News | 2003年4月24日 11:31 PM 更新 |
Windows CE 4.2に追加されたのは主に通信とネットワーク系のモジュール。Bluetooth ver.1.1、IEEE 802.1x、IEEE 1394の追加や、VOIPのサポートが追加されている。Automotiveから CEに移ってきたモジュールとしては、音声認識の標準インタフェース「SAPI」、Transaction safe FAT、Thread Priority Tuningなどがある。
このうち、Transaction safe FATは、電源が瞬断してもストレージ書き込みの信頼性を向上させる技術。使う電源が安定しない車載システムでは必須である。Thread Priority Tuningは、OEMによるモジュールの改良作業を容易にするためのツールモジュールだ。これも開発工数の削減を目的としている。
Windows Automotive 4.2では、これまで車載OSの欠点とされてきた起動時間の短縮も図られている。マイクロソフトがベンダーに調査した「起動待ち時間の限界」は3−4秒。この時間を実現するために、マイクロソフトは「Snapsshot Boot」「イメージ分割ロード」という2つのガイドラインをベンダーに提示している。
Snapshot Bootは起動直後の状態をメモリに保存し、再起動時はメモリをロードしてすぐに「復帰」させるもの。ノートPCのハイバネーションとレジュームに相当する技術だ。イメージ分割ロードは、起動直後は最初に必要なアプリを優先して起動させ、そのほかのモジュールをバックグランドで起動させるもの。取り急ぎ使える状態になるまでの時間を短くできる工夫だ。
また、これ以外でも、松下電器産業によるG-BOOKの開発過程で行った起動時間短縮の取り組みが紹介された。
この場合、カーネルメモリのクリア処理中止やSRAMレジストリ採用による初期化時間の削減でカーネル起動を10秒から2秒に高速化。スキンの起動では、スキンファイルのバイナリ化によるロード時間の改善で40秒から3.2秒へ。起動シーケンスの見直しでは、CPU仕様時間をチェックし、空き時間が発生しないようにシーケンスを組み替えるなどの工夫で13秒から6.2秒とそれぞれ高速化している。その結果、前機種で1分程度かかっていた起動時間が約11秒まで短縮されていた。
マイクロソフトはWindows Automotiveで動作するアプリを動作環境と使い方によって、4つのタイプに分けている。タイプ1はローカルだけで動作するアプリで、ナビゲーションシステムや検索に使われる。タイプ2はローカルで動作してサーバーとデータ通信するもの。主にメールやリアルタイムメッセージなど、コミュニケーション系に使われる。タイプ3はサーバーからデータをダウンロードしたり、ポータルにアクセスしてポータルのアプリを動作させるもの。タイプ4はサーバーからアプリをダウンロードしてローカルで動作するものだ。
ジェネラルセッションでは、Windows Automotive 4.2プロトタイプ端末と携帯電話を使っている3人グループを想定した運用デモを行った。最初に、表示されるアイコンで3人の現在位置と状態(徒歩、運転中、車を駐車中など)を確認するタイプ1のアプリを動作。次いで、メンバーに同報メッセージを送信するタイプ2アプリ。地図検索ポータルにアクセスして、希望する条件を入力してレストランを検索して場所を表示させるタイプ3アプリを実行。ポータルからタイプ4の予約用XMLアプリをダウンロードして、ローカルから検索したレストランを予約する一連の機能を紹介した。
ただし、現在実現できているのはタイプ2のレベルまで。タイプ3やタイプ4がサポートされて、デモで紹介されたエリア地図の検索や、レストランの予約ができるようになるまで「あと数年はかかるだろう」(マイクロソフト)。実をいうと、デモで紹介された使い方は携帯電話ですでにできることばかり。ならば、携帯電話をもって車に乗り込めば事足りでしまうではないか? そうなるとWindows Automotiveの必然性はどこにあるのか。
その疑問に対するマイクロソフトの答えは「それはこれから考えていかなければならないこと」と、驚くほど素直なもの。「本格的に普及させるには、魅力的なコンテンツがなければならない」と、カンファレンスで討議されている「技術的解決策」だけでは足りないことを彼らも理解しているのだ。
それを示すのが、今回初めて参加したコンテンツ事業関係者の存在。マイクロソフトはコンテンツ事業者にもWindows Automotiveの情報を積極的に提供し、優良なコンテンツが数多く出現するのを期待している。
マイクロソフトは自分たちの役割を「車載端末用のOSと開発ツールを提供するまで。UIのデザインやコンテンツの提供は我々が乗り出して制約してはいけない」と考えている。それはそれで正しい姿勢と言えるが、しかし、コンセプトに「ネットワーク」を盛り込んだために、コンテンツの大量供給を促すための新たな活動を最優先で進めなくてはならないだろう。
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[長浜和也, ITmedia]
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