News:アンカーデスク 2003年6月6日 01:27 AM 更新

省エネとコンピュータのホットな関係
熱は部品寿命にも影響する(3/3)


前のページ

 例えば、デスクトップ機のマザーボードでも、ボード上のシステム構成要素ごとに利用する電源を細かく分離したパーティショニングを行っている。これによって、それぞれの部分ごとに電源の供給をON/OFFすることができるわけだ。

 具体的には、ACPIが定めた6段階によるシステムの動作状態を「Sleeping state(S0〜S5)」とし、状態に応じてOSがパーティションごとに電源の供給をON/OFFできる。状態保存が必要なハードウェアなら、他の部分がOFF状態になっても、その部分だけは最低限の電源を常に供給するなども可能だ。一部のUSBデバイスや LANのネットワークインターフェースカードなどがこれにあたる。USBではバスパワー(バスからの電源供給で動作する)デバイスがあるからだ。

 システム構成時にどのデバイスが、どのパーティションに存在するのか、OSが状況を把握し、その動作と電源管理を的確に行う。当然、構成情報はプラグ&プレイと密接に関わっている。例えば、あるPCIの拡張カードがACPIに対応していなければ、このカードの電源をOFFにはできない。

 このように、ACPIは複雑な仕組みと、すべてのデバイスの対応があってはじめて実現する省エネメカニズムだ。シリアルやパラレルなど、レガシーなデバイスを完全に排除すれば、劇的に効果は改善される。また、すべてのデバイスが電源をOFF、またはスタンバイ状態にできれば、ほぼ完璧に近い制御が可能である。

 だがしかし、ACPIの最も重大な落とし穴は、常にシステムが稼動状態にある場合、あまり省エネ効果が得られないという点だ。つまり、机からちょっと席をはずしたときなどには、効果が期待できるが、ずっと作業中のシステムの省エネにはあまり貢献しない。

 むしろ、OSの起動やシャットダウンが瞬時に可能なら、ACPIより積極的に電源をON/OFFするほうが省エネ効果は高いだろう。もちろん、OSを起動/シャットダウンするたびにネットワークへのログイン/ログアウトが必要であるし、開いたままのアプリケーションをどうするかといった問題はある。

 しかし、OSの起動時間をはじめ、アプリケーションの構造やOSの仕組み(OSからの終了シグナルを受けると最後の状態を保存し、OSも最後の状態を保存するなど)など、既存のOSやアプリケーションにはない発想が必要だが、工夫の余地はあるはずだ。

これからのPCは発熱や消費電力が課題になる

 PC内部の各パーツの消費電力を下げ、発熱を抑えつつ消費電力あたりの処理効率を高めるという発想は、今後、PCの開発にとって重要な課題である。システム全体の電源管理をきめ細かく制御するなど、省エネに向かって可能なことをすべて行わねばならない。でなければ、システムの寿命や信頼性が熱によって大幅に損なわれてしまうという問題が待ち受けている。

 また、話の次元としてはまったく異なるけれど、PCやサーバの信頼性が、そこで使われている冷却用のファンに依存している事実をもっと切実に考えなければならない。たった数百円のファンが、24時間365日連続稼動が必要なシステムの真の意味での信頼性を支えているという事実にである。

 そのファンが故障した結果、コンピュータが誤動作したり停止したりするというのは実際に起きても不思議はない。すると、「重要なシステムなので多重化して冗長度を持たせ、信頼性を高めた」という、よくある高信頼性システムの構築事例が、急に陳腐な話になってしまう(もちろん、冗長化はここでも有効な手段ではあるのだが)。

 ユーザーとしては、あまり具体的に打てる対策が少ないのが難点だが、少なくとも省スペースデスクトップなどでサーバを代用することが好ましくないことぐらいは理解頂ければと思う。可能な限り涼しいマシンが、サーバとして長期間の稼動に適しているというわけだ。

燃料電池利用の可能性 に続く

[宇野俊夫, ITmedia]

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

前のページ | 3/3 | 最初のページ