News:ニュース速報 | 2003年6月19日 09:13 PM 更新 |
インプレスは6月19日、新刊書「だからWinMXはやめられない」(7月2日発売)の一部の無料ネット配布を始めた。配布分はPDF化されており、改変しない限り再配布も可能。発売に先駆けて新刊の内容をネットで無料配布する新しい試みだ。
同書はファイル交換ソフト「WinMX」にのめり込んだあるユーザーの体験を、編著者の津田大介氏がインタビューしてまとめた。無料配布はこのうちの第3章「あのアニメは手に入る?」と目次など合計38ページを「無料立ち読み版」としてPDF化。改変・変更は認めないが、複製や再配布を許諾しており、ファイル共有ソフトで他ユーザーと共有しても問題ない。
書籍販売の新手法を試みる目的に加え、「個人間ファイル交換の巨大ネットワークを健全に利用できるよう提案」するのもねらいだという。
「だからWinMXはやめられない」は256ページ、1580円。書店発売前の6月20日から、電子書籍版(980円)を先行発売する。
だからやめられない“MXという現場”
同書は書店のPC書籍売り場にあふれるハウツー本とは一線を画す。ある男性サラリーマンがWinMXに出会い、大金をつぎこんで機材を増強し、「神」と呼ばれるユーザーから教えを受けながらついに自らも「神」となる1年半の記録だ。
同ソフトを使ってソフトを違法に交換していたユーザーが逮捕されるなど、WinMXは音楽ファイルや映画・アニメなどの動画、児童ポルノなど違法なファイルが日常的に行き交う“九龍城”のイメージがつきまとう。
編著者の津田氏は「彼の体験はれっきとした犯罪行為」と断りつつ、「ファイル交換ソフトの実際の利用者増や交換のルールなど、その実態はなかなか知られていない」と指摘する。違法と知りつつなぜ「やめられない」のか──いわゆる「オタク」ではない普通の男性の個人的な体験に立つことでMXユーザーの実態に迫っている。
語り手がWinMXネットワークに初めて接続した時の興奮や、エンコードや共有の“神”と呼ばれるヘビーユーザーたちとの出会い、どこかに存在するとささやかれる「至高の小鯖」を探索する道のり──インターネットが当然のインフラとして陳腐化する一方で、ファイル交換に生活を注ぎ込むユーザーの熱意はどこか「ネットサーフィン」に没頭したWWW勃興期の興奮に似ている。
洋画の公式字幕への不満から、自ら作成した字幕付きの映画ファイルを公開する「神」の姿はテクノロジーがもたらした作り手−受け手という関係の変化も浮き彫りにするだろう。「タダだから」という理由だけでは説明しきれない、ファイル交換に没頭する人々の“現場感覚”を活写したルポルタージュとして興味深い。
関連記事[ITmedia]
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.