News 2003年5月9日 06:40 PM 更新

Media Center PCはこの先どうなっていくのか

家電への第一歩となった初代Media Center PC。だが、本物の家電と比較してしまうと、まだ厳しい部分も少なくなかった。しかし、今年リリースの次期バージョンでは、その欠点のいくつかを克服。そしてより本格的な家電とするため、同社は長期的にもさまざまな改良を加えていく計画だ

 Microsoftが昨年リリースしたMedia Center PCは、新しい使い方、テレビの統合、PCから離れた場所での操作性などを盛り込み、ハードウェア面でも5-in-1メモリカードリーダやフロントパネルのインフォメーションディスプレイ、テレビチューナーの標準化、ハイエンドのグラフィックパフォーマンスといった面で、従来よりも家電方面へと一歩踏み込んだプラットフォームとなっていた。

 それはかつて、ソニーが切り開いた道だが、Microsoftはその分野をOSの機能やユーザーインタフェースと統合する道を選んだ。

 しかしMedia Center PCは、家電へと繋がる第一歩にはなったものの、本当のAV家電にはまだまだ及ばない部分が多い。信頼性や安定性、動画の表示クオリティ、HDTVフォーマットやワイド画面への対応などに加え、より家電らしいフォームファクタや静かな部屋に置いても邪魔にならない騒音レベル、コンパクトさなど、さまざまな要件がまだまだ残っている。AV家電に対するユーザーの要求が厳しい日本に市場に投入するには、製品としての完成度がまだ低いというのが正直な感想だった。

 しかし、今年中頃のリリースが予定されている新しいMedia Center PCでは、それらの問題に対して一通りの回答を、Microsoftは用意しているようだ。従来のテレビ、音楽、写真、ビデオのリモコン操作だけではなく、インスタントメッセンジャーなどのコミュニケーションツールや他デバイスのコントロール、それに新しいウェブブラウザを用意するという。また、機能拡張のメカニズムを組み込むことで、PCベンダー自身がMedia Center PCの機能を拡張可能にする。

 PCの静音化など、よりリビングルームにふさわしい機器に仕立てていく、というテーマに関しても、同社は長期的に取り組んでいくという。デザイン、音などに加え、長時間電源を入れたままでも壊れないようにMTBF(平均故障間隔)を延ばすための方策を取っていく。UPnP対応のホームサーバ機能ももちろん搭載する。

 ただし、MicrosoftはMedia Center PCのフォームファクタが大きく変化する必要はないとも語る。トラディショナルなスタイルのPCであっても、そこに映像や音響に対する驚きを組み込むことができれば、それで成功だという。そうした従来型フォームファクタとは別に、テレビチューナーや赤外線リモコン受信機などを内蔵した統合型のAV機器ライクな製品があってもいい。用途次第というわけだ。

 しかしその一方で、騒音問題に関しては重要な課題として認識しているようだ。ハイパフォーマンスなコンポーネントは、どんどん発熱量が増えてきており、冷却ファンの増加はシステムの信頼性や寿命を損なう。またハードディスクレコーダ機能ではタイムシフト再生時などで常にハードディスクが稼働状態になるためノイズ面で厳しい。小さく薄いフォームファクタの製品を開発することは今後より難しくなる見込みだ。

 これに対してMicrosoftは、ヒートパイプを活用したファンレスヒートシンクの開発や、大きなファンをゆっくりと動かす設計、冷却ファンの詳細なコントロール、流体軸受けHDDをラバーマウントで装着すること、CPUをアシストするアクセラレータチップを活用することで負荷を減らすことなどの課題を挙げている。

 具体的な数値は現時点では挙げていなかったが、MicrosoftはMedia Center PCの騒音レベルに対し一定の枠を設けたガイドラインを設定しているようだ。

 また次期Media Center PCでは、HDTVをサポートしているという。米国ではCATVのHD対応によって、スポーツ系を中心にHDTV放送が増えつつある。Microsoftとしては、PCのテレビとMPEGエンコーダの画質をAV家電レベルにまで引き上げる。もちろん、デジタル放送への対応もOS側では行う(製品への実装はメーカーの実装するハードウェアに依存する)。また、USBやIEEE1394接続の外部チューナーやマルチチューナー、専用ハードウェアによるWindows Media Videoのエンコードなども、OSレベルでは対応が施される。

 ハイパースレッディングテクノロジなど、重いバックグラウンドタスクに耐えられるプロセッサの登場に伴い、ソフトウェアMPEGエンコードに関しても見直しを図っているという。たとえばマルチチューナー構成のテレビ機能を実装し、そのうち1系統はMPEGエンコードをハードウェアで、もう1系統をソフトウェアでカバーするといったアイディアが検討されている。

 Microsoftは最終的に、ハイエンドのAV家電に対抗できるだけの画質を目指す。そのためにグラフィックスやサウンド系のデバイスにも、より高いクオリティを持つ製品を求めている。たとえばWindows Media Video 9やMPEGデコードのアクセラレーション機能、高品質なインターレース-ノンインターレース変換やピクセル補間などだ。また、1080iコンテンツを1080pで表示する機能も将来的に必要になるとしている。

 サウンド関係ではS/PDIFの標準装備、24ビット192kHzステレオ、もしくは24ビット96kHz8チャンネル(7.1チャンネル)、110dB以上のS/N比などが具体的な目標だ。

 しかしMicrosoftは、単にAV機能を強化するだけにとどまらず、ネットワークを通じてそのパワーを活かすための技術を開発している。ネットワーク経由でWindowsのもたらすAV機能を、どのようにして実現するのかは、また別記事にてお伝えすることにしたい。



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[本田雅一, ITmedia]

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