をリリースする見込みだ。

 これはIntelが計画しているセキュアPC技術「La Grandeテクノロジ」のリリースタイミングとも一致する。IntelのLa Grandeテクノロジは、Tejasとその対応チップセットによって実現されると言われている(ただし実際にWindows機でLa Grandeテクノロジ対応アプリケーションが動くためには、MicrosoftのPaladium技術を搭載したOSがリリースされなければならないが)。

 なお、次期Pentium 4のPrescottもLa Grandeに対応しており、Tejasと同時期に登場するLa Grandeテクノロジ対応チップセットと組み合わせることで、PrescottマシンでもLa Grandeテクノロジが利用可能になる。

 さて、そのTejasマシンだが、IntelはTejasをPrescottの1年後に投入すると言っている。つまり2004年秋、年末商戦向けに投入されるわけだ。Intelとしては、La Grandeテクノロジで完全なコンテンツ保護を行えるハードウェアプラットフォームを作り、そのシステムにAzaliaを搭載することで、コンテンツホルダーに対してプロポーズしていく考えだと推測できる。

 もっとも、La Grandeテクノロジはともかく、Azaliaはまだ仕様策定作業がスタートしたばかり。実際にエンドユーザーがOSを含めた環境として製品を入手できるようになるためには、MicrosoftのOSリリースという不確定要因もクリアしなければならない。

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[本田雅一, ITmedia]

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