News:アンカーデスク 2003年5月1日 03:44 PM 更新

っぽいかもしれない
「ベルリナー式円盤蓄音機」を作ってみた(1/3)

学研の「大人の科学」に今度「ベルリナー式円盤蓄音機」が加わった。使い損じたCD-Rなんかが媒体として使えるのがミソで、うまく録音するにはコツもけっこう必要。というわけで、かなり遊べるのだった

 学研「大人の科学」シリーズは、大きくなった“元”子供たちをよろこばせているものだけど、こんど新しく「ベルリナー式円盤蓄音機」が加わった。過去に「エジソン式蓄音機」はあったのだけど、これは円筒に記録するものだ。今度は円盤である。古いCD-ROMや焼き損じたCD-Rもメディアとして使えるのだ。ゴールデンウイークに作っていろいろ実験してみるのも面白い。


レコードの原理

 ここでレコードの原理の話をするのも釈迦に説法な気もするのだけど、最近、CDの原理は知っていてもレコードの原理を知らないという人もいるらしいので、簡単におさらい。実は、「大人の科学」では、この辺の説明が妙に簡単なのだ。「◯年の科学」の付録のときには、本誌にこういう話があったんだけど(*1)。

 音っていうのは空気の振動だから、録音というのは、振動の状態をどうにかして記録するということだ。レコードは最初に出た記録方式だけあって、最もプリミティブな方法を採る。空気の振動をそのまま物理的な凸凹に置き換えるのだ。

 同じくらいプリミティブな音声伝達方式に「糸電話」がある。送信側では、音声を振動子(紙コップの底!)で受けて、それを糸の振動に変換する。受信側では、逆に糸の振動が振動子を揺らし、それによって空気が振動して音声になるものだ。レコードの記録は、この、糸を振動させるかわりに、針を振動させ、それによって、回転する板に溝を彫り込むのだ。再生のときは、溝の上を針でなぞって、その振動を振動子に伝えればいい。

 蓄音機を最初に発明したのは、エジソンだ(1877年)。彼は、振動子に針を垂直に取りつけ、円筒形のメディアに記録するようにした。原理的にはとても分かりやすいのだが、性能的には不十分であったらしい(聴いたことがないので、私は、本当のことはわからない)。

 そこで、登場したのがドイツ生まれでアメリカにわたった発明家エミール・ベルリナーだ。彼は蓄音機の改良に着手し、1887年9月に新たな蓄音機を発明する(*2)。彼の蓄音機は、針が振動子に平行に取りついていて、メディアは円盤だ。

 メディアが円盤だということは、プレスによって大量生産が可能だということだ。最終的にはこれが決め手となった。CDの登場まで(現在でも)使われている「レコード」が円盤なのは、そういう理由である。

 当時のモーター(って、ゼンマイ式だ!)は角速度一定で回るから、円盤記録の場合、外縁部と内周部とでは、線速度が変わってくる。これは、音質の差になってあらわれる。高速度で記録できる外縁部のほうが音がいいのだ(*3)。どうもエジソンはこれが技術的に気持ち悪かったらしい。エジソンとベルリナーの技術屋としての違いかもしれない。

組み立て前の準備

 パッケージを開けて部品を広げる。ネジを除いて全部で24点。ただし、うち3つは道具、1つはアダプタ。モーターは電動だ。ゼンマイは速度を一定にするのが大変だから(なにより高くつく)、今の選択としてはこのほうがいい。そのモーターまわりのギアユニットは既に組み上がっている。そういうのがやりたい人は残念。


 ネジは、シートに格納されて入っている。種類が多いので、間違いないようにすること。この裏紙にはネジの絵が書いてあってかわいいんだけど、ついでにネジの名前(マニュアルでは「ねじA」「ねじB」のように呼ばれるのだ)も書いてあると分かりやすかった。


 組み立てに必要なのは、#1のプラスドライバ、はさみ、セロハンテープ。指が太くなっている大人はピンセットもあったほうがいい。また、電池はついていないので、単2形乾電池を2本用意すること。


*1 公式サイトに、少し詳しい記事がある。これが、いまの「本誌」なのかな。
*2 ここに特許出願図がある。
*3 この問題は、現在になっても解決されないままだ。エジソンは笑っているだろう。

[こばやしゆたか, ITmedia]

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