News:アンカーデスク 2003年3月20日 00:04 AM 更新

オーバークロックマーケティングはどこまで許容されるか(2/2)


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 実際にオーバークロックマニアが動作報告を行うサイトなどを見ても、Pentium 4のFSB 800MHzオーバーでの動作報告は非常に少ない。同じオーバークロックでも、「Celeron 300Aが450MHzで動く」といったレベルでの話ではないのだ。

 前提となる話が長くなったが、今回の問題は、現時点では実質的にほとんど動かせない条件での動作を、セールストークとして前面に打ち出している点にある。

 もちろん、実際の製品で特徴としてうたうには、無保証といえど、マザーボードメーカーでの検証は十分に行われているはずだ。実情を言えば、“条件さえ揃えば”問題なく動作するだろう。

 しかし、「動くように設計はしています。ただし、動かせる環境はほとんどありません」という状況は、一休さんの「屏風の虎」のようなものだ。こんな状況で製品を発売されても、それを販売するショップでは困ってしまう。店員の苦笑が、こうした事情を如実に表している。

新型Pentium 4を見据えて、と思われるが……

 では、なぜこんな製品が出てきたのか? 

 それはおそらく、近々登場すると噂される、FSB 800MHz+Hyper-Therading対応の新型Pentium 4での動作が、無保証ながら可能であることを示唆していると思われる。従来製品では不可能だったCPUのアップグレードパスが開かれている、ということになるのだろう。

 しかし、新型Pentium 4は、ほぼ同時に登場すると見られる新型チップセット、コードネーム“CanterWood”や同“Springdale”シリーズと組み合わされるものと言われている。

 Springdaleはリリースが既報の通り向こう数カ月というレベルで間近に迫っている。CeBit 2003では主要マザーボードメーカーが、一斉に展示や動作デモを行ったほどだ。

 そして重要のは、新Pentium 4+CanterWood(Springdale)では、保証付きの状態でFSB 800MHzが実現できることだ。

 マザーボード側がうたう動作環境を揃えるにはあと数カ月待たなければならず、揃えても基本的には無保証。しかも待った時点では、ほぼ同時に保証付きで動作できるマザーボードが登場する――こんなタイミングで投入される製品を売るには、どうすればいいのだろうか?

 とあるショップでは「年度末対策製品、ということでしょうかねぇ」と冗談めかして話してくれたが、ちょっと笑えない話だ。

 もっとも、Intel 845PE/GEマザーの名誉のために付け加えれば、売り方はともかく、製品としての完成度はどのマザーも一様に高い。さすがに、いわゆる“i845の最終製品”にあたるだけのことはある。特にCPUに対する電源回路などは、第1世代製品に対しても正統的な進化を遂げているものが多い。

 しかしそれだけに、やはり販売レベルの問題が気になってしまうのだ。

 趣味として個人的なレベルで楽しむオーバークロックは非常に楽しく、そして便利なものではある。また、オーバークロックを得意とする製品は、パワーユーザーにアピールするため、建前はどうあれ、ショップでは売れる。

 ここまでの話はこれまでに行われてきたことであり、少なくとも個人的には、現在では問題とは思わない。また個人的にも、オーバークロック機能が充実した製品を選ぶだろう。製品でオーバークロック性能を競うのは大歓迎だ。

 しかし、それがマーケティングにまで及び、販売するパーツショップや、ユーザーが混乱してしまうような状況になってしまうのは、どうあっても好ましい状態ではないのではないだろうか?

[橋本新義, ITmedia]

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