News 2003年3月6日 04:13 PM 更新

インタラクション2003
音楽の“サビ”だけ抜き出す試聴システム(2/2)


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 さらに問題なのは、CMやDJなどで曲が紹介されている場合、大半がサビの長さ8.4秒だけということが多いのだが、「先頭がサビの曲(サビ頭)を除けば、機械的に先頭から切り出した45秒のうちにサビがある曲はたいへん少ない」のだそうだ。

 ちなみに、サビの長さの平均8.4秒というのは、実際に32曲を分析した研究成果である。8.4秒というのは、CM(15秒)でサビを繰り返し利用するための長さに、絶妙にマッチしている。

 サビが重視されていて「サビ頭」という言葉さえあるにもかかわらず、実際には、日本の2001年1年間のポピュラー音楽約370曲を調査すると、サビ頭の曲は約20%しかないという。この調査のために、後藤氏は、370曲ぜんぶを聴き通したという。


SmartMusicKIOSK開発者で、科学技術振興事業団さきがけ研究21/産業技術総合研究所の後藤真孝氏

 最近の研究者には、「やってみる」ことによって新しい世界を構築する「ど迫力の異能者」が少なくないが、370曲を聴き通したという話を聴いていて、「この人もヘンだ」と思った。ヘンで突き抜けていないと、見えない世界は絶対にある。いや、ヘンで突き抜けていてこそ見える世界がある、といったほうがよいだろうか。

次の曲、次のサビ

 実装されたSmartMusicKIOSKは、CD店の店頭に置かれることを想定して、ハードウェアボタンに実装してデモしていた。これが使ってみると非常に快適。「NEXT TRACK(次の曲)」ボタンで次々と曲をジャンプし、「NEXT CHORUS(次のサビ)」ボタンで次々とサビを聴いていく、という聴き方をしていると、永遠にサビだけ聴き続けるという、アドレナリン出まくり状態の試聴体験を可能にする。

 音楽CDの登場で、われわれは、音楽をジャンプして聴く、あるいはランダムアクセスして聴くという聴き方をしてきたわけだが、SmartMusicKIOSKの登場によって、曲の内部さえも構造化して、自由にランダムアクセスして聴く自由を手に入れたのである。


会場に持ち込まれて実演されたSmartMusicKIOSK。タブレットとペンでもよいが、右側にあるハードウェアボタンを使うと、もっと快適。次の曲ボタンと、次のサビボタンを、何かに憑かれたように次々と通し続ける自分に気づいてしまった


動作しているSmartMusicKIOSK。従来のCDプレーヤー同様の動作が可能だが、「次のトラック」ボタンのほかに、「次のサビ」ボタンが用意されている

サビを抜き出す

 SmartMusicKIOSKのサビ抜き出しの考え方は、大変奇抜なものであるが、説明されるとなるほどと納得できる。ちょうど、コロンブスの卵的なところがある。

 具体的にはどのようにして、サビを抜き出すのか。

 すぐに思いつくアイデアは、音が大きくなったところがサビだというものだ。だが、当然ながらこれはうまくいかない。必ずしもサビだから音が大きくなる、というわけではないのだ。ほかに、サビの特徴には、最高音が含まれる、サビ内の音の幅は1オクターブ以内などといった特徴も見られるが、決定的なものではない。

 後藤氏が手がかりとしたアイデアは「サビは楽曲中で最も多く繰り返される」ということであった。確かにサビは繰り返しに耐えるメロディであるからこそ、サビとなるわけである。


サビの検出は、繰り返し区間を自動検出することで行った

 さらに後藤氏によれば、転調は総当たりで同じ繰り返しかどうか確認することで、十分同じサビとして認識できるそうだ。


サビを繰り返しから検出するSmartMusicKIOSK。プレゼンテーションは繰り返し繰り返し強調されて、真っ赤になっている

1曲1分で自動解析

 SmartMusicKIOSKを実現できたもう1つの関門が、サビの自動検出である。じつは、音楽CDには内径50ミリまでのあいだに、TOC(Table of Contents)という目次情報を記載する領域があり、CD-TEXTでは、ここに文字や情報を記録できる。ここにサビ情報を記録し、それを再生すれば、サビ・ジャンプはこれまでも不可能ではなかったのだ。

 だが、この作業は手作業で行うか、あるいは、あらかじめアーティストまたはCD制作会社が情報として入れておく必要があり、現実的ではない。SmartMusicKIOSKは、自動で、しかも1曲を1分程度で解析できるという。転調の抜き出しをしない場合には、もっと短くすることもできる。このお手軽さを合わせてみると、SmartMusicKIOSKは十分普及に値する研究であることは、間違いない。

不埒な音楽教育ツールを広めよう!

 この「不埒な」試聴方式は、音楽を鑑賞するという態度からは極北にあるように思えるが、実際には、このような聴き方ができることで、きわめて分析的に楽曲構造を深く聴き込むのにも適した使い方ができる、ということも分かったという。例えば、サビに四季を織り込んだ楽曲の歌詞比較、転調比較、楽器構成の比較などに有効だったというのだ。

 確かに曲について知るためには、曲を構造的に分解できることは最重要なのであって、SmartMusicKIOSKは、きわめて強力な音楽教育ツールとしても使えるだろう。

 さて、このSmartMusicKIOSKだが、当面ユーザーに一番近いところで実現していくためには、(あえて名指しすれば)タワーレコードや第一興商あたりに頑張ってもらうのがよさそうだ。あるいはCCCDで、独自プレイヤーまで内蔵しているエイベックス、Windows MediaPlayerのマイクロソフトというあたりか。ソニーのプレーヤーとかには、冬ごろにはついていたりして……。

関連リンク
▼ SmartMusicKIOSK

[美崎薫, ITmedia]

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