News:アンカーデスク 2003年10月14日 06:28 PM 更新

DVRの“事実上の標準”になるか――全米を虜にした「TiVo」の秘密(2/3)


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 TiVoを購入したユーザーは、番組表で好きな番組の予約を入れる。TiVo用の番組表は、マシン背面にあるモデムポート、常時接続のインターネット、あるいはEPGで受信する。録画した番組を見てユーザーが気に入れば、サムズアップ(親指を上に向ける)ボタンを、気に入らなければサムズダウン(親指を下に向ける)ボタンを数回押して、番組を段階評価する。この評価によってTiVoは、そのユーザーの傾向を分析し、好きそうな番組を自動的に録画するようになる。

 どこかで聞いたことはないだろうか。そう、CoCoonの動作原理と同じなのである。実際にCoCoonは、TiVoのライセンスを受けて作られている。だからCoCoonの背面には、TiVoのロゴマークが付いているのだと言う。


TiVoのマスコット。名前は……何だろう?

 だがTiVoの番組録画システムは、これだけに留まらない。「Season Pass」という予約方式は、一度の予約操作である番組の1シーズンを全部録画してくれる機能だ。これは単なる「毎週録画」とはレベルが違う。例え野球延長で時間がずれても、放送時間や曜日が変わっても、執拗に番組を探し出し、自動録画してくれる。

 WishListは、ユーザーの細かい好みに対応する機能だ。例えば誰かがクリント・イーストウッドのファンだったとする。だがその中でも、西部劇にしか興味がないとする。するとクリント・イーストウッドのさらにサブカテゴリー、“Western”を選択しておけば、彼の西部劇だけしか録画しない。『スペースカウボーイ』や『ダーティハリー』は録画しないのである。

 これらの動作を可能にするベースは、TiVo社が供給する徹底した番組表だ。TiVoは1時間に数回といったペースで番組表をダウンロードし、イレギュラーに変更される放送スケジュールに追従するのである。

なぜTiVoが勝ったのか

 ジェフリー・クラグマン(Jeffrey Klugman)氏はTiVo社の副社長であり、テクノロジー/ライセンスビジネス担当でもある。まさにTiVoとは何かを語るにふさわしい人物だ。


TiVo社の副社長、ジェフリー・クラグマン氏

 「TiVoはDVRサプライヤーとしてトップシェアを獲得しています。昨年までTiVoのマシンは2モデルしかありませんでしたが、今年は合計7社とライセンス契約がまとまり、クリスマスシーズンには11モデルが市場に出ることになっています。もはやTiVoは、DVRのデファクトスタンダードになりつつあるのです。」(クラグマン氏)

 ユーザーが支持したのは、TiVoのユニークなインタフェースだ。TiVoセントラルと呼ばれるメインメニューから、すべての機能にアクセスできる。画面内の機能ボタンはわかりやすい「文章」で機能が解説されているため、読めばどんな動作をするのかがわかる。よくHDDレコーダーのメニューでは、メニュー名は読めるがそれがどんな機能なのか理解できないものも少なくないが、TiVoのそれは全く違っている。

 またTiVoでは、各操作に対して「ポコッ」「ドーン」といった音によるフィードバックが成される。これが実は重要で、親しみやすい雰囲気を作り上げるとともに、ユーザーに対する動作確認の意味にもなっている。よく使う手順であれば、手順の進行をいつも聞き慣れた音で確認することができるし、単純な操作のミスは、いつもと違った音の並びで聞き分けることができるのである。

 DVDレコーダー付きのTiVoであれば、DVD作成も簡単だ。編集などの機能はまったくなく、ただ番組を選んでメディアにコピーするだけである。1枚に入らない番組は再エンコードもせず、2枚に分ける。だから高速だ。1億総メカマニアの日本人の好みからすると考えられないイージーさだが、米国人の平均的ユーザー層からすれば妥当な機能なのであろう。

 作られたDVDのメニューもTiVoで使用していたものと全く同じだ。ユーザーはメディアやプレーヤーの違いを意識することなく、すべてTiVo流で番組を再生できる。

コピープロテクションとセキュリティ

 TiVoを語る上で欠かせない問題が、コピーコントロールされたコンテンツに対する考え方だ。この質問に対してクラグマン氏は「いい質問だ」と前置きして、こう語った。

 「コピープロテクションの問題は、エンドユーザのニーズとコンテンツホルダーのニーズを両方満たさなければなりません。ユーザーにはコンテンツホルダーが許容しているフェアユースの中で、コンテンツを自由に使えないと」

[小寺信良, ITmedia]

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