News | 2003年4月9日 06:14 PM 更新 |
田所:野波先生はそれについてはどのようにお考えですか。地雷除去ロボットにしても、いまは日本政府がお金を出して作っているからいいにしても、使えるものになったときには、普及しなければ意味がない。発展途上国各国に買ってもらうのか、ODAとして渡すのかはわからないんですが。
野波:これまで、日本の姿というのは、ほとんど国際的には評価されていません。経済的には、アメリカに次いで第2位のODA供出国でして(*3)、その意味では、ある種の尊敬はあるんですが、技術的な貢献がほとんどないということです。
日本は、技術先進国だロボット王国だとか言っているわりには、世界で席捲しているのは「ビジネス」でして、世界どこに行っても、家電製品は日本製であふれていますし、車もかなりのところでそうです。
でも、実際に求められているのは、「技術」なんですね。私も、アフガニスタンとかイランとかカンボジアとか、アンゴラ、モザンビークとか実際、視察に行きましたけど、そうです。お金だけあっても、地雷除去はできない。
日本が出しているODAはだいたい1兆円弱あるわけですね(*4)。もちろん、それは学校や病院を建てたりにも使われているんですが、地雷除去にもその何割かが使われています。
ところが、発展途上国側では、そのお金をどう使っていいのかわからないために、結局、不正の温床になってしまっていて、民主主義が育たないということもあると聞いています。お金が途中で止まってしまって、不正に使われてしまう。しかし、国連に供出した以上、それをチェックのしようがない。非常に残念ながら、そういう現実があるわけです。
従いまして、本当に見識のある貢献をするためには、無償の技術援助をする必要がある。そうすることで、世界における日本の地位も高まり、ひいては世界貢献平和貢献できるということがあると思います。
ロボットは確かに高いです。アフガニスタンの場合ですと、1カ月の給料が1000円とか1200円とかそういうレベルです。そこに、1台1000万円のロボットを持っていくということは、もうどう考えてもおかしい話になってしまうんです。
1000万円あれば1000人の雇用ができるということになってしまいます(*5)。彼らはそれで職を得られますが、でもそれはやはり人がやるべき仕事ではない。「ひとつまちがえると命を落とす、でも、生活のためにあえてそれをやる」という悪循環になります。
これを断ち切るためには、技術貢献が必要でしょう。「経済支援よりは技術貢献」という形が、21世紀の日本のひとつの進み方だと思います。
田所:なるほど。日本でうまく普及するものは「商売」になるものしかないんだ、というのは同感です。逆にそれを裏返すと、人道支援ができるロボットを商売野舞台に乗っけていくことが必要なんじゃないかと、私などは思います。
家庭内で使えるあるいは使えそうな、もう少しで売るところまでいきそうなロボットがいくつもでていることが、今年のROBODEXの特徴だと思うのですが、そういったロボットに、なにかレスキューできるとかいった機能を内蔵させるということが必要になるんじゃないか。
地雷探査専用につくってしまうととても高いものになってしまうけど、家庭用ロボットの延長線上で作れるようにすれば、1台が10万円とか、5万円とかで作れるものになる……。これは、まだまだ研究開発が必要な遠い話なのかもしれないですけど、そのようなことを感じました。
フォーラムの最後は、一言ずつのメッセージ。
磯崎:私どもは、なんとかして商品化して、いろんなレスキューに関するロボットを投入していきたいと思いますので、お願いします、使ってみてください。そうすれば、使っていただいた上にもっと進化していくという道筋をたどれると思います。よろしくおねがいします。
野波:まだ完成していなくとも、先端の、メカトロニクスのようなロボットを求めている分野がたくさんあるというのが、現実ですね。
先程のお金の話は、私はまた違った考えがありまして、仮に1000万円かかるとしても、それで100年かかるところが1年ですむのだったら、それは先行投資だと思っています。そうやって、早く復興することで、1000万円には代えがたいような成長ができるかもしれない。かつての日本がそうだったわけですね。
ですから、近視眼的なコストの問題を考えるよりは、もっとグローバルに考えるべきだと思います。
田所:われわれは、レスキューとか地雷除去とか、人の役に立つロボットを作っています。今、「ロボットはエンターテインメイントでおもしろい」という風潮があります。でも、それだけではなくて、われわれがやっている活動に関しても、ぜひとも皆さんのご支援をいただきたいとお願いします。
[こばやしゆたか, ITmedia]
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.