News | 2003年2月21日 09:13 PM 更新 |
Intel Developer Forum Spring 2003の3日目、執行副社長兼IntelコミュニケーショングループジェネラルマネージャーのSean Maloney氏は、通信の分野からIntelの進める技術革新について講演した。
Maloney氏が特に力を入れたのは、“半導体技術による低コスト化”と“標準化による低コスト化”についてだ。「たとえ将来、事業規模を変えず収入も同じだったとしても、インターネットのトラフィックは増加し続ける。増加分に対応するためには、インターネット機器の価格性能比を引き上げていかなければならない」(Maloney氏)。
これはIntelが通信業界に本格参入して以降、ずっと唱え続けてきた論理でもある。Intelは世界で最も進んだ半導体製造技術をバックボーンに、徹底して価格性能比を向上させてきた。通信業界への投資が冷え込んでいる中で苦戦はしているが、それでも自信を失っていないのは、半導体ベンダーとしての圧倒的な自信があるからだろう。
Intelはわれわれの手元に届くアクセスラインやワイヤレスアクセスポイント、ユーザーとインフラのエッジに配置する装置から、コアとなるメトロネットワークまで、全方位で積極的に低コスト化を進めるという。
Maloney氏はIXP420、IXP421、IXP422、というXScaleコアが統合された3つのネットワークプロセッサを発表。これらの製品には汎用プロセッサコアに加え、ネットワーク処理専用のプロセッシングモジュールが搭載され、また無線LANアプリケーションとの最適化が図られているという。先日レポートしたLinksysのProConnect IIはIXP422を採用している。
Linksysによると、ProConnect IIにはVPNエンドポイントやVoIP、暗号化などの多彩な機能があるが、これらの機能を安価に提供できたのはIXP422があったからだと、展示会場では説明していた。これらのネットワークプロセッサは上位モデルのIXP425と同一のアーキテクチャを採用しており、様々な開発ツールや既存のソフトウェアライブラリなどを活用できるためだという。ProConnect IIの価格はまだ明らかにされていないが、従来の同等製品と比べると大幅な低価格化を実現する予定だ。
Maloney氏は他に、通信事業者側の機器コストと性能を向上させ、通信機器ベンダー間の互換性を高める共通のプラットフォーム、Advanced TCA(Telecom Computing Architecture)とチュナブルレーザー(波長可変機能付きレーザー発振器)も紹介した。
半導体技術で作られたチュナブルレーザーは以前に、最高技術責任者のPat Gelsinger氏が披露したことがあったが、Maloney氏がデモを行ったことで製品化に近付いていることがうかがえる。
チュナブルレーザーはWDM(光波長多重伝送)を行う上で重要な役割を果たすコンポーネント。Intelのチュナブルレーザーは15×40ミリと非常にコンパクト(従来製品は50×105ミリ)で、圧倒的な低価格化を実現できるという。
日本では数年内にFTTBの建物内引き込み光ファイバーをWDM化し、その後、FTTHのアクセスラインにもWDMを導入していく計画が関係者から聞いているが、あるいはIntelの低価格チュナブルレーザーが重要な役割を果たすのかもしれない。バックボーンの高速化はもちろんだが、WDMがアクセスラインに導入されるようになれば、建物単位もしくは家庭に直接、ギガビットクラスのブロードバンドアクセスラインが引き込まれることになる。
家庭へのブロードバンド回線の普及、低価格化で先行している日本だが、本格的なブロードバンド環境へのトランジションは、まだまだこれからなのかもしれない。
[本田雅一, ITmedia]
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