News 2003年10月9日 10:59 PM 更新

「マイノリティ」の世界から“透明人間”まで――“複合現実感”を楽しめる「MR-EXPO」(2/2)


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 スティーブン・スピルバーグ監督の作品「マイノリティ・リポート」の中で、トム・クルーズが特殊なグローブを手に装着してコンピュータ内の情報を手の動きで操作・閲覧する場面がある。このSF映画の世界を再現したのが、NTTマイクロシステムインテグレーション研究所の「ミラーインタフェース」だ。

 カメラで撮影・鏡像反転して半透明化したユーザーの映像と、遠隔地の部屋の映像とを重ね合わせて大型ディスプレイに表示させる。ユーザーは半透明になって別の部屋にいる自分を見ながら、手を動かして画面上の物体映像に触ることで、その物体を動かしたり情報を取得・表示させることができる。


半透明化したユーザーの姿が別の部屋に立っている姿がPDPに映し出されている。手に持った赤い目印を使って、別の部屋にある飛行船の模型を動かしている

 別の部屋(遠隔地)の物体には、位置認識用の赤外線タグが装着されており、各物体の位置をリアルタイムで認識。合成した映像上の物体をあたかも直接自分の手で扱っているかのような感覚で遠隔操作できる。

 「マイノリティ・リポートではコンピュータ内の情報操作だけだったが、ミラーインタフェースは現実空間の物体も操作できる。家電機器の操作をはじめ、ビジネスシーンではTV会議などで先方の空間にある物体を動かしたり、機器の操作も可能」(NTTマイクロシステムインテグレーション研究所)

邪魔な物体を視覚的に消去する「光学迷彩」

 “透明人間”が可能になるMR技術――百聞は一見にしかず。下の画像を見て欲しい。


 衣服があたかも透けているようになり、向こう側にいる人や壁に張られた説明パネルが衣服越しに見ることができる。

 電気通信大学が出展した「光学迷彩」と名づけられたMR技術は、その名の通り、光学的に物体をカムフラージュするための技術だ。MR技術での映像は、仮想空間と現実空間の映像を重ね合わせる「加算」方式が一般的。光学迷彩では、実空間内で邪魔な物体を視覚的に消去する「映像の“減算”」を行っている。

 その仕組みはこうだ。衣服が透けて見える男性のすぐ後ろにはビデオカメラが設置されてあり、正面からは見えない背景映像を撮影している。その映像をPCを経由してプロジェクターで出力し、それをハーフミラーで反射させて衣服の男性に映像を投射する。

 透明化の秘密は、男性が着ている衣服にある。

 レインコート風の衣服には、光が入射した方向に反射する素材「再帰性反射材」が使用されている。これは、交通標識や自転車のペダルに使われているのと同じものだ。この再帰性反射材に、背景映像を映し出すことによって、衣服があたかも透けているように見えるわけだ。


再帰性反射材を使ったレインコート風の衣服。右の写真はカメラのフラッシュを当ててみた様子。光が反射されているのがわかる

 この技術は観察者側にプロジェクターなどを用意しなくてはならないため、“透明人間”を作り出すことは現時点では非常に難しい。ただし、観察者と透明にする対象物が固定されるケースでは、有効な利用法も考えられるという。

 「自動車に設置すれば、バックの時に後方の視野が半透明になって見やすくなる。また、飛行機のコクピットに設置すれば、床面が半透明になり着陸時の支援につながる。再帰性反射材は塗料として壁面に塗布することも可能なので、さまざまな応用が考えられる」

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[西坂真人, ITmedia]

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