News | 2003年2月28日 10:03 PM 更新 |
雑誌の付録で作り上げていくあのロボット、ただのオモチャじゃなさそうだ。
デアゴスティーニ・ジャパンが2月28日に行った「週刊リアルロボット」の説明会では、雑誌の付録で組み立てる小型知能ロボット「サイボット(Cybot)」の詳細が語られた。
同社が3月4日に創刊する「週刊リアルロボット」は、ロボットの最新動向や技術を豊富な写真と図版で紹介した雑誌に、毎号ロボットのパーツが“付録”としてついてくる。いや、付録としているこのパーツこそが、この雑誌の主役なのだ。
付録のパーツを組み立てていくことで、だんだんロボットが完成していく。これが秋葉原に売っているならまだしも、近所の書店で手に入るというのだからすごい。
同社が対象としている年齢は、小学校高学年から中学生。もちろん、“大きなお友達”が購入したってかまわない。誰にでも簡単に作れて、しかも完成までドライバー1本だけで作業できることがこのロボットの売りだ。知能ロボットをうたうだけあって、作り進めていくとロボットに電子回路を組み込む必要もあるのだが、その際にもハンダ付けはいらないのだという。
まず、創刊号にはボディのベースとなるシャーシとタイヤ関係のパーツが同梱されている。とりあえずこれだけでも手で押せば動く(!)のだが、知能ロボットとしての進化の過程は次の通りだ。
サイボットは第4号で、電源によって(一応)走るようになる。その後は第6号で外装パーツがそろい始め、それ以降の号で各種センサーなど制御系のパーツが続き、7月1日に発行予定の第17号でようやくサイボットの基本モデルが完成する。
だが、このロボットの進化はここで終わらない。全60号が予定されているこの雑誌では、最終完成形まで1年以上もかかるのだ。
「第18−22号でサイボットをリモコン操作できるハンドセットが完成する。また、第34号までいくとF1カーを模した赤いモデル“Team サイボット”となり、41号までたどり着くとロボットの操作をPCで自由にプログラミングできるようになる」(同社)。
さらに第42−52号では、サイボットが音声認識できるようになる。最終的には、サイボット同士でコミュニケーションを取ったり、ボールを認識してサッカーしたりするようになるというから驚きだ。「音声認識では、14語が認識できるようになる。現在、日本語を認識できるシステムを開発中。全国から50人(大人25人、子供25人)のモニターを募り、声をサンプリングしている」(同社)。
サイボットの生みの親は、あの“サイボーグ教授”
実はこのサイボット、人工頭脳やロボット研究で有名な“サイボーグ教授”ことKevin Warwick氏が率いる、リーディング大学サイバネティクス研究チームが開発したものなのだ。「毎週発刊される雑誌付録のパーツを1つ1つ組み立てて、ロボットの知識を高めながら完成を目指すという“分冊百科”のスタイルにWarwick教授にも賛同してもらった」(同社)。
Warwick氏がなぜ“サイボーグ教授”と呼ばれているかは、彼の左腕をみれば分かる。なんとそこには無線ICタグ機能を持ったシリコンチップが埋め込まれているのだ。さらに2002年には、脳の神経系と交信できるチップを手首に埋め込み、脳から左腕に送られる信号をモニタリングする実験も行われた。その詳細は別記事で語られている通りだ。
今回の週刊リアルロボットの説明会にはこのWarwick氏も駆けつけた。同氏によると、サイボーグ研究とサイボットとは共通する点が多いのだという。
昨年、Warwick氏が行った脳神経系との交信実験では、サイボットに使われている超音波センサーと同じものを手首に取り付けたり、ロボットハンドを手首のチップ経由で操作するといった実験も行われた。
「超音波センサーの場合、目隠しをしていても周囲に何かがあるような感覚を指先に感じた。埋め込んだチップからロボットハンドを操作した時は、どのようなモノを持っていて、どのくらいの力を入れているかが指先で感じ取れた」(Warwick氏)。
つまり、センサーの機械的な信号や人間とロボットのマスター・スレーブな操作感が、生身の肉体で直接感じ取ることができたというのだ。
「機械をただ見ているだけでそれを理解するのは難しいが、実際に体験してみるとわかりやすい。雑誌を見ながら誰でもロボットを組み立てることができるサイボットはそれに適している」(Warwick氏)。
ちなみに、創刊号は特別価格で650円だが、第2号以降は1190円。サイボットの最終完成形(第60号)にたどり着くための購読料は7万860円に及ぶ。うーむ……。
[西坂真人, ITmedia]
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