News:アンカーデスク 2003年3月31日 06:48 PM 更新

インターネットはジャーナリズムを変えるか(2/2)


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 もちろんこれは社会問題を語る上での共通認識を築く、という意味において必要である。そしてまたこれが、古き良きテレビの黄金時代を築いた原動力でもある。

 しかしこういった方向性が過剰に協調されるあまり、真実のすり替えが行なわれるという危険性から目をそらしているのではないか。さんざんイラク戦争の解説をしたあげく、電話で一般視聴者に、

 Q. あなたが一番嫌いなのはだれ?
  1. ブッシュ 2. フセイン 3. 小泉

みたいなアンケートやってたんじゃ、答えにもならないし、わけがわからない。あまりにも結論をまとめすぎてしまうからである。まあこれはちとこれは極端な例だが、テレビというメディアの体質には、そういう側面がある。

メディアを疑え

 ニュースの原点は、現場を見た人が見に行けなかった人に伝えるということである。これが次第に、見に行けない人の代わりに行って見てくる、という「野次馬のプロ」みたいなのが商売となった。しかしそれがおもしろおかしくはあるんだけど、あんまりウソばっかじゃ困るんで、ちゃんとしたモラルを持ってやりましょう、というところがジャーナリズムのスタートラインであったろう。

 インターネットの世界は、既にマスメディアと言えるほどの影響力を持つようになった。しかしこれを報道という見方をすると、従来のマスメディアのあり方とは全く違うものである。どこか人を集めるサイトなりBBSがあれば、そこに掲載されたリンクによって、われわれは簡単にソースにたどり着くことができる。1つの例はZDNetでも話題になった「Where is Raed?」だろう。

 ここでポイントなのは、その「人を集めるサイトやBBS」でどのような解釈がされようと、視聴者がもとになったソースに触れることができるという点なのである。そういった情報伝達スタイルによって、われわれはそのたどり着いたソースを自分の解釈で判断していくことができる。

 これは旧マスメディアによって、自分で考える猶予を与えられてこなかった人間にとっては苦痛かもしれないし、誰かまとめてくれ、という意見が出るのもわからないではない。しかし本来物事を把握するということは、現場を見て、自分で考える、とことだったはずなのである。

 そうやって考えていく中に、自分なりの真実を見つけていけばいいのではないだろうか。

 ではこれによってマスなジャーナリズムの何かが変わるかといえば、たぶん変わらないだろう。それはそれで必要な人がいるからだ。むしろ変わっていくのは、ジャーナリズムを受け止めるわれわれのほうなのである。

 まずこのコラムによって、あなたはマスメディアを疑って見るようになることだろう。もしZDNetをあなたがマスメディアだと思えば、このコラム自身も疑って見るべきだ(だいたい「オレを信じろ」というのにロクなやつはいない)。

 これは、すべてのマスなものに対していちいち反体制を気取るスカした野郎になれということとは違う。マスも含めたすべての情報の中から、真実を自分で嗅ぎ分けていこうということなのである。

 借り物ではない結論は、一見稚拙なようでもちゃんと価値があるものだ。

小寺信良氏は映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。



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