オフィスIT化の行き着く先は――壁にセンサーあり、サーバに目あり?:「NetWorld+Interop 2004 Tokyo」レポート
“生産性の向上”につながるというオフィスのIT化。しかし、そこで働く社員は窮屈な思いをすることになるかもしれない。
職場の休憩所にノートPCを持ち込み、会社のメールアドレスから携帯で友達を飲みに誘う──こんなありがちな行動が、将来はボーナス査定に響くかもしれない。
「NetWorld+Interop 2004 Tokyo」(幕張メッセ、7月2日まで)では、ネットワーク機器やセキュリティ製品など、企業向けの製品・サービスが多数紹介されている。
生産性の向上はIT活用の重要なテーマ。もちろん業務プロセスを効率化する各種システムの出展も盛んだが、一方ではITで社員の労働力を最大化する仕組み──社員管理(=監視)ソリューションも目立った。そのうちフーコーのパノプティコンみたいなオフィスも登場しそうだ。
10分以上休憩室にいたら警報!
NECが出展したのは位置情報監視システム「PARTNERSIPNET」。
同システムではまず、社員は無線ICタグの装着が義務。オフィスに設置したレシーバーがICタグの電波を受信し、社員の位置を把握する。各社員がどこにいるかは、PDA、携帯電話などの端末からリアルタイムに確認できる。
例えばレシーバーを社内にくまなく配置するとしよう。すると電話で指名された同僚が不在だった場合、会議中か席を外しているだけなのか、それとも外出中なのか──が分かる。位置情報の追跡にはSIPベースの通信プロトコル「SIMPLE」を使用しており、休憩スペースにいる同僚のPDAにSIP-IP電話で即連絡を入れる、といったことも可能だ。
外出先でも、携帯電話から社内の状況を把握できる。大事な資料を忘れてしまったけど上司に怒られたくないから、鬼の居ぬ間にこっそり電話――なんていう使い方もできそうだ。
さらにPARTNERSIPNETの怖いところは、どこに誰が居たかという履歴も検索できる点だ。つまり「午後4時からの会議に参加したのは誰だったか」という使い方に加え、「あの社員はどれだけ机に向かっていたか」「休憩スペースに1日何分居座っていたか」ということまで分かってしまう。
「Aさんが10分以上休憩室にいたら」「Aさんがオフィスに戻ったとき」といった条件でアラートを鳴らすことも可能だ。戻ってきたらお説教部屋に直行なんてことも考えられる。ある意味、生産性の向上が最も“目に見える”システムだと思う。
PARTNERSIPNETの販売は今秋から。50ユーザー用の基本構成は400万円ほどになるという。
しかしまだまだ原始的な対抗手段も残されている。「タグを“ついうっかり”と席に置き忘れたり、タグの電池が“なぜか”外れてしまったり……。タグの裏をかく方法はまだまだありますよ」(NEC)。
あなたのメールを見張ってます
さぼっているのがばれるのなら、とりあえず机に向かって友だちにメールでも――。ところが、ソフト開発会社のハンモックが出展していたメール監視・分析ツール「Mail Watcher」を導入すれば、私用メールは出しづらくなるという。
Mail WatcherはSMTPパケットをモニターしてサーバに保存、「秘」「企画書」といったキーワードが送られていないかを監視する。メールデータのバックアップ用に導入する顧客もいるが、大半の目的は「私用メールを減らすこと」だという。導入企業が実際に社員のメールを1通1通チェックしているかは定かではないが、心理的効果も十分。「見られていると思うと、私用メールは出しづらいんですよ」という同社でも導入済みだ。
Mail Watcherは6月14日にアップグレードしたばかり。Word、PDFなど、約250種類のファイル形式に対応し、添付ファイルのテキストデータを検索できるようになった。ただし画像データから文字を認識するといった機能はまだないという。
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