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北尾氏がソフトバンクに残した置手紙(2/2 ページ)
ソフトバンクの株主総会で、取締役を退任する北尾吉孝氏が異例ともいえる長口上を述べた。北尾氏の胸中に去来したものは、何だったのか。
北尾氏はまず、ソフトバンク本体で過ごした10年間を振り返る。「10年ひと昔というが……長いようであり、また自己実現してきたことを考えると『たった10年でこれだけのことができた』という思いもある」
北尾氏はまた、ソフトバンクが通信事業に舵を切ったことが正しかったと話す。
「私は孫さんのやることに反対することも多いのだが、『これは大賛成だ』と。『孫さん、これは全力でやらないとだめですよ、いつものように気が移ったらダメですよ』と言っていた。その結果、業績的には赤字が続くであろうことも分かっていた」
ただ、ここにきて赤字経営は脱却すべきステージにきたとも話す。
「今期で黒字にしなかったら、マーケットから受け入れられないんじゃないか。ここは先行投資を多少やめてでも黒字にしないといけない。赤字続きでは、マーケットはついてきてくれないと思う」
北尾氏は確信に満ちた口調で話し続ける。
「会社の方向性としては、これで全く正しい。確実に成果も出ている。ただ役員全員が、今期は黒字に本当にしようと、肝に銘じなければいけない。黒字は死守すべきだ」
言いたいだけしゃべると、北尾氏はマイクを置いた。そのコメントは、取締役を辞す北尾氏の、孫社長とソフトバンクへの最後の直言、あるいは「置手紙」のようにも感じられた。
孫社長は、努めて淡々と次の幹部にコメントを始めるよう促した。その時の孫氏がどんな顔をしていたか――別室で控えていた報道関係者の席からは、孫氏の表情をよみとることはできなかった。
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