News:アンカーデスク | 2003年3月14日 00:04 AM 更新 |
ニューコアテクノロジーという会社をご存じだろうか。
デジタルカメラやデジタルビデオカメラの映像処理プロセッサに特化した半導体企業であり、昨年5月には、Crusoeを日本企業に売り込んだことで知られた元Transmeta副社長だったJim Chapman氏がCEOに就任で話題を呼んだ。
そのニューコアテクノロジーの日本法人社長に、今度は日本でCrusoeが躍進する影の立役者となっていた和田信氏が就任するという。Transmetaからは、他にもアプリケーション担当副社長だったRich Goss氏も移籍し、アプリケーション担当ディレクタ兼日本法人担当副社長として活動する。
ニューコアはデジカメ業界のインテルを目指す?
経営幹部の経歴から言うと、x86業界との接点が多そうに見えるニューコアテクノロジーだが、その事業内容はx86業界とは一切関係がない。
ニューコアテクノロジーは97年に、日本と米国で同時に立ち上げられた映像処理プロセッサの専業ベンダーだ。同社の開発した映像処理プロセッサは、単板イメージセンサーにおける色空間ノイズの問題をアナログ技術で解決し、高速のデジタル処理プロセッサ、統合化されたデジタルインタフェース、そしてそれをサポートするツールやドライバなどのセットを提供する。
ニューコアテクノロジーのチップを用いると、イメージセンサーからの信号をA/D変換する前に、アナログ信号のままRGB各色のゲインレベルを補正することができるため、レンズなどの色バランス補正やホワイトバランス調整によって、ブルー信号の量子化ノイズが激増するといった現象を防ぐことができる(Chapman氏のインタビュー参照)。
結果、ニューコアテクノロジーのチップで生成したJPEGファイルは、他チップを利用したものよりもクリアなものとなり、(同一品質で圧縮した場合)ファイルサイズが約半分になる。
機会があればニューコアテクノロジーの映像処理プロセッサが、なぜ優れた画質を生成できるのか、そのからくりを紹介したいと思うが、今回は同社の企業ポリシーに着目してみた。
映像処理プロセッサは、いわばデジタルカメラのエンジンのようなもの。たとえばキヤノンは映像処理プロセッサを、「DIGIC」の名でブランド戦略を展開しており、製品を差別化する上での重要な要素となっている。デジタルカメラのレスポンスや撮影スループット、オートフォーカス、RAWデータからのイメージ生成など、良いデジタルカメラとなるために高い品質と性能が要求される部分を丸々抱えたコンポーネントだ。
ニューコアテクノロジーは、この映像処理プロセッサの分野で独自の技術を開発し、高品質、高性能なビルディングブロックを提供する半導体企業である。デジタルカメラベンダーは、光学設計とレンズ、イメージセンサといった主要コンポーネントを調達し、ニューコアテクノロジーのチップを組み込むことで、短期間で高品質のデジタルカメラ(デジタルビデオカメラ)を開発することができる。
ニューコアテクノロジーは、チップだけでなく、デジタルカメラを構築するためのOSやソフトウェア、ツールキットなども提供している。現在の映像処理プロセッサは、単なる信号処理だけでなく、デジタルカメラ全体を構成する中核チップセットになっており、その機能は膨大だ。
さまざまな周辺機能、インタフェースなどを統合した高機能な映像処理プロセッサを開発するためには、30億円以上の費用がかかると言われている。その開発を、各カメラベンダーが個々に行うのではなく、ビルディングブロックとして提供することが、ニューコアテクノロジーのビジネスだ。
こう聞くと「なんだ、外資系のデジカメチップベンダーが、インテルと同じような戦略でデジカメ業界の巨人を目指しているのか」と思う人もいるだろう。しかし、彼らはデジタルカメラ業界におけるインテルになろうとしているのではない。そして、外資系のチップベンダーでもないのだ。
[本田雅一, ITmedia]
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