News 2003年4月24日 00:47 AM 更新

「シームレスな移行」で普及を狙うOpteronの64ビット戦略

大々的に行われたOpteron発表会で登場した社内社外のスピーカーたちが、口を揃えて賞賛する「32ビット資産を継承した64ビットへの移行」。モデルナンバーの下二桁がなぜ“40”から始まるのかという理由も判明した

 日本AMDは4月23日、x86アーキテクチャ初の64ビット対応CPU「AMD Opteron」を発表した。今回発表されたのは、2wayに対応した200シリーズ「AMD Opteron プロセッサ モデル240」「AMD プロセッサ モデル242」「AMD プロセッサ モデル244」の3製品。1000個ロット時のCPU単価は以下の通りだ。

製品名単価(1000個ロット時)
Opteron 2403万5375円
Opteron 2428万6250円
Opteron 2449万9250円

 このほか、1way対応の100シリーズ、8way対応の800シリーズも発表。100シリーズの出荷は2003年の第3四半期、800シリーズの出荷は2003年第2四半期の後半に予定されている。

 ヒルトン東京で行われた発表会では、アジア太平洋地域セールス/マーケティング担当上席副社長の堺和夫氏が開口一番に「未来のコンピューティングにようこそ」と、Opteronによる新しいコンピューティング時代の幕開けを宣言した。


アジア太平洋地域セールス/マーケティング担当上席副社長 堺和夫氏。「今までも64ビットコンピューティングのニーズがあったが、クライアントが望むものが存在しなかった」

 続けて堺氏は「今まで登場した“テクノロジーのためのテクノロジー”は、より巨大でより速いものだが、クライアントが望んでいる重要なものが抜けている。これからは、“クライアントに役に立つテクノロジー”以外のものはいらないのだ」と、必要以上に高速化し複雑化する最近のシステムを批判し、「ユーザーが扱うデータの増大に対応するために、よりパワフルで複雑な64ビットコンピューティングへの移行は避けられない。64ビットコンピューティングは“IF”ではなく、“When”なのだ」と、Opteronの必然性を訴えた。

 次に登場した同社取締役の吉沢俊介氏は「Opteronで始まった64ビットコンピューティングを、今年中にデスクトップPC、ノートPCにも提供していく」と、AMDのCPUファミリーをすべて64ビットコンピューティングに対応させる「AMD64」コンセプトを提唱した。


同社取締役の吉沢俊介氏。「IA-32、IS-64というカテゴリーのほかに“AMD64”という新しいカテゴリーがこれから加わる」


AMDが提唱するAMD64では、サーバだけでなく9月に登場予定のAthlon 64でデスクトップPC、ノートPCでも64ビットコンピューティングを推進する


Opteronシリーズのポジショニングをインテルのサーバ向けCPUと比較。エントリーサーバのPentium 4からハイエンドのItaniumまで、Opteronだけでカバーする

 今回の発表会でAMDが最も強くアピールしていたのが、「ユーザー主導によるシームレスな移行」と「低コストでの導入」。「Intelの64ビットコンピューティングは、現在の資産を継承することなく、彼らが主導し、彼らが(導入時期を)選択する」と、メーカーがイニシアティブをとるIntelと比較して、「膨大な32ビットコンピューティング資産をそのまま継承しながら、ユーザーが選択した時期に64ビットコンピューティングに移行できる」とユーザーがイニシアティブをとるAMD 64によって、64ビットコンピューティングが急速に普及すると述べた。


会場にはマイクロソフト製品マーケティング本部Windows Server製品部部長の高沢冬樹氏(写真右)も登場。「Windows Server 2003のネイティブ64ビット版はまもなく提供可能」と述べた

 発表会で明らかにされた、Opteronの実動作クロックは以下の通り。

モデル実クロック
Opteron 2401.4GHz
Opteron 2421.6GHz
Opteron 2441.8GHz

 AMDは「CPUの評価では、動作クロック数で単純に比較するのではなく、発揮するパフォーマンスに注目すべきだ」というコンセプトの下、CPUの性能指標に「モデルナンバー」を導入している。Opteronでも3桁のモデルナンバーが使われており、1桁めは「サポート可能なプロセッサ数」、残り二桁で「同シリーズ内の相対的性能」をそれぞれ表している。

 Athlon XPのモデルナンバーで多くのユーザーがイメージしているのが「同程度のパフォーマンスを出すPentium 4の動作クロック」。Athlon XP/2400+なら、Pentium 4/2.4B GHz相当のパフォーマンスを発揮する、という考え方だ。

 今回のモデルナンバーについて、AMDは、競合するCPUとの比較はしていない、と述べている。二桁のナンバーが“40”から始まっているのも「10や20で始めると、動作クロックと誤解される恐れがある。50や60から始めると、将来二桁で足りなくなる可能性があった」(日本AMD広報)という理由だ。あくまでも同シリーズ内で相対的性能の比較指標であり、顧客からXeonやItaniumとの性能比較を質問されたら、「実際に測定したベンチマークの結果を示す」(日本AMD広報)としている。


AMDが行ったベンチマークの結果。整数演算(SPECint_rate)やオンライントランザクションテスト(TPC-C)では圧倒的優勢。それ以外でもItanium2に匹敵するパフォーマンスを出している

 このほか、会場では2way Opteron対応マザーボードの展示、Opteronが動作するワークステーションやWindows Server 2003(ネイティブ64ビット対応)、Toubolinux 8 for AMD64ベータバージョンのデモが行われた。


Opteronはヒートスプレッダが実装され、Athlon系CPUの鬼門だったCPUファン取り付け時におけるコア欠けの危険性がなくなった。ダイサイズの底面積は193平方ミリメートル


NVIDIAはGeForce3 Pro搭載マザーボードを展示


TYANは2way対応のThunder K8(S2880)を展示。ノースブリッジチップの真下に見えるのはU320 SCSIのコントローラチップ


GIGABYTEはノースブリッジに、PCI-Xブリッジを内蔵したサーバ向けのAMD-8131とAGP8Xブリッジを内蔵したグラフィックワークステーション向けのAMD-8151のデュアル構成にしたGA-K8DPXDWを展示


ベータバージョンのデモを行っていたToubolinux 8 for AMD64。会場ではベータ版CD-ROMの配布も行っていた

関連記事
▼ OpteronはAMDを救うか? プロセッサ責任者が語る
▼ AMDの未来を担うOpteron、その“強み”は?
▼ AMD、「デュアルOpteronによる64ビットWindowsデモ」フォトレポート
▼ AMDの自信を示すOpteronの価格設定
▼ AMD、Opteronの性能表示に3けたのモデルナンバー

関連リンク
▼ 日本AMD

[長浜和也, ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.