News:アンカーデスク 2003年5月8日 01:37 AM 更新

新液晶ディスプレイ時代を拓けるか?――NEC三菱の広色域LCD技術

WinHECの展示会場で筆者が一番強い関心を持ったのは、実はNEC三菱ビジュアルシステムブースで展示されていたLEDバックライト採用のテクニカルサンプルだった。Adobe RGBに近い広い色域を持ち、来年には製品化の予定だという
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 以前に書いたコラムにもあるように、筆者は近頃、CRTから液晶ディスプレイへの移行を見据えて液晶ディスプレイ、特に色に関わるテクノロジに敏感になっている。5月6日から開催されているMicrosoftのハードウェア開発者向け会議「WinHEC 2003」の展示会場で、最も長い時間を過ごしたのも、NEC三菱ビジュアルシステム(以下NMビジュアル)のブースだ。

 NMビジュアルはAdobe RGBに近い広い色域を持つ、LEDバックライト採用のテクニカルサンプルを展示していたのだ。

 NMビジュアルによるとバックライトにLEDを用いることで、特に赤のスペクトラムが安定し、より純度の高い赤色を実現できるという。加えてカラーフィルタを改善し、青と緑に関してはAdobe RGBとほぼ同じ色度座標、赤はAdobe RGBよりも若干広めとなる。

 ちなみに明るさは500カンデラとかなり明るく、LED光源で心配される輝度ムラも新型導光板の採用で全く見られないなど、色域の広さ以外の要素も優秀な製品であった。


 デモではカラーマップを表示して色域の違いを見せていた他、AdobeRGBのデジタル画像を、カラーマネジメントなしで通常の液晶ディスプレイと広色域液晶ディスプレイに表示。sRGBに近い色特性を持つ通常のディスプレイでは、かなり沈んだ色調になるが、広色域液晶ディスプレイでは自然な色で表示される。NMビジュアルによると、来年にも製品化を計画しているという。

 実際に利用する際には、ICCプロファイルを通してカラーマネージメント対応アプリケーションを用いる必要があるが、圧倒的な色域の広さは自然画の色再現を重視するユーザーには非常に魅力的だ。

 また日立と三菱電機が共同出資で設立したデジタル画像処理チップの開発会社、ルネサステクノロジ製の色空間変換チップを用いることで、sRGBをはじめとする他の色空間をエミュレートすることもできる(注 当初同社をNMビジュアルの関連会社と記載していました。お詫びして訂正します)。

 現在の液晶ディスプレイは、機種によって異なるものの、おおむねCRTディスプレイとほぼ同じ色域を持つ(NTSCの72%程度)ようになり、さらには視野角の拡大といったことも加わって、CRTディスプレイから液晶ディスプレイに置き換えてもあまり強い違和感を感じなくなってきた。

 NMビジュアルの広色域液晶ディスプレイは、そこから一歩さらに先に進み、CRTを超えてAdobe RGBクラスにまで色再現域を広げる。NTSC比では(RGBの各色度が異なるが)105%程度になる。

 液晶ディスプレイは、電子ビームの収束径の関係から100dpi前後が物理的限界というCRTディスプレイと比較し、より高い200ppi以上の高精細な表示を比較的容易に実現できるというメリットがある。今後、液晶ディスプレイが価格下落の方向だけで普及するのではなく、高品質、高付加価値を目指すためには、そうした精細度の高さという強みを活かす必要がある。

 しかし、ディスプレイを駆動するためのインタフェース帯域の問題、Windows上で表示が崩れるソフトウェア互換性の問題などもあり、現時点ではそのメリットを生かせる環境にはない。

 しかしCRTよりも広い色域を再現することでで、出版や印刷業界のプロはもちろん、ハイエンドのデジタルカメラユーザーに対しても魅力的なオファーが出せるようになるならば、液晶ディスプレイの新しい付加価値要素として認知されるようになるかもしれない。



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[本田雅一, ITmedia]

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