News | 2003年5月22日 11:40 PM 更新 |
“家電大国”日本が、IT国家を目指す上で期待するのが「情報家電分野」だ。経済産業省でも、情報家電の市場化戦略に関する研究会「e-Life戦略研究会」を昨年9月に発足させるなど、国をあげた取り組みを行っている。4月11日に公表されたe-Life戦略研究会の基本戦略報告書「e-Lifeイニシアティブ」には、こんな記載がある。
「情報家電のプラットフォーム――特定のCPUに依存しないオープンな組込OS(Linux、TRON等)が有意な選択肢」
つまり国としては、PC分野でデファクトスタンダードだが“クローズド”なWindowsよりも、LinuxやTRONのような“オープン”なOSを情報家電のプラットフォームとして推奨しているようなのだ。
そんな中、マイクロソフトが5月22日に行った定例のマスコミ向け説明会で、同社の情報家電分野への取り組みを語った。
説明会の冒頭、同社ニューメディア&デジタルデバイス本部長の宗像淳氏は「Linuxなどのオープンソースと対比して『Microsoftは何でも単独で行って“ひとり勝ち”をしてきた企業である』という見方がされているが、決してそうではない。われわれは常に、パートナーシップを基本とした“共生”を目指してきた。情報家電分野において、Windowsはまだメジャーではないが、この分野でもわれわれはUPnPなどオープンな技術を提供して、業界標準を確立していく動きをしている」と述べる。
家電の組み込み分野ではiTRONやEmbedded Linuxに後塵を拝しているWindowsだが、POS市場ではWindowsが約7割を占めるなど、エンベデッド市場でもWindowsが検討している分野もある。また、先日新バージョンが発表された「Windows Automovive」など、車載端末向け分野では積極的なアプローチで業界標準を狙う。
「POP市場では業界団体とともにいち早く業界標準を作り、取り組んできた。その結果、組み込みWindowsをベースにいろいろなサービスが現在流通している。オートモーティブ/テレマティクス分野でも同様。黒子に徹したカタチで業界で活動し、パートナーやカスタマーとともに業界標準の技術を作っていき、ユーザーの利便性・生産性を高めていくというのがMicrosoftが目指すもの」(宗像氏)。
情報家電分野での同社は、WindowsのようにOS単体での販売したりロイヤリティで利益を得ていくビジネススタイルではなく、社会的基盤の中にMicrosoftの技術を取り込んでいくことをビジョンにしている。それを具現化していくのが同社が2001年から提唱している「Microsoft eHome Vision」だ。
家電製品を快適に使いやすくするためには、家電製品同士をネットワークで結び、それらを一元管理する仕組みが必要になる。ニューメディア&デジタルデバイス本部の佐野勝大氏は「家の中にある電子機器がさまざまなカタチでネットワークにつながって、それぞれが情報をやりとりできる“ホームネットワーキング”を、Microsoftのソフトウェア技術を使って実現するのがeHomeの取り組み」と説明する。
ホームネットワーキングを実現する要素技術として同社が掲げるのがIPベースのネットワークでプラグ&プレイを可能にする「UPnP(Universal Plug&Play)」と、UPnPの応用範囲をホームオートメーション分野に広げた「SCP(Simple Control Protocol)」だ。
「UPnPやSCPを利用すれば、コンセントにつないだ瞬間に製品がネットワーク上で認識されたり、無線LANでつながったPDAから家電製品が制御できたりと、柔軟なホームコントロールが可能になる。UPnPもSCPも完全なオープンアーキテクチャ。UPnPフォーラムには現在600社以上のメーカーが参画しており、次世代型ネットワークAV機器にもUPnPが採用され始めている」(佐野氏)。
しかし実際には、ソニーの「VAIO Media」と「RoomLink」の組み合わせのように、UPnPベースで作られながらも基本的にVAIO以外のPCでは利用できないというように、メーカーが独自仕様にしてしまうケースも多い(別記事を参照)。
「現時点で商品化されているものは、UPnPの仕様が確定していなかった時期に作られたもの。われわれとしては、UPnP A/Vプロファイルを策定したり、UPnP A/Vの上にMedia Centerとつなぐためのコンテントディレクトリサービスを設けるなど、UPnPの標準化を進めている。コンテンツディレクトリサービスに対応する製品の開発を始めているメーカーもすでにある。これからUPnP対応機器は徐々に増えていく」(佐野氏)。
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[西坂真人, ITmedia]
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