処理は基本的にサーバに任せ、HDDなどを省いて最小限のハードウェア構成とした「シンクライアント」が再び脚光を浴びている。5月25日にはデルがシンクライアント製品を発表した。これまで普及が進まなかったが、企業で相次ぐ情報漏えいを防止する抜本策として日の目を見ようとしてる。
デルが発表した「ThinPC」は、法人向けデスクトップPCからHDDを省いたモデル。クライアントにデータが保存できないのが特徴だ(関連記事)。
シンクライアントの「シン」(Thin)は「薄い、やせている」という意味。フル装備のファット(太った)クライアントと対比される。各種アプリケーションやデータはサーバ側に格納し、クライアントはサーバと通信しながらさまざまな処理を行う仕組みだ。
サーバ側でデータの一元管理ができるため、コストや効率面での導入メリットが強調されてきた。だがクライアント用PCの高性能化と低価格化もあり、普及は進まなかった。
だが今年に入り、大手各社がシンクライアント製品を相次いで発表。日立製作所は1月、2005年度までに社内でHDD非搭載端末を1万台導入する方針を明らかにし、システムの外販も始めた。富士通、NEC、日本ヒューレット・パッカードなどもシンクライアントを活用したシステムの販売を始め、ISPのぷららネットワークスはシンクライアントを活用したコールセンターを構築した。
各社が売りにしているのは「情報漏えいの防止」。シンクライアントはHDDを持たず、外部メディアにも重要データは保存できない仕組みを搭載している場合がほとんど。社員による重要データの持ち出しや、クライアント本体の盗難による情報流出を防げる。
相次ぐ不祥事や個人情報保護法の本格施行を受け、生産効率を多少犠牲にしてもセキュリティを優先する方針を打ち出した企業も多い。情報漏えいを防ぐ切り札として、シンクライアントを採用する企業が増えそうだ。
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