News:アンカーデスク | 2003年4月14日 09:50 PM 更新 |
この数年、買うべきか、それとも買わざるべきか。悩み続けているモノが1つある。液晶ディスプレイだ。今更、何を言ってるんだって? そりゃそうだ。今時じゃ液晶ディスプレイよりもCRTの方がはるかに少数派。迷うべきことじゃないはずだ。
しかし長い間、ハイエンドのCRTディスプレイを使い続けてきたユーザーにとって、液晶ディスプレイへの移行は、かなり大きな冒険である。CRTで使っていた高解像度を使うためには、多額の投資が必要だからだろうって? いや、金額ももちろんある程度は問題だ。しかし、本当の問題は別のところにある。
アフターマーケットの液晶ディスプレイを選ぶなら
今やメーカー製のデスクトップPCからCRTは消え去ってしまった。それどころか、ホワイトボックスのPCでさえ、ディスプレイが組み合わされる場合は液晶ディスプレイがほとんど。そんな昨今、CRTを捨てるか否かを悩んでいると話しても、“全くの論外”と言われるのがオチだ。
しかし、この業界でトレンドを追いかけている人間の端くれとして、今までに液晶ディスプレイを評価してこなかったわけではない。事実、わが家の僕以外が使うPCは、比較的早い時期から液晶ディスプレイを導入していたし、それ以前にはキヤノンの強誘電型液晶ディスプレイを使っていたこともある。その後も高品質な液晶ディスプレイのニュースには耳を傾けてきたつもりだ。
しかし、CRTは古くさいフォームファクタではあるが、液晶ディスプレイにはない長所もある。
まず、一般にコンピュータ上で扱う画像ファイルの色空間は、ディスプレイを意識した設定になっているため、写真撮影が趣味の1つである僕にとって都合が良い。最近はsRGBをエミュレートする機能を持った液晶ディスプレイもあるが、元々、CRTの蛍光体と液晶パネルのカラーフィルタでは色座標が異なる。見慣れたCRTからの乗り換えで、どこまで満足できるか?
次に中間調の明るさや、シャドウからハイライトにかけてのリニアリティがCRTと液晶パネルでは、大きく異なるように感じることが挙げられる。さらにシャッターの隙間から光が透過する液晶パネルの場合、光の回折現象により、中間明度の色が白色時よりも多少色温度が上がる(あるいは中間明度付近をニュートラルにすると、白色時の色温度が下がる)といった問題もある。
液晶ディスプレイを使うからには、DVI-Dによるデジタル接続を前提にしたいところだが、DVI-Dは1ピクセル24ビットで信号を送るため、ガンマ調整をPCのソフトウェア側では行えない(行うと階調が失われる)点も気になる。
液晶ディスプレイ側のガンマ調整機能を用いれば、この問題は回避できるが、果たしてどこまできちんとした処理を行っているのか。そもそも、中間調からシャドウにかけての表現力がどこまであるのか。すでに実績があるCRTならば、そんな問題を考える必要もない。
つまり、普通のビジネスユーザーや普通のホームユーザーにとっては、あまり重視されていないところが気になっているわけだ。もちろん、どんなユーザーであっても、品質の高いディスプレイを欲しいという要求はあるだろう。しかし、「きれいなディスプレイが欲しい」と、漠然としたニーズであることが多い。そして、単にきれいなディスプレイがいいというだけならば、現在のアフターマーケット向け液晶ディスプレイの多くは、その条件を満たしている。
しかし、今の今まで、CRTでなければ満足できなかったユーザーが、その置き換えとして使えるかどうか?と言えば、まだ自信を持てない。逆に、今使っているCRTと同等のユーザー体験(ここ数年、筆者はナナオのF980をキャリブレータで調整して使っている)が得られるのであれば、多少価格が高くとも投資する価値があると思う。
今ではディスプレイはPCとセットで付属するものという印象が強いが、性能的な陳腐化がPC本体よりも遅いディスプレイは、PC本体よりも投資しがいのあるデバイスである。もちろん、CRTの蛍光体や液晶ディスプレイのバックライトやカラーフィルタは、時間とともに劣化するものだが、きちんとパワーマネージメントを動作させて使っていれば、劣化の速度はそれほど速くない。またコストさえかければ、バックライトの交換も可能であろう。実際、これまでに使ってきたディスプレイは、僕が新しいディスプレイを導入した後も、友人の自宅で劣化もほとんどなく活躍しているものが多い。
アフターマーケット向けの製品を購入するのであれば、その後の買い換えサイクルが短くなるような選択をするのではなく、本当に良いと感じるものを選ぶ。それがディスプレイ買い換えのコツだと思う。しかし、問題はその思いに応えてくれるレベルに、現在の液晶ディスプレイが達しているかどうかだ。
低価格化が進む20インチクラスUXGAパネル採用モデル
さて、前置きが長くなったが、簡単に言えば、PCよりも長く使うものならばそれだけのコストをかけた方が良いが、コストをかけるならばCRTよりも劣る画質では納得できないということだ。
[本田雅一, ITmedia]
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