News:アンカーデスク | 2003年6月2日 09:44 AM 更新 |
自分で録画したテレビ番組を外に持ち出して見るというソリューションは、より高画質な圧縮技術の発達により、かなり現実的な話になってきている。むろんMPEG-2のままでもHDDなどの容量次第で持ち出せないこともないが、数は限られるし、なにしろ転送するのに時間がかかりすぎるのが難点だ。
MPEG-2でテレビ録画した映像などをより小さく圧縮する方法としては、WM9、DivX、XviD、XVDといった多くのコーデックが存在する。1Gバイトほどの空き容量があれば、1時間番組4〜5本は持ち出せることになる。
しかしソニーのVAIO部隊がこの夏モデルで実現した「外に持ち出す方法」は、今やコンテンツホルダーに対して禁句となっている「コピー」によるものとは違っている。彼らの考えたソリューションとは、自宅にある個人のPCからWANに向かってストリーミングするというものだ。
バイオでは、以前からLANで映像を配信するという技術を積極的に開発してきた。その延長線上として、この夏モデルからWANに出せるようになったという見方が正しいだろう。
このネットワークを使ったメディア配信を実現する核となるのが、「VAIO Media」だ。
外部から見るということが、実際にどのように実現されるかを簡単に説明しておこう。外にあるPC(クライアント)側から、VAIO Mediaを使って家にあるバイオ(サーバ)にアクセスする。ネットワーク越しに機器認証が行なわれ、クライアント側からリクエストされた番組を、サーバがリアルタイムにMPEG-4エンコードしながら送り出す。
「どこでもテレビ」なのか?
しかしこのVAIO Mediaほど、漠然として正体のつかみにくいものはない。
環境なのか、コンセプトなのか、アーキテクチャーなのか、ソフトなのか。
テレビを録画するのはGiga Pocketだが、見るのはGiga PocketでもVAIO Mediaでもいい。以前はさらにPicoPlayerという再生ソフトが入っていて、これでも見ることができた。
何をどう使い分けるべきなのか、今ひとつ判然としない。今回はこのVAIO Mediaの商品企画を担当する、ソニー モーバイルネットワークカンパニーの岸本豊明氏にお話を伺いながら、VAIO Mediaとはいったい何なのか、これからどこへ向かっていくのかを考えてみたい。
そもそも外でテレビ番組を見るということを考えた場合に、もっとも簡単に実現できそうなのは、何らかのメディアにコピーして持ち出す方法だ。それをわざわざ外からインフラを使ってリアルタイムで見ようなんてというのは、同じことを実現するにしても、より茨の道である。なぜVAIOではそういう方向へ行き着いたのか。
「いつでも欲しいと思ったときに手に入る、というのが大事なんです。メディアに入れて持ち出すためには、まず出かける前にコピーしとかないとダメですよね。こういう“前もってなんかしとく”という考え方から解放されること、これが場所と時間を選ばない視聴環境を実現することなんじゃないかと」(岸本氏)。
つまり、出かけちゃってからテレビ見たくなったらどーすんだヨ、という問題を解決するためには、思いついた瞬間からアクションを起こし始めても間に合うような仕掛けが必要なのである。これは「パーソナルストリーミング」とも言えるVAIO Mediaの特性をよく表わしているだろう。
だが具体的に利用シーンを想像してみると、どこかぬぐい切れない不自然さが伴う。
外でテレビを見たいという瞬間はいつ訪れるか。大のオトナが外でテレビを見ていて倫理的に問題のない時間はいつかと考えると、最も許されるのは通勤などの移動時間ではないだろうか。
もしVAIO Mediaで通勤中に番組を見ようとすれば、双方向の移動体通信が必要になってくる。しかし現状でそれが実現できているのは電話ぐらいのものだ。
現実的な問題がもう一つある。
[小寺信良, ITmedia]
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