News 2003年7月17日 01:04 AM 更新

WIRELESS JAPANで見た“青の時代”本格到来の兆し

“永遠の次世代無線技術”ともいわれていた「Bluetooth」が、いよいよ本格普及にむけて歩き始めた。WIRELESS JAPAN 2003の会場内では、“青の時代”到来の兆しを告げるBluetooth関連製品が数多く展示されている。

 今年9月に新バージョンが正式に策定される“永遠の次世代無線技術”「Bluetooth」が、いよいよ本格普及にむけて歩き始めた。東京ビックサイトで開幕した「WIRELESS JAPAN 2003」では無線LAN関係の展示が花盛りだが、会場内では“青の時代”到来の兆しを告げるBluetooth関連製品も数多く展示されている。

 BluetoothCFカードBluetooth USBモジュールなど、Bluetooth製品に熱心なハギワラシスコムは、今年3月に発表したメモリースティック/SDメモリーカード型のBluetoothカード及び無線LANカードを展示していた。「3月にドイツで開催したCeBIT 2003でお披露目されたものだが、国内での展示は今回が初めて」(同社)


国内では初披露となるメモリースティック/SDカード型のBluetoothカード及び無線LANカード。SDIO対応カードは、無線LANやBluetoothのほか、GPS/MIDI/カメラ/歩数計などが参考出展されていた


 商品化が待ち望まれていたが、「今夏発売予定」ということ以外は詳細な発売時期は発表されていなかった。ブース担当者によると、一番商品化が早いのがメモリースティック型の無線LANカードで、今年9月頃に発売する予定という。「続いて、SDカード型の無線LANカードを順次発売していく予定。BluetoothカードはSD/メモリースティック共に発売時期は未定。新バージョン(Bluetooth 1.2)待ちというよりも、これから登場してくるBluetooth対応製品の動向を見てから決めていきたい。いずれの商品も、価格は1万〜1万5000円前後となる予定」(同社)

 また、昨年8月にBluetoothモバイルアクセスステーション「B-port」 の転送レートを向上したバージョンアップ版を今年9月上旬に発売するという。「従来モデルでは、FOMAカードなどを使った場合、約60Kbpsぐらいしか出てなかったが、バージョンアップ版は転送レートが約200Kbpsに向上する。また、ユーザーから要望の多かったMacintosh対応もバージョンアップ版で前向きに検討中」(同社)


Bluetoothモバイルアクセスステーション「B-port」の転送レートを高速化したバージョンアップ版は9月上旬に発売予定

韓国メーカーもBluetoothに注目

 韓国のFinger Systemでは、ペン形状のPC入力機器「i-pen」を紹介。USB接続の有線タイプと、独自2.4GHz帯無線を使ったワイヤレスタイプのほかに、Bluetoothを無線方式に使った「i-pen Bluetooth」を参考出展していた。


ペン形状のPC入力機器「i-pen」を展示していた韓国のFinger System。USB接続の有線タイプ、独自2.4GHz帯RFタイプ、Bluetoothタイプの3種類を紹介していた

 Bluetoothを利用したペンと聞いてから写真を見ると「ああ、アノトペンか」と早合点してしまったほど、そのふっくらとしたボディはスウェーデンメーカーのそれとソックリ。だが、i-penはアノトペンのように特殊なドットパターンが印刷された専用紙など一切必要なく、それどころか紙の上でなくてもPC上に文字がかけてしまうのだ。

 i-penは光学式マウスと同様の光学センサーを使ったナビゲーション技術と、独自のマウスホバー技術によって、ペン操作で手書き入力を可能にするPC用マウス。ペン先に装備した圧力センサーによって筆圧まで感知し、実際のペンのように自然な筆跡で文字や絵を描くことができる。

 「手のひら、服の上、膝の上など、さまざまな場所で使える。Bluetoothモデルは、PCだけでなく、PDAや携帯電話などBluetooth対応のモバイル製品で広く利用可能。使用可能距離は最大で半径50メートル(見通し)に及ぶ。独自2.4GHz帯RFタイプは、使用可能距離が最大3メートルとBluetoothよりも狭いが、1台のベースユニットで最大40本のペンを登録できる」(同社)

 USB接続の有線タイプはすでに9000円で販売されているが、ワイヤレス方式は独自2.4GHz帯RFタイプが今年10月、Bluetoothタイプが来年4月にそれぞれ発売する予定。予価は1万5000円から2万円前後と、PC入力機器としてはやや高めになりそうだ。


次世代モデルとして、スタンドアロンタイプの「i-pen Memory」もパンフレットで紹介。手書きデータを記録するメモリを搭載しており、出先などでメモ感覚で書いた文字や絵をペンに蓄積。後でPCにデータを転送して、閲覧や編集が行える。こちらは来年10月頃に商品化する予定。

「2画面特許」だけではありません――Bluetoothをソフトウェアでモジュール化した「ブルースティック」

 名古屋市のベンチャー企業、エイディシーテクノロジーは、Bluetooth実装に必要なハードウェアとソフトウェアをワンパッケージにした低価格な汎用Bluetoothモジュール「ブルースティック」を展示していた。


低価格な汎用Bluetoothモジュール「ブルースティック」

 通常、Bluetoothユニットは、RF/ベースバンド/リンクマネージャといったハードウェアからなる「Bluetoothモジュール」と、Bluetooth規格で定められた通信プロトコルを構築するソフトウエアライブラリ「プロトコルスタック」とを組み合わせて構成する。だが、ブルースティックは、ベースバンドLSIからプロトコルスタックまでをワンチップCPUにソフトウェアで組み込むことで、大幅な部品削減とコストダウン、開発期間の短縮を可能にした。同社側でパッケージ化してロゴ認証を受けているため、ユーザー側で再認証を行うといった手間も省くことができる。

 「Bluetoothの認証には500万円ほどかかってしまうが、無線さえできればBluetoothのロゴなど必要ないといったニーズには、イニシャルコストゼロでBluetoothを利用できる。また従来は、Bluetoothモジュールとプロトコルスタック間の標準通信プロトコルであるHCI(Host Controller Interface)部分がネックとなって通信速度が100Kbps前後と遅くなっていたが、ソフトウェアで構成するブルースティックは、Bluetoothの最大転送レート(約700Kbps)で通信を行える実力を持つ」(同社)

 会場では2台のPCにブルースティックを装備して、1Mバイト以上の画像データをBluetoothで送信するデモンストレーションを実施。ブルースティックとPCとはUSB1.1で接続しているため、転送レートは約400Kbpsに抑えられていたが、それでもBluetoothで通信しているとは思えないほどのスムーズさで画像が高速に転送されていた。


1Mバイト以上の画像データをブルースティックで送信するデモンストレーションを実施

 さて、エイディシーテクノロジーといえば、Bluetoothよりも携帯電話の「2画面特許」で一躍有名になった企業だ。

 「われわれは技術屋集団で、基本的に特許で儲けようという企業ではない。特許が有効なうちに零細企業でもなにかできるんだということを具現化したいだけ。2画面特許に関しては、すでにキャリア各社や携帯電話メーカーと交渉に入っている。実際にNTTドコモや携帯電話メーカー数社などとは、スムーズに話し合いが進んでいる」(同社)

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[西坂真人, ITmedia]

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