News 2003年6月9日 08:26 PM 更新

「無線もプロセッサに飲み込む」――Intel、次のシナリオ(1/2)

インテルは6月9日、無線技術の研究に関する記者説明会を東京で行った。講演者として登場したのは、米Intelのコミュニケーション&インターコネクトラボ・ディレクター、ケヴィン・カーン氏。「CMOSへの実装」「RCA」「スマートアンテナ」などについて説明を行なった。


ケヴィン・カーン氏。「われわれは無線技術を研究しているが、これが既存のワイヤードLANに取って代わるものではない。あくまでも、ワイヤードを補完するのがワイヤレスなのだ」

 Intelは、モバイル端末に普及によって「モバイルライフスタイル」がもたらされると予想。その実現にとって、重要な役割を果たす無線ネットワーク技術の研究開発に力を入れているという。

 具体的な予算や人員は明らかにされていないが、その研究テーマは実装レベルの技術開発から、無線に関する法規制と標準化にいたるまで多岐に渡っている。

 その研究開発部門を率いるカーン氏は、無線技術を制約する要因として、二つのものがあると考えているという。第一がチャネル容量を決める物理法則、第二が利用できるバンド幅と出力を決める規制だ。

 「物理的法則によって決まっている、周波数や帯域など“波”そのものに手を加えることはできない」という同氏だが、「パワフルなPCのパワーによってネットワーク処理能力を向上させることはできる。また、複数の無線技術を併用できるチップを開発し、システム全体としてのパフォーマンスを向上させることは可能だ」と、その壁を突き抜ける可能性はあることを示唆。同社はネットワークの機能とパフォーマンスをチップレベルで向上させ、無線通信の効率化を図る方向で研究開発を進めていると述べた。

 Intelの構想では、単独の無線規格にしか対応していない端末の現状から、2005年までに無線モジュールを1台の端末に複数搭載、ゆくゆくはベースバンドを共用した一つのモジュールを搭載して、複数の無線規格に対応させようとしている。


Intelが考える、複数の無線規格に対応する携帯端末開発のロードマップ。現在ではコストの高い無線モジュールは1台の端末に複数搭載できないが、低価格のCMOSチップで構成されたモジュールを複数搭載する端末が2005年までに登場。その後、ベースバンドを共有して一つのモジュールで複数の無線規格を切り替えて使える端末が登場する予定だ

 Intelの戦略で注目すべきなのは、現在主流のGaAs(ガリウム砒素)に代わってCMOSを導入しようとしていることだ。同氏はその理由は「GaAsは高価。それに対し、CMOSならばわれわれは今まで培ってきた生産技術を使って、低コストで大量製品できる。さらに、デジタル回路にすることで、プロセッサへの統合も可能になる。そうなれば、端末のコストはさらに抑えられる」と説明。Intelが得意とする技術によって、低価格化に大きく貢献できるメリットをアピールした。


Intelは現在2.4、5.2GHzによる無線LANの転送レートを今後5年あまりで、最大4倍まで向上させようとしている。画面はそのために必要となるキーテクノロジーと実現までのロードマップ。Intelの計画では3年余で新しい変調技術やCMOS WLANモジュール、スマートアンテナなどが開発されることになっている


試作開発された10GHz対応の周波数シンセサイザー。安定したデジタルチューニングによって、マイクロ秒単位でのチューニングが可能になっている

[長浜和也, ITmedia]

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