News 2003年10月10日 08:20 PM 更新

PC用Blu-rayは2004年、2倍速からスタート(2/2)


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 まず、変調方式についてだが、既に公表されているようにBlu-ray Discでは、「1-7PP(Parity preserve/prohibit) RMTR」と呼ばれる新しい方式が採用されている。1-7PPは、「2/3変調」とも呼ばれている変調方式の1種で、2ビットを3ビットへ置き換えるというものだ。これはDVDで採用している「EFMPlus(8-16変調)」という8ビットを16ビットに置き換える変調方式よりも効率のよい変調方式が採用されている。

 「Blu-ray Discでは、DVDと比較すると約1.33倍、変調効率が向上しています」(三菱電機 先端技術総合研究所 蓄積メディア技術部部長 工学博士 小川 雅晴氏)

 また、1-7PPの「1-7」とは、RLL(Run Length Limited)でいうところの「RLL(1,7)変調」の1種であることからきている。ちなみにこのRLLとは、変調後の符号における“1”と“1”の間に挟まれた“0”の最小数と最大数を示したものだ。1-7PPは、1と1の間の0の最小数が「1個」、最大数が「7個」で、最小記録ピット長は、DVDの「3T」よりも小さい「2T」である。しかも、Blu-ray Discでは、短波長化と高NA化によってビームが絞り込まれており、もともとピットがかなり短い。このため、Blu-ray Discでは、短いピットでも正確に信号が再生できるように「Limit Equalizer」と呼ばれる信号処理技術が導入されている。

 「DVDの最小ピット長は3Tでしたが、Blu-rayでは2Tと短くなり、再生信号の振幅が非常に小さくなります。このため、これを増幅しなければならないのですが、あまり増幅しすぎるとS/Nが悪くなります。そこでLimit Equalizerという方式を用いて、増幅した信号の一部に“リミット”をかけることにより、振幅を制限し、S/Nを向上させました。これによって、確実なデータの検出を行えます」(三菱電機 小川氏)

 誤り訂正(エラー訂正)方式についてだが、0.1ミリと保護層の薄いBlu-ray Discでは、ディスクの表面の傷などによって「バーストエラー」と呼ばれる連続的なエラーが多く発生する傾向がある。そこで、Blu-ray Discでは、エラー訂正に使用する拘束長(ECCブロック長)を「64Kバイト」とし、誤り分布を統計的に調べ、それをモデル化して最適化したエラー訂正方式が採用されている。それが「LDC(Long Distance Code)」と「BIS(Burst Indicating Subcode)」という2種類のエラー訂正符号を組み合わせた強固なエラー訂正方式である。

 「RS-PCでも実績のあるエラー訂正コード、LDCを採用することで、強固に保護しています。また、深いインターリーブをかけることで、ランダムエラーへの耐性を高め、Blu-ray特有のバーストエラーの発生位置を特定できる仕組みを準備することで、ランダムエラーとバーストエラーの両方の訂正能力を強化しました」(三菱電機 小川氏)

 バーストエラーの発生位置の検出に準備されているのが「PicketCode」と呼ばれるコードだ。PicketCodeは、ECCブロックの縦方向に「柱」のような形で一定間隔で配置されており、「BIS」によって誤り訂正符号化して保護されている。

 データを復元する場合は、まず、BISによってPicket列の訂正処理を行い、バーストエラーの場所が推定される。そして、その情報をもとにLDCを用いて復元が行われる。

 「縦方向にPicketCodeと呼ばれるコードを入れまして、このPicket部分で誤り部分を検出します。そして、バースト的なエラーであるということが分かると、通常の誤り訂正ではなく、消失訂正という訂正方式に切り替えます。これによって一挙に2倍のデータを訂正でき、訂正能力を向上することができます」(三菱電機 小川氏)」

 ちなみに、Blu-ray Discで採用されている薄い保護層は、物理的には、指紋などに弱く、その影響を受けやすい。このため、すごくシビアなものとみられがちだ。しかし、信号波形的な見地からすると、時間的には短く、大きなドロップアウトが発生することになる。これは、はっきりとしたエラーとして検出されるということでもある。このため、エラー訂正に使用するブロック長(拘束長)を大きめにとることで、ドロップアウトによる部分的な信号の欠落をカバーできる。つまり、エラー訂正能力を超えない限りは、ドロップアウトによる影響を補えるというわけだ。

 また、Blu-ray Discでは、グルーブ記録が採用されているが、DVD-RWなどで採用されている溝の中にピットを記録する「イングルーブ記録」ではなく溝の上に記録する「オングルーブ記録」が採用されている。これは、トラックピッチを狭めても熱伝搬によるクロスイレースなどが発生しにくいからだ。

 さらに物理アドレスの検出方式にも工夫を凝らした。それは、アドレスの検出に、MSK(Minimum Shift Keying」と「STW(Saw Tooth Wobble)」という2種類の方式の組み合わせたものを採用したことだ。

 「MSKという方式は、検出しやすいのですが、途中でエラーがあると検出が難しくなります。一方、STW方式は傷に強い。これらを組み合わせることで、確実なアドレス検出ができるようになっています」(三菱電機 小川氏)

工夫を凝らしたビデオフォーマット

 BD-REで採用されているビデオフォーマットも、工夫されている。ソースとして想定されているのは、デジタル放送で採用されているMPEG-2 TS、地上アナログ放送やアナログ入力、そして、DV方式のカメラなどで記録したDVストリームなどだ。

 中でも興味深いのは、DVストリームの記録だ。BD-REでは、DVストリームは、MPEG-2へのエンコードを行うのではなく、そのまま保存する方式をオプションとして用意している。これは、BD-RE規格の標準速が、最大28.8MbpsのDV方式よりも高速な36Mbpsであるからだ。さらには、現在発売中のBD-REのメディアでも、23.3GバイトとDVストリームをそのまま記録しても約1時間半以上の映像を記録できる。

 また、MPEG-2 TSは、1本のストリームを使って複数のシステム(映像など)を送信できるが、映像の圧縮方式やオーディオの方式などは規定されていないようだ。このため、DVD-Videoなどで採用されているMPEG-2を使ってもよいし、MPEG-4などを使ってもよい。

 さらに、ファイルシステムを工夫し、信頼性や応答時間を短縮していること――つまり「連続再生の保証」をしていることも興味深い。

 この工夫の一つが、記録領域を「ギャザードファイル領域」と「リアルタイム・データ領域」の二つの領域に分割したことだ。このうち前者のギャザードファイル領域は、プレイリストやサムネイル、ディスクの管理上などが頻繁に読み書きする可能性が高いものがまとめて記録されている。また、この情報が壊れてしまうと再生ができなくなってしまうため、必ず、ディスク上の別の場所にバックアップを作成することになっている。後者のリアルタイム・データ領域は、実際の映像を記録する領域だ。

 メディアの劣化を抑える仕組みとしては、記録を行うとき、最後に書き込んだ論理アドレスを保存し、次に記録を行うときは、その場所以降の空き領域の中から書き込み開始位置を探す機能をオプションで用意している。

 応答時間の短縮では、「エクステント」と呼ばれる記録に使用するデータの“かたまり”の最小単位を規定することで対処している。というのは、記録した映像を編集し、部分削除や削除、新しい番組の記録などを繰り返すと、必ずメディア上に小容量の未記録エリアができあがる。そして、この領域に映像を記録すると一つの映像が断片化してメディア上のあちこちに記録されてしまうことになる。

 こういった映像を再生しようとすると、ちょっと映像を再生しては次の場所へ、そしてまた次へ……とピックアップがメディア上を忙しく移動することになってしまう。最悪の場合、再生用のデータの読み出しが間に合わなくなり、再生が途切れてしまうといったことが起きる可能性もあるのだ。そこで、BD-REでは、記録に使用する最小エクステントの容量を規定したわけだ。

 その容量は、「12Mバイト」である。もちろん、この容量は、12Mバイト単位で内周、外周とピックアップが移動するといったような“最悪のケース”を想定して規定されていることは言うまでもない。



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次世代の大容量メディアとして期待されるのが、青紫レーザーを使った光ディスクレコーダー。CEATEC JAPAN 2003では、各社が「Blu-ray Disc」や「AOD」など青紫レーザー光ディスクレコーダーを参考出展している。

[北川達也, ITmedia]

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