News 2003年4月1日 11:43 PM 更新

記録型DVDのトレンドは“±両対応のデュアルドライブ”

日立LGデータストレージが、DVD-R/RW/RAM&DVD+R/RWに対応した「GSA-4040B」を発表。DVD-RAMを含めた“全部入り”にするかどうかは別としても、今後±両対応のデュアルドライブが増加していく可能性は高い

 日立LGデータストレージ(以下、日立LG)が、DVD-R/RW/RAMおよびDVD+R/RWのすべての規格に対応した“全部入りドライブ”「GSA-4040B」を本日発表した。記録型DVDのOEMベンダーでは、現在DVD±R/RWのデュアル化が1つのトレンドになりつつあるといわれている。DVD-RAMを含めた全部入りにするかどうかは別としても、今後±両対応のデュアルドライブが増加していく可能性は高い。


日立LGデータストレージが、DVD-R/RW/RAM&DVD+R/RWに対応した“全部入りドライブ”

 「GSA-4040B」は、DVD-R/+Rが4倍速、DVD-RWが2倍速、DVD+RWが2.4倍速、DVD-RAMが3倍速で記録でき、1層DVD-ROMの読み出しが最大12倍速、2層DVD-ROMとDVD±R/RWの読み出しが最大10倍速というスペックの製品。すでにCeBITにおいて「GMA-4040B」という型番で発表されていたモデルだが、国内発表では、製品型番が「GSA-4040B」へと変更されている。

世界初の3倍速記録対応DVD-RAMドライブ

 この製品は、世界初の全部入りドライブという点が最大のポイントだが、実は“世界初の3倍速記録対応DVD-RAMドライブ”という側面も持つ。DVD-RAMの3倍速規格は、昨年夏ごろにすでに規格化を終えていたが、なぜか対応ドライブが登場していなかった。この製品の登場により、今後は、DVD-RAMも3倍速へと高速化された製品が主流になるだろう。

 事実、松下電器産業の発売している「LF-D521JD」も、レーザーピックアップやLSIなどのキーパーツは、当初より、DVD-R4倍速、DVD-RW2倍速、DVD-RAM3倍速に対応できるものが採用されているというのは有名な話だ。同社は、すでに次期製品を開発中と噂されており、それが夏のボーナス商戦に投入されても不思議ではない。

 ただし、DVD-RAMにおいて3倍速記録を行うためには、今後発売される3倍速対応メディアが必要になる。現在、メディアメーカーもドライブの発売に合わせ3倍速対応メディアを準備しており、おそらく、ドライブの出荷が始まる頃にはメディアも発売されるはずだ。

 また、3倍速対応DVD-RAMメディアは、従来の2倍速記録もサポートする。ただし、従来の2倍速用のDVD-RAMメディアは、3倍速記録に対応していないので注意が必要だ。DVD-RWやDVD+RWなどでもそうだが、書き換え型メディアでは、記録速度を高速化すると記録時の熱が隣接トラックに干渉し、すでに記録済みのデータをオーバライトしてしまう可能性が出てくる。従来の2倍速メディアに対して3倍速でも記録できないことはないだろうが、無理に記録するとこういった現象によってデータのオーバーライトや消去などの危険性があるだけでなく、最悪、記録層を破壊し、記録補償回数の劣化を招きかねない。このような理由から、書き換え型メディアでは、高速化に伴って、そういった対策を施された高速記録対応メディアが登場するのが昨今の慣例となっている。

キーパーツを自社開発してコストダウン

 GSA-4040Bのような±両対応のデュアルドライブは、技術的に難しく価格が抑えづらいという話も聞く。機能を考えれば決して高くはないのだが、シングル規格ドライブのような価格帯の販売は現状では厳しいだろう。現在のDVD±R/RWドライブぐらい(実売で3万円前後)で販売される可能性が高い。

 これには、まず1つにライセンス料の問題がある。例えば、DVDフォーラムのライセンス料は、「6ドル」か「販売価格の4%」のいずれか一方の高い方となっている。DVD+RWアライアンスもほぼ同等といわれており、デュアルドライブを製造するだけで最低でも「12ドル」のライセンス料が必要となる。これだけで最低でもドライブ価格が約700円高くなるのだ。

 GSA-4040Bは自社開発のLSIやピックアップを採用することで、少しでもコストダウンを図ろうとしている。もちろん、50万台/月という生産規模からも、自社開発の部品を大量生産でコストダウンし、全体で利益が出るようにドライブを製造するという思惑が見え隠れする。

 ちなみに、同様な体制をとっているメーカーにNECがある。同社でもLSIやピックアップなどのキーパーツを自社開発し、やはり大量生産でコストダウンを図っている。もちろん、これは、高価なライセンス料を支払っても価格競争力がある製品を開発するためということはいうまでもない。

 ただし、GSA-4040Bのような全部入りドライブが、すべての機能を搭載したままPCに組み込まれるかというとこれは何ともいえない。少なくとも国内では、DVD+RWレコーダは販売されておらず、DVDフォーラムの製品が圧倒的に主流だからだ。

 特に国内PCメーカーでは、販売価格が高くなる割にメリットが少ない全部入りドライブの搭載を嫌うことが多い。例えば、ソニーのノートPCの一部機種で採用されている松下電器産業製DVD-Multi対応ポータブルドライブは、DVD-RAMをサポートしないカスタム仕様だ。OEMメーカーでは、こういったことがごく一般的に行われている。

 この点は日立LGでも同様だ。筆者は、DVD-Multi、DVD±R/RWの2パターンの製品が登場し、PCではDVD+RW/Rのシングル規格バージョンも出現するのではないかと予想している。

±デュアルドライブがトレンドへ!?

 GSA-4040Bは、「いつかは出ると思っていたものが遂にカタチになった」という製品だ。DVDフォーラムとDVD+RWアライアンスの記録型DVDにおけるデファクトスタンダードの争いが、国内と海外で異なった状況にあるというのは、多くのメディアでも取り上げられている。今回の製品は、そういう意味でデファクトスタンダードを決める争いが混迷を極めていることを象徴する1つでもあるだろう。

 日立LGのようなOEM専業メーカーは、もちろん、需要があるからドライブを開発・製造する。DVDフォーラムやDVD+RWアライアンス陣営だからといった“しがらみ”よりも、最終的には「売れる」かどうかが最も大きな問題となる。そういう視点から考えると、デファクトスタンダードが見えないためにGSA-4040Bのような±デュアルドライブの需要が大きくなっているようだ。

 実際、GSA-4040Bの月産台数は、「50万台」が予定されている。OEM専業であるため、出荷されるすべてのドライブが全部入りであるという保証はないが、これだけの規模の需要があるということだけは間違いない。ソニーの販売しているDVD±R/RWドライブ「DRU-500」シリーズも、北米のリテール市場で内蔵/外付けともにランキングの上位を独占しており、NECでもデュアルドライブを準備している。±両対応のデュアルドライブ人気は、急上昇中なのだ。

 そういう意味では、やはりOEM主体にドライブの製造を行っている他のメーカー、例えば、松下電器産業や東芝などが全部入りドライブやデュアルドライブを製造しても不思議ではない状況になっている。OEM専業メーカーは、基本的に要望があるから作るという姿勢があり、しがらみを別としても、そのぐらい需要がどれだけあるかという点が重要なのだ。

 GSA-4040Bを見ていると、あるメーカーの技術者が「こうなってくるとすべての規格をサポートしなければならない。メーカーがユーザーに対して“つけ”を払うことになるんですよ」と囁いていたことが思い出される。

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[北川達也, ITmedia]

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