News 2003年5月9日 09:59 PM 更新

「OS込みで2万円台のPCも」――Lindows日本語版、エッジ緊急インタビュー

エッジが「LindowsOS」日本語版の国内独占販売権を獲得。いよいよ、日本語対応のLindowsPCが発売される。Lindows日本語版の詳細や今後の展開、LindowsOSの魅力などについて同社に聞いた

 エッジ(旧オン・ザ・エッヂ)が先日、「LindowsOS」日本語版の国内独占販売権取得を発表。いよいよ、日本語対応のLindowsPCが、今夏から発売されることになった。Lindowsを担当する同社取締役の榎本大輔氏と、プログラマーの長谷川憲司氏に、Lindows日本語版の詳細や今後の展開、LindowsOSの魅力などについて聞いた。


同社取締役の榎本大輔氏(左)と、“Mr.Lindows”プログラマーの長谷川憲司氏(右)


今夏から発売される「LindowsOS」日本語版

 Lindowsは、RedHat Linux/Vine Linux/Turbo Linuxなどと同じLinuxディストリビューションだ。WindowsライクなGUIを採用するなどして“Linux色”を薄め、Windowsユーザーが移行してきても違和感ないようになっている。

 「Linuxのカーネルは2.4.20で、これをベースにLindows独自のカスタマイズを施している。GUIは現在のところKDEの3.0.3ベースで、XFree86は最新の4.3.0。ファイルシステムはReiserFSを採用している」(長谷川氏)。

 Linuxディストリビューション「Debian」をベースにWindowsエミュレーションソフト「Wine」が組み込まれたLindowsは、「Windowsアプリケーションが動くLinux」という触れ込みで2001年末に登場した。しかし実際には、動作しないWindowsアプリケーションも多く、最近では開発元のLindows.comでも、“Windows互換”というセールストークはトーンダウンしている。


「Windowsアプリケーションが動くLinux」という触れ込みはトーンダウンしたが、Windowsライクなインタフェースは健在

 榎本氏はLindowsについて、「たしかに英語版Windowsアプリケーションなら、Lindows内のWine上で動かすことができるものもある。しかし、Wineは日本語環境だと漢字が入力できないといった問題がある。当初のWindowsアプリが動くというアナウンスは、Lindowsをアピールするためのマーケティング的な意味合いが強かった」と説明する。

 現在のLindowsは、「Linux上で動作するWindowsアプリケーション互換ソフトが、簡単に利用できる仕組みを提供する」というスタイルに方針変更された。その中心となる技術が「「Click-N-Run」だ。

収益源は「Click-N-Run」

 Click-N-Runは、さまざまなLinuxアプリケーションを、マウスのクリックのみでダウンロードからインストールまで自動で行うサービスだ。英語版Lindowsでは、年間99ドルを支払うことで、約1700ものLinuxアプリケーションを好きな時にダウンロードして利用可能。まさにブロードバンド時代にふさわしいOSといえる。

 中にはMS Office互換の「Star Office」など単体で数十ドルという価格のソフトも含まれており、有料ソフトも多数入って99ドルというClick-N-Runは、お買い得感も高い。


 カテゴリ別に別れた約1700ものLinuxアプリケーションを、マウスのクリックのみで利用可能な「Click-N-Run」

 ただし、1700のアプリケーションが使い放題とはいえ、日本語環境で動作するソフトがどれだけあるかが問題だ。

 「主要な100ほどのアプリケーションは、ローカライズする予定。また、そのほかのソフトも日本語環境での動作を検証していないだけで、ロケールファイルがあれば日本語化はさほど難しくはない。日本語版のClick-N-RunでStar Suite(日本語版Star Office)を入れるかは、現在Lindows.comサイドで交渉中。もしかしたら(同じくMS Office互換の)Open Officeになるかもしれない」(榎本氏)。

OS込みで2万円台のPCが登場

 Windowsなど他のOSに比べて非常に安価なのが、Linuxディストリビューションの特徴だ。ただし、米国でのLindows単体価格は、店頭パッケージ版が129ドル、ダウンロード版が119ドルと、他のLinuxディストリビューションと比べるとやや高め。一方、Lindows搭載PCは200ドル台から購入できる。

 「日本でも同様の価格体系になる予定。ただし店頭では、OS単体で低価格で提供するか、Click-N-Runの使用権やATOKなどアプリケーションをセットにしたものを販売するか、現在検討中。発表会を予定している6月末までには、はっきりするだろう。ただしわれわれは、OSだけを販売して利益をかせごうとはしていない。収益源はあくまでも、Click-N-Runの年会費」(榎本氏)。

 Lindows搭載PCが安いのは、PCバンドル用に格安のOEM版を用意しているからだ。企業向けなどには、1カ月6万‐10万円(予価)のライセンス料でインストール制限なしのOEM版を提供する。

 「ライセンス料を支払えば、ショップブランドの低価格PCなどに何台インストールしてもかまわない。このシステムは、雑誌や書籍(ムック)の付録CDなどにも使える。すでに、マウスコンピュータ(エム・シー・ジェイ)やぷらっとホームで、LindowsをインストールしたPCを販売することが決まっている。OS込みで2万円台のPCが登場する日も近い」。

 また、リサイクルPCを活用しようというNPO団体向けや、学校など教育機関向けには無償に近い料金で提供する予定。

ブラウザは独自仕様のMozilla?

 Lindows日本語版には、日本語対応のインターネットブラウザやメーラーが標準でバンドルされる。「発表時の資料(スクリーンショット)ではブラウザがNetScape 7になっていたが、Lindows日本語版ではMozillaが採用される。どのようなバージョンかは現時点では言えないが、通常版でないことは確か。また、標準メーラーはMozilla Mailだが、Outlookのインタフェースに似たメーラー“Sylpheed”なども、Click-N-Run経由で提供する予定」(長谷川氏)。

 エッジといえば昨年2月にメーラー「Eudora」の国内販売・開発権を獲得している(別記事を参照)。Lindows版Eudoraも期待したいところだ。「そのへんは、今後を楽しみにしていてください」(榎本氏)。

 そのほかでは、MSN Messenger/AIM/ICQ/Yahoo! Messangerなど主要なIMに対応した「GAIM」や、GUIベースのMP3プレーヤー「XMMS」なども日本語化されてバンドルされるほか、CDライティングソフト/プレーヤーや数種類のゲームも同梱される予定。「ATOKをOSにバンドルするか、Click-N-Runで提供するかは現在検討しているところ」(榎本氏)。


GUIベースのMP3プレーヤー「XMMS」なども日本語化されてバンドルされる

 日本語版Click-N-Runの年間利用料は、英語版と同程度(1万2000円前後)にするか、それとも日本語対応の有料ソフトのラインアップを充実させてその分を上乗せしていくかを現在検討中とのこと。

発売時期は今年第3四半期

 米国では、200ドル台のデスクトップPCだけでなく、VIA C3プロセッサ搭載マシンにLindowsをインストールした799ドルのノートPCなども登場している。

 「Tablet型のLindowsPCなども作られている。Tabletスタイルでブラウザとメーラーだけ利用するような使い方は、本体スペックやOSコストを気にしなくていいLindows向き。Click-N-Runのようにソフトをひとまとめで提供するだけでなく、ベクターのようにソフトを1つずつオンライン購入していくシステムも検討中」(榎本氏)。

 Lindowsの日本語化は、長谷川氏ら国内エンジニアが渡米して作業するほか、Lindows側からもエンジニアが数人参加して、共同でローカライズ作業を行うという。

 「OSレベルではほぼ日本語化が終了しているが、インストーラーやドライバ関連のローカライズを現在行っているところ。ベータ版の配布は、6月中に行えるのでは。製品はショップ単体売りとプレインストールPCがほぼ同時に出てくる。発売時期は未定だが、今年第3四半期には市場投入したい」(長谷川氏)。

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[西坂真人, ITmedia]

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