News:アンカーデスク 2003年3月6日 05:58 PM 更新

っぽいかもしれない
「インタラクション2003」、実はわたしも出かけていたのだった(1/4)

“サイボーグ教授”が招待講演に登場と、のっけから刺激的だった「インタラクション2003」。発表内容もそれに負けず劣らず、面白かった。まずは1日目から気になったものを紹介しよう

 2月27、28日に学術総合センター(東京)で「インタラクション2003」が開催された。「インタラクション」を人と人、人と道具、人と情報の「ふれあい」として捉えるこのシンポジウムは、いろいろなジャンルの研究者が登場する、とても刺激的なものだ。

 Kevin Warwick氏による招待講演の様子はすでに紹介されたけど、ここでは、発表されたものの中からいくつかを紹介しよう。といっても、発表総数は92点。とてもすべては紹介しきれないし、わたしはその能力もない。例によって偏った紹介をすることになる。今日は1日目のものから。

SmartMusicKIOSK

 まず、一番気持ちよかったものだ。産業技術総合研究所の後藤真孝氏による「SmartMusicKIOSK」。今回のベストペーパー賞を受賞した作品でもある。気合を入れて紹介しよう。

 CDショップの店頭に置かれているような、試聴用のCDプレーヤー。あれに、新しいボタンが追加されたと思ってほしい。それが「サビだしボタン」。曲の途中で(始まったらすぐでもOK)、そのボタンを押すと、すぐに1番のサビの部分の再生が始まる。もう1回押すと2番のサビ、もう1回押すと3番のサビ(このあたりで大サビになるかな)っていう具合。

 基本はこれだけ。これだけなんだけど、これがものすごく快感。「試聴」っていう気持ちになると、1曲飛ばしボタンとサビだしボタンしか押さなくなっちゃうくらい。

 どこがサビかという判断は、CDに入っている音楽データをもとにしてコンピュータ(タブレットPCが使われていた)が自動的に行う。さすがに万能というわけにはいかないけど、ポピュラー音楽の80%は正解するそうだ。これは、すごい。

 まず、音楽を「繰り返し」に着目して分析する。1番2番っていう大きな繰り返しもあるし、いわゆるAパートBパートみたいな1コーラスの中での繰り返しもある。曲によってはさらに細かい繰り返しもあるだろう。

 繰り返しを探すためには、どこが「同じ」メロディかを探さなきゃいけないわけだけど、これがむずかしい。メロディは一緒だって、歌詞は違うし、伴奏も違うかもしれない。コンピュータにこういうのを「同じ」と判断させるのはとても大変なのだ。

 そこで、ドレミファソラシに半音を加えた12の音のそれぞれについて(*1)、オクターブが違っても同じものだとみなすということをする(*2)。これで、倍音の影響や伴奏の変化にも対応できるというわけ。また、1音ずつシフトしながらチェックすれば、転調してもついていけるようになる。

 こんなふうにして(*3)、繰り返しを検出したのがこれ。


 なんとなく分かると思うけど、ひとつの列がひとつの繰り返しを示している。後はこの中からどれがサビかを探し出せばいい。このために、「サビ」の次のような特徴を利用する。

  • サビの長さはだいたい7.7−40秒くらい。

  • 長い繰り返し(1番、2番にあたる)の最後のほうに来る繰り返しはサビである可能性が高い。

  • ある繰り返し区間がさらに2つの繰り返しに分かれるとき、その元区間はサビである可能性が高い。

 そして、こうなるわけだ。赤いのがサビ。


 ここまで計算するのに、4分の曲で1分程度。でも、ほとんどの時間は転調チェックのために12回シフトしているせいで、これがなければ、20分の1程度の処理時間で済むのだそうだ。いずれにしても、これはあらかじめ計算しておくということになる。


 ユーザーインタフェースはこのような感じになる。下半分が操作部(*4)。右上の赤いのが「サビ出しボタン」で、そのとなりにあるのはサビを含めた繰り返し区間の頭を出すボタンだ。これを1度押すたびに、曲の先頭に近い区間から順番に再生してくれる。


*1 音の名だからドレミファソラシじゃなくてCDEFGABっていったほうがより正確だ(後藤さんの論文はちゃんとそうなってる)。ここではわかりやすさのためにドレミにした(固定ドだと思って)。
*2 「12次元クロマベクトル」と呼ばれていた。
*3 このあとも、細かい処理はあるのだけど省略。
*4 デモでは、上のグラフの繰り返し部分を表わす四角をクリックすると、直接そこが呼び出せるという仕掛も入っていた。でも、これはタブレットPCだからできる技で、店頭マシンでそこまでするのはちょっと無理かも。

[こばやしゆたか, ITmedia]

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