News | 2003年10月31日 09:47 PM 更新 |
米国ロサンゼルスで開催中の「Professional Developers Conference 2003」3日目。Microsoftの研究機関・Microsoft Research(MSR)の上級副社長リチャード・ラシッド博士が、次期Windows「Longhorn」で提供されるプレゼンテーション、ストレージ、通信の3分野でどのような成果を挙げているのかを語った。
もっとも、そこで示された技術は興味深いものではあるが、驚きには多少欠けるものだった。これは過去のMSRに発表にも言えることだが、彼らは技術的にある程度確立され、製品への実装を待っている技術しか公開してこなかった。しかしその例に倣うとすれば、PDC 2003での発表は将来のMicrosoft製品の未来を示しているのかもしれない。
GPUはすでにゲーム用チップではない
プレゼンテーション分野でMSRが現在力を入れているのは、3Dグラフィックスの品質向上だ。現在、Direct3Dはトランスフォームやピクセルレンダリングなど、さまざまな部分で柔軟な3Dプログラミングを許容するようになっている。MSRではそうした柔軟なアーキテクチャーをベースに、より現実感のある3Dグラフィックス表現について研究している。その成果は、今年の夏に行われた「SIGGRAPH 2003」で発表した。
表面の凹凸を細かな曲面の組み合わせで表現したり、高速なディスプレースメントマッピングの手法を開発したり、あるいは水面の表現をリアルにするといった技術、テクスチャを用いてジオメトリデータの補間をGPUが演算するといった手法も開発した。例えば水面の表現では、単純な水面の凹凸だけではなく、さらに細かい凹凸による乱反射と、乱反射した光が与える影響も演算する。
画面では効果は分かりにくいかもしれないが、MSRがGPUのバーテックスシェーダ、ピクセルシェーダの使いこなしにかなりの力を入れていることは分かる。
ラシッド氏は「GPUはもはや一部の3Dオタクのための技術ではなく、ジェネラルな用途に使えるものになってきた。GPUは従来のグラフィックス環境をそのままエミュレートした上で、表面質感のシミュレーションや物理特性の表現、フォントレンダリングなどに利用できる」と話す。GPUを利用すればリアルタイムに細かなディテールやグレーンを表現しても、メインのプロセッサ処理には大きな影響を与えない。
Longhornが登場する2005−2006年ぐらいには、高速なシェーディングユニットを搭載するPCが大多数を占めるようになっているだろう。ラシッド氏はこうした写実的な表現力をどう活用するかは言及しなかったが、今後の画面設計ではこうした表現が多用されるだろう。
「TerraServer」に続く巨大データベース
一方、ストレージ分野では、パフォーマンスとスケーラビリティの向上を主眼に開発が行われているようだ。MSRは1998年、指定した場所の衛星写真、航空写真を簡単に素早く検索できるTerraServerというT(テラ)バイトクラスのピクセルデータを持つデータベースを構築しているが、その延長線として天体写真やデータを扱うSkyServerの運用を開始した。
SkyServerには世界中の天文台で撮影された写真が収められ、付随する各種カタログデータも保存される。その数は星や星雲などのオブジェクトごとに400に上り、データベースサイズはピクセルデータが10Tバイト以上、カタログデータで1Tバイト以上になる。
単純な写真だけでなく、既知のあらゆる属性情報も同時に管理されているため、専用のクライアントを用いることで天文写真の分析を行ってみたり、光のスペクトルを表やグラフにして分析することが可能だという。SkyServerはTerraServerと同様、ネットユーザーに開放される。
人を中心としたコミュニティ実現を目指す
ラシッド氏は通信分野でMSRがフォーカスしているエリアを二つ紹介した。そのうちの一つは、人物を切り口にした情報管理を行う“ソーシャルコンピューティング”だ。
[本田雅一, ITmedia]
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