News | 2003年7月4日 10:20 PM 更新 |
超並列計算研究会は7月4日、第34回研究会を日本ヒューレット・パッカードの市谷事業所で開催した。超並列計算研究会とは、特定の企業や研究機関、学校に属するものではなく、ユーザーが自発的集まった団体だ。並列処理に関連したあらゆる事項に関して、議論、研究を行うことを目的としている。並列処理以外にも、HPC(High Performance Computing)やPCクラスタなど、超高速処理システムに関するテーマを広く扱っている。
第34回研究会では、日本ヒューレット・パッカード(hp)のHPCに対する取り組みをメインテーマとして取り上げた。hpはワールドワイドでIBMとシェアトップを競っているHPCのトップベンダー。
IBMの方針が自社製のハードウェアとソフトウェアのみでシステムを構成する「Proprietary」であるのに対し、hpは自社製品、サードパーティ製品から自由に選択できる「Open Technology」とその方向性はまったく異なる。当然、hpの動向や考え方は、周辺機器ベンダーやHPCの研究者にとって大きな影響を与えるようになる。
超並列計算研究会が、hpをメインテーマに取り上げたのも、コンパックコンピュータとの合併で、hpの動向がどのように変わるのか、多くの研究会メンバーが注目しているからだ。
同社のクロスインダストリソリューション技術本部本部長の中野守氏によって行われた、hpのHPCに関する取り組みを紹介する講演は、HPCのCPUとして注目されるMadisonこと「Itanium 2」のパフォーマンスや、hpが考えている超並列システム戦略、最新製品ラインアップの紹介、そして、まだリリースされていないハイエンドシステムの解説など、ユーザーグループの研究会としては異例ともいえる、詳しい情報まで公開された。
インテルと研究開発において強い協力関係にあるhpは、当然ながらHPCのプロセッサにインテル製のCPUを搭載している。そのため、HPCのロードマップはインテルのハイエンド向けCPUの開発スケジュールに大きく左右され、また、出荷されたHPCの評価は搭載されたインテル製CPUの評価の影響を強く受ける。
2002年に登場したMcKinleyコアのItanium 2は、思いのほかパフォーマンスが伸びず、ビジネスもそれに合わせたかのような内容だったらしいが、先日登場したMadisonで、ようやくコストに見合ったパフォーマンスを発揮するようになり、MadisonコアItanium 2の登場で、IA-64マシンが本格的に普及する見通しが出てきたと、hpも評価している。
ただし、性能が上がった分発熱も大きくなるなど、高い集積化が求められるHPCにとって頭の痛い問題も出てきている。この問題を回避するためhpが注目しているのが、今年登場する低電圧版Itanium 2だ。最初に登場するのはMcKinleyコアを使った動作クロック1GHz、L3キャッシュ容量1.5MBの製品。hpの評価では、McKinleyコアのItanium 2並みのコストパフォーマンスと発熱ということになっている。
また、MadisonコアのItanium 2では、インテルが予定しているロードマップ以外に、hp専用にカスタマイズされたCPUが2004年前半に登場する予定になっている。これは、hpが開発するデュアルプロセッサモジュール「mx2」に対応させたもので、実装面積を減少させることで、高集積化を実現する。
hpはこの講演で、PCクラスタによって構成される超並列システムは、コストパフォーマンスに優れている一方で、課題も山積みである現状にも触れている。ただし、その問題のなかには「部品点数が多く性能や品質に不確定要素が多い」ことや、「開発ツールが充実していない」「サードパーティ製アプリケーションの動作保証」など、hpの方針であるオープンシステムがその起因となっているものも少なくない。
hpは、このような問題を抱えているオープンリソースで構成するからこそ、最も適した組み合わせの機器を選択し、動作の保証を行い、アプリケーションを含めたパッケージ構成などをhpが行って出荷するメリットを強調している。
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[長浜和也, ITmedia]
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